琥珀色の戯言

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千住家にストラディヴァリウスが来た日 ☆☆☆


千住家にストラディヴァリウスが来た日 (新潮文庫)

千住家にストラディヴァリウスが来た日 (新潮文庫)

内容(「MARC」データベースより)
ヴァイオリニスト・千住真理子が巨匠ストラディヴァリ製作のバイオリンを手に入れた。300年の眠りから目覚めた名器は、いかにして千住家の一員となったのか。真理子の母が綴る感動のドキュメント・エッセイ。

千住真理子さん、あるいは、千住家の人々のファンにとっては、非常に興味深い内容なのではないかと思います。
でも、ヴァイオリンという楽器にあまり興味がなく、千住真理子さんも「名前くらいは知っている」というレベルの僕にとっては、「千住文子さんの夫自慢、子ども自慢を延々と聞かされ続けている」ような居心地の悪さを感じる本でした。
「清貧」とかいうけど、夫は慶応大学の名誉教授、子どもたちは素直に育ち、介護まで協力しあって頑張る優等生。なんというか、「ああ、こりゃ遺伝子が違うな……」というコンプレックスしか感じませんでしたよ僕は。
これを読んで「うちも千住さんの家を真似してみよう」なんていう人は、どのくらいいるのだろうか?

「芸術」を追求するのっていうのは、僕のような凡人からするとかなりイビツな世界のように思えるし、40歳の千住真理子さんが母親のことを「お母ちゃま」と呼んでいるのをみると、なんというか、「親が子どもの才能を伸ばそうとする」っていうのは、ある意味「子どものバランス感覚」みたいなものを徹底的に排除していくことなのではないか」と考えずにはいられません。
イチローのお父さんの「子育て」も話題になりましたが、あれが「正しい子育て」だったのか僕にはよくわからない(というか、ああいうのは「万馬券を当てた人の馬券自慢」みたいなもので、感心することはあっても、真似すべきものじゃないように思うのです。
でも、「万馬券は買わなければ当たらない」のも事実なんだけどさ。
この物語の陰には、「千住真理子になれなかった、大勢の親に期待されながらも挫折したヴァイオリニスト」がいるはずで、彼らは自分の親を恨んではいないのだろうか?

僕がこの本を読もうと思ったきっかけは、「ストラディヴァリウスって、いくらくらいするのだろう?」という下世話な疑問でした。
残念ながら、この本を読んでも「たぶん数億円くらい」ということしかわかりません。

「芸術家っていうのは、こういうものなのか……」ということがなんとなくわかったような気になる本です。
ただ、僕は「はいはい、立派なご家族でようござんしたね……」と思うのが精一杯でした。千住さんのファンの皆様すみません。

これを読みながら、僕は以前「芸能人格付けランキング」で、「普通のヴァイオリン」と「ストラディヴァリウス」による演奏を聴いて、どちらが「ストラディヴァリウス」かを当てる、というのがあったのを思い出しました。
僕には「違う」ことはなんとなくわかったけれど、「どちらが良い」かは全然わからなかったのをよく覚えています。
たぶん、あの演奏を「聴き分けられる」人は、この本も素直に読めるんじゃないかな。

千住さん一家は本当に立派だと思うけど、僕にとっては、コンプレックスを刺激されるだけの本でした。

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