琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

ブラックサイト ☆☆☆☆


ブラックサイト [DVD]

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あらすじ: 競技場近くの駐車場で誘拐された男が、ウェブサイト「Kill with me」上で公開殺害された。画面上に掲示されるアクセス数のカウントとともに薬物が増量され、じわじわと死に至る状況を刻一刻と中継するという残忍な犯行だった。FBIネット犯罪捜査官のジェニファー(ダイアン・レイン)が捜査を開始するも、第二の犯行が実行され……。(シネマトゥデイ

けっこう「怖い」というか「気持ち悪い」映画でした。
「意外な謎解き」があるわけでもなく、俳優さんの気合いの入った熱演が観られるわけでもない作品ではあるのですが、僕のような「ネット中毒者」にとっては、非常に身につまされるところがあって。
「ネットで何かを書いたり誰かに言及したりする」というのを、「発信者」たちは日常的にやっているのですけど、そういう行為って、自分では面白半分にやっているだけのつもりでも、見知らぬ誰かから「恨みを買っている」可能性が十分あるのです。
大部分の人は、「コイツに復讐してもしょうがない」「ワリに合わない」という計算の元、現実に攻撃してくることはないのですが、なかには、「自分はどうなってもいいから、このサイトの管理者を酷い目に遭わせてやる!」という考える人だって出てきます。
でも、こういうのって、「発信している側」は、「匿名」で「みんなやっていること」だから、自分が「復讐の標的」になることを理解できないことがほとんど。

この『ブラックサイト』の犯人の行動を「狂ったサイコさんの言いがかり」だと思う人がほとんどでしょう。
しかしながら、こうして自分のサイトを持ち、あれこれ書いている人間の多くは、この映画を観ると、かなり「もしかしたら自分も被害者(あるいは加害者)になるかもしれない……」と不安になるはずです。

この作品を観ながら、僕は毎年夏になると考える、こんなことを思い出していました。

もしこのクソ暑い日に「一日クーラーを使わなかったら、見ず知らずのアフリカの子どもがひとり助かる」ならば、僕は今日一日クーラーを使わずにガマンできるだろうか?

たぶん、「あなたの大事な人が死ぬ」とか「目の前のテレビに映っている赤ん坊が死ぬ」とかであれば、ガマンするはず。
あるいは、自分を映すテレビカメラが目の前にあったりすれば、ガマンできると思うんですよ。
でも、そこが「誰も観ていない自分の家」であれば、僕はやっぱりクーラーを使ってしまいそうな気がします。
実際、「クーラーを使ったつもりでその電気代くらいを寄付すれば、予防接種などで子どもがひとりくらい助かる」かもしれないのに。

この『ブラックサイト』の本当の主役は「好奇心に駆られて、『殺人サイト』にアクセスしてしまう「名無しさん」たちです。
彼らがアクセスすればするほど「公開殺人」のスピードが速まるようになっているにもかかわらず、閲覧者の数はうなぎのぼり。
そういう「善意も悪意もない興味本位の傍観者」こそが、「ネット上での反社会的なふるまい」を助長している面は否定できません。
彼らは「自分たちは単なる傍観者だ」「自分ひとりくらい観たって、大勢に影響はない」と言うでしょうけど、誰も観なかったら、わざわざ「公開殺人サイト」なんて作る人はいないでしょうから。

いや、僕だって『2ちゃんねる』よく観てますし、世界に品行方正なサイトばかりが溢れているのはやっぱり不気味です。
それでも、身内が「被害者」になったら、「ネット上の表現の自由」を全面的に肯定できる自信はありません。

サスペンス映画としては「まずますのデキ」でしかありませんが、サイトを自分でやっている人にとっては、ある意味「衝撃的」な作品だと思います。

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