琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

志村けんさんの「元彼が近所に引っ越してきた女性へのアドバイス」

夫に私の初体験を話しました。 - Yahoo!知恵袋

↑の質問とそれに対する答えを読んで、僕はこんなやりとりを思い出しました。

志村けんさんが土曜日の夜にFMでやっているラジオ番組の「リスナーからの相談」のコーナーで(記憶をもとに書いているので、元の内容とちょっと違うかもしれません)。

ある新婚女性からの質問:最近、私たちの家の近所に、私の元彼が引っ越してきたのです。今の夫は元彼と面識はありませんが、近所なのでいずれ顔をあわせることは確実です。その場合、もし私と元彼の以前の関係がバレてしまったらと心配です。いっそのこと、バレる前に夫に元彼のことをあらかじめ話しておこうとも考えているのですが、志村さん、男の立場からみて、どう思いますか?

たぶん、この女性は、夫が「正直に話してくれてありがとう」と言ってくれることを期待しているのではないかな、と僕は考えながら聴いていました。アシスタントの小林恵美さんや上島竜兵さんは「うーん」「どうでしょうねえ〜」とずっと悩んでいたのですが、志村けんさんは、キッパリとこう言ったのです。

それは、ダンナには絶対に言っちゃダメだ。男っていうのは、そういうの、すごく気になるものだし、知ってしまったら平常心じゃいられなくなるから。「正直」っていうのはいいことのように思われるけど、恋愛の場合には、それが幸福につながるとは限らないよ。「自分の妻が昔付き合っていた男」が目の前にいると、相手のことを過剰に意識しちゃったり、その男と妻のことで、あれこれ想像しちゃったりするしね。妻がこの男と自分を比べてると思うだけでも辛いもんだよ。
いいかい、あなたは「言いたそうな感じ」に思えるけど、絶対に黙っていたほうがいい。今のダンナが好きで、ずっと仲良くやっていきたければね。それと、男っていうのは、何かの拍子に「お前の妻とは昔いろいろあってね……」みたいなことを言いたがるものだから、元彼に「絶対に黙っていて。私の幸せのために他人として接して」とあらかじめキチンと釘を刺しておいたほうがいい。昔の彼女が幸せそうにしているのを喜ぶヤツばっかりじゃないしね。あとは、その元彼の人柄しだいだけど……

ああ、志村さんは「大人」だなあ……
もちろん、「黙っていて、その男のほうからいきなり『昔あなたの奥さんと付き合っていたんですよね……』と夫に言い放たれるケース」というのは考えられます。それはそれで夫にとってはかなりのダメージだと思われますが、それでも志村さんは「こちらからわざわざ話しても、何もいいことはない」と断言していました。相手に対して、ちゃんと「根回し」をするように、とは付け加えつつ。


冒頭で紹介した「Yahoo!知恵袋」での質問なのですが、僕がもし「大事な友人からの相談」としてこういう話を聞かされたら、「まだ結婚1年で子どももいないのだったら、もう別れたほうがいいんじゃないか?」と答えると思います。「どうでもいい友人からの相談」であれば、「まあ、お前たちの人生だから、二人でよく話し合ったほうがいいよ」くらいにしておきますが。

こういうのを「覆水盆に返らず」と言うのでしょう。

どちらかが「悪い」という問題じゃないんですよこれはきっと。
軽々しくこんなふうに自分と上司との初体験を口にする女は「愚か」というか「世渡りがヘタ」だとは思うのです。
でもね、51歳の男に誘われて寝ちゃう18歳の女は、「異常」だとか言う回答者たちの言葉を読むと、「こいつらの周りには、そんなに『正常』な人たちしか生息していないのか?」とか言いたくなるんですよ本当に。
51と18っていうのはさすがに「離れすぎ」だということかもしれないけど、40代後半と20代の不倫カップルなんて、そこらへんにゴロゴロ転がってるよ。
それに、僕は不倫推進派じゃないけど、強姦やパワハラじゃないかぎり、18歳が51歳と合意の上で寝ること、には、本人たちなりの「理由」があるんじゃないかと思うのです。そういうことをする51歳は「ズルい」けど、そういう行為のすべてが「悪いこと」じゃない。
「あのときは好きだったんだからしょうがないじゃない!」って言われたら、年齢差を理由にそれを全否定することは、第三者にはできないはず。

でも、それを聞かされた今の夫は、多くの場合、「平常心」ではいられない。
この質問に対する「回答者」のなかに、

ご主人は遊んだ経験が豊富な人かな?
あまり遊んでいないと、疎外感が大きすぎる、
てか自分が「いわれない損害を被っている」という感情が強くなって、
受け入れることができなくなるかもしれません。

ちなみに、私の彼女は(いま別れを持ち出されて「モトカノ」状態ですが)
かなりの数の男性経験があり、またモトカレと戻りかけているようです。
でも、私も百人以上の女性経験がありますから、そんなことでは、
彼女への愛情はビクともしません。
とはいえ、私の場合は彼女が私を選び直すか否か、が問題ですが・・・

これは、試練と思って下さい。普通の幸せが欲しいか、本当の愛が欲しいか、
ご主人にとっても、分かれ道です。

ご主人があなたを愛しているなら大丈夫ですよ。

という「自分の女性経験の数」を「女性に対する寛容さ」と勘違いしている人がいるのですが、この質問者の場合は、「どちらが悪いってわけじゃないけど、夫婦の貞操観念のギャップが大きすぎる」のではないかと。
質問者の夫は、「妻が昔遊び人の上司に弄ばれ(と判断し)、そのことを軽々しく自分に話すことができるくらいの「軽い女」であることに幻滅している一方で、「それが恋愛関係であったのなら、当時の妻の行動は客観的にみれば『悪いこと』ではない」ということも頭では理解できているのだと思われます。
そして、妻が上司とセックスしている幻影に悩まされつつ、「そのくらいのことを笑って受け入れられない自分の心の狭さ」を責めずにはいられない。
これって、まさに「泥沼」以外のなにものでもない。
この質問に対する「ベストアンサー」が、各所ですごく賞賛されていますし、僕も「模範解答」だなあと感じました。
でも、たぶんこの「ベストアンサー」は彼を救えない。
自分の失策を取り返すための「元恋人である上司への誹謗中傷」「全力での心のこもったセックス」「がんばってつくった料理」etc……
そんな「ごめんなさい」だらけの夫婦生活、僕だったら耐えられない。
そんなふうにされるほど「罪悪感にさいなまれている妻の心」が伝わってくるでしょうし、「それでも妻を許せない自分」がイヤになっていくはず。
とはいえ、「離婚する」という選択をしたとしても「そんなつまらない昔の話で、最愛の人だったはずの妻を許せなくなってしまった自分」への罪の意識は、ずっと消えることはないでしょう。
この「離婚の理由」は、「新しい恋人」に話せるだろうか? 話しても「冷たい男」だと思われないだろうか……

要するに、この質問の状況って、「どんな選択をしてもバッドエンド」なのではないか、と僕は感じます。
「それを話してしまった」時点で、もう「出口」はどこにもない。
表面上は和解できても、何かの拍子(たとえば、10年後にちょっとしたケンカをしたときなど)に、お互いの「我慢」が澱のように溜まったものが、「噴火」することになるでしょう。
冷たいようですが、いちばんマシな選択は、まだ子供もおらず、23歳の若さなら、時間をムダにする前に「さっさとリセットボタンを押すこと」なのではないかと。

恋愛っていうのは、誰が悪いわけではないにもかかわらず、こんなふうにみんなが不幸になってしまうことがあるのです、たぶん。

アクセスカウンター