あらすじ: 銀河系の支配を企んでいるパルパティーン、ドゥークー伯爵、グリーバス将軍らが率いる敵の軍隊が迫りくる中、宇宙の運命はアナキン・スカイウォーカーをはじめ、オビ=ワン・ケノービ、アナキンの新たなパダワンであるアソーカらジェダイの騎士たちの手に託された。激しい戦闘が続く中、驚くべき新事実が明らかとなっていく。(シネマトゥデイ)
この映画の予告編が劇場で流れていたのを最初に観たとき、僕は「これは、ルーカス・フィルムが『やらかしちまった』のでは……」と思いました。隣で観ていた嫁も一言「これ、誰が観に行くの?」
……すみません、僕が観に行きました。
なんとなく悪い予感がしていたので、少しでも観客がいそうなときにしようと思い、まだ夏休み中でもあり、セミ週末の木曜日のレイトショーに行ったのですが、観客は僕ひとり。まだ公開1週間も経ってないんですけど……
ロビーにはたくさん人がいたんですけどねえ。
みんな『ポニョ』や『デトロイト・メタル・シティ』だったみたいです……
観はじめて最初に「うーん」と思ったのが、オープニング。
あのジョン・ウィリアムズのメインテーマとともに、”A long long ago, the galaxy is far way...”の「いつものオープニング」に感涙……するつもりだったのに、流れてきたのは、なんだか安っぽくアレンジされたテーマ曲。そして、重厚さのかけらもなく、いきなり話が始まります。
この冒頭のシーンを観ただけでも、「ああ、作っている人たち自信も、これは『メインシリーズ』に比べると『格落ち』の作品だと考えているのだな」というのが伝わってきました。いや、『ドラゴンクエスト』じゃなくても『ドラクエモンスターズ』になっていればいいんだけど、『ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔』レベルなんだよなあこれ。
アニメーションのレベル、とくにメカや背景のレベルはけっこう高いですし、予告編や静止画でのイメージのような「安っぽさ」は、実際に動いている画面を観ているとあまり感じません。バトルシーンもなかなかの迫力です。世界観も、たしかに「スター・ウォーズ」ですし、ウインドウの声はサミュエル・L・ジャクソンが出番も少ないのに演じています(ドゥークーは、クリストファー・リー)。さすがに、ユアン・マクレガーやナタリー・ポートマンは出てませんけど。
この作品、なんというか、それなりに「よくできている」のですけど、『スター・ウォーズ』マニアじゃないと観ても面白くないだろうし、マニアにとっては物足りないという感じなんですよ。
eiga.comの平沢薫さんが、こんなことを書かれています。
シリーズ全6作が完結し、帝国軍の勃興から衰亡までが明らかになり、スカイウォーカー家2代の物語も判明した今、それでも「スター・ウォーズ」を見るという行為は、いったい何を意味するのか。自分は「スター・ウォーズ」に何を求めているのか。
しかしそんな問いへの答は、本作があっさり与えてくれる。本作を見て「えー、あれがないのー?」と思ってしまったとき、その「あれ」こそが自分が心の奥深くで「スター・ウォーズ」に求めていたものだ。
それで、僕は『スター・ウォーズ』に「何を求めているのか?」というのをあらためて考えてみました。
たぶん、それはジェダイたちの「カッコよさ」であり「やせ我慢」なんですよね。「武士は食わねど高楊枝」みたいな。
『ダークナイト』で過去のものとされてしまった、「クラシカルな正義」の存在が許されるのが、『スター・ウォーズ』なのではないかと。
ところが、この映画には、そういう「ジェダイの美学」が全然感じられないのです。
「勝つためならなんでもやる戦闘集団」にしか見えないんだよねジェダイ騎士たちが。
オビ=ワンは敵の指揮官に対して「降伏する」と嘘をついて時間を稼いで相手をだまし討ちにしますし、「辺境星域の航海の自由を得るために、犯罪王ジャバ・ザ・ハットの息子を助ける」という任務そのものが、あまりにも「非理想主義的」です。
そもそも、主役が「あの」アナキン・スカイウォーカーというだけで僕はもう感情移入不能なんですよ。こいつがいくらパダワンのアソーカに偉そうなことを言っても、「ケッ、お前どうせダークサイドに堕ちるんだろ。結局弟子を持つという経験から何も学んでないんじゃ、ここでどんなに活躍しても意味ないよな」としか思えない。
僕としては、オビ=ワンやヨーダにもっと活躍してほしかった。ヨーダほとんど出番なかったのは本当に残念……ヨーダこそ、「アニメでガンガン動かしてもらいたいキャラ」じゃないのか?
いや、僕もダース・ベイダーは好きなんですけど、なぜかアナキンは嫌いなんだよねえ。ちなみにアミダラ王女も嫌い。
あと、最大の難点は、「キャラクター」だと思います。僕も含めて、日本人には、「もっとリアルか、あるいは二次元のアニメらしい顔」を望む人が多いのではないかなあ。なんというか、「プレステのRPG内のムービー」みたいなんですよ、実際に動いているとそんなに嫌悪感はないのだけれど、少なくとも、あのポリゴンっぽい顔を見ただけで敬遠する人は多いと思う。
結局、この作品の中途半端なユーモアの要素は、『スター・ウォーズ』の魅力を半減させているのではないかなあ。
『スター・ウォーズ』は、あの世界観を真剣にやっているからいいんだよねえ。
この話が「2」と「3」の間ということは、「どうせドゥークーはここじゃ死なないんだろ」と読めてしまうつまらなさもあるし、そういう制約のせいで、「なんでお前らはこんな中途半端な作戦をやったり、ここでいきなり帰っちゃうんだ?」というような場面も多いのです。
ネタとして見るんだったら、これより『親指ウォーズ』のほうがよっぽど笑えるし。
まあ、『スターウォーズ』マニアにとっては(というか、『スター・ウォーズ』マニアしか観ないんだろうなあ)、「コレクターズアイテム」感覚で劇場で観ておくべき作品ではあります。こういうのに「付き合ってあげる」のこそ、マニアの真骨頂なのだろうし、誰もいない映画館で、己の「『スター・ウォーズ』愛」を実感できるはずです。
……と、ひどいことばかり書いてしまったのですけど、けっして「ものすごくつまらない」わけじゃないんですよ。僕は正直、もっと酷いと予測していたので、「思ったより『スター・ウォーズ』してたなあ」と感じましたし。
でも、マニア以外の人に「ぜひ映画館で!」と薦められる映画ではないので、興味がある人は、DVDが出たら観てあげてくださいね。
たぶん、「思ったほど悪くないじゃん」という作品ですので。
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