琥珀色の戯言

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のぼうの城 ☆☆☆☆


のぼうの城

のぼうの城

[要旨]
時は乱世。天下統一を目指す秀吉の軍勢が唯一、落とせない城があった。武州忍城。周囲を湖で囲まれ、「浮城」と呼ばれていた。城主・成田長親は、領民から「のぼう様」と呼ばれ、泰然としている男。智も仁も勇もないが、しかし、誰も及ばぬ「人気」があった―。

[出版社商品紹介]
城戸賞受賞、注目の大型新人脚本家が自ら小説化。駄目だが人間臭い魅力で衆人を惹きつける英傑像を提示した、新しいエンタテインメント小説。

 直木賞候補にもなったこの作品。「新機軸の『とにかく面白い』歴史小説」ということでかなり話題にもなり、売れているようです。
 僕も300ページあまりのこの本を一気に読んでしまったので、たしかに「面白い話」ではあるのですが、正直、ちょっと物足りない感じもしたんですよね。
 僕はもともと「伝統的な歴史小説好き」なので、この作品で「時代考証」が意図的に無視されているところや(姫が人前で「接吻」しちゃうんですよ、それなないだろいくらなんでも…店)「のぼう様」の魅力がいまひとつ伝わってこないところは不満でした。この「のぼう様」は、確かに愛すべき人だとは思うけど、この人のために死のうというほどでは……肝心の「水攻めをされた城を救うための、のぼう様の作戦」もあまりに場当たり的というか、「そんなのうまくいくわけないだろ!」とツッコミたくなるものですしね。この城が落ちなかったのは、石田三成の「拙攻」が原因だとしか思えません。
 あと、僕は大谷吉継のファンなので、彼があまりに無能に描かれていて悲しかったです。

 ただ、この小説、もともと「ドラマの脚本」として書かれたものだそうなので、そういう目でみると、キャラクターは類型的でわかりやすいし、泣かせるポイントもあるし、「メリハリのきいた良質のシナリオ」ではあるのです。2時間くらいのドラマや映画にするには、まさに「もってこい」なのではないかと。いままでの「歴史小説」を敬遠していた人たちからすれば、「時代考証にうるさくない」ことも含めて、親しみやすい作品のはず。
 「歴史小説フリーク」以外の「ちょっと歴史小説でも読んでみたいんだけど、面白い作品ない?」という人にはおすすめできる本です。

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