琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

完全恋愛 ☆☆☆☆


完全恋愛

完全恋愛

内容紹介
他者にその存在さえ知られない罪を完全犯罪と呼ぶ。では、他者にその存在さえ知られない恋は完全恋愛と呼ばれるべきか?

推理作家協会賞受賞の「トリックの名手」T・Mがあえて別名義で書き下した
究極の恋愛小説+本格ミステリ1000枚。
舞台は第二次大戦の末期、昭和20年。福島の温泉地で幕が開く。主人公は東京から疎開してきた中学二年の少年・本庄究(のちに日本を代表する画家となる)。この村で第一の殺人が起こる(被害者は駐留軍のアメリカ兵)。凶器が消えるという不可能犯罪。
そして第二章は、昭和43年。福島の山村にあるはずのナイフが時空を超えて沖縄・西表島にいる女性の胸に突き刺さる、という大トリックが現実となる。
そして第三章。ここでは東京にいるはずの犯人が同時に福島にも出現する、という究極のアリバイ工作。
平成19年、最後に名探偵が登場する。
全ての謎を結ぶのは究が生涯愛し続けた「小仏朋音」という女性だった。

『このミス』第3位の紹介記事を読んで、早速読んでみました。
2008年1月31日が第1刷で、12月1日が第2刷。
あまり売れないままフェードアウトしそうになっていた作品が、『このミス』上位入賞であわてて増刷された、ということなのでしょう。

けっこう分厚い本+最初のほうはちょっと文体的にも内容的にもとっつきにくい感じなので、読み慣れてくるまではなかなか読み進められずにちょっと辛いのですが、慣れてくるにつれハマっていき、最後は読み終えるのが惜しいくらいでした。
ただ、最後のほうで楽屋オチっぽい「探偵」が出てきて謎解きをするのと、あまりに「ご都合主義的なめぐり合わせに頼ったトリック」は、この作者のファンには嬉しいのかもしれないけど、はじめてこの人の作品に触れる僕にとっては、「せっかくここまで築いてきた世界観が台無し」という気がしたんですよね。
せっかくずっとこの『完全恋愛』の重厚な歴史の流れに浸っていたのに、なんでこんなお手軽な雰囲気になっちゃうんだ?と。

本当に「面白い」小説ではありますし、提示される「謎」も「そんなのどうやってやるんだ?」とワクワクするようなものばかり。
そして、主人公・本庄究の「完全恋愛」の行方と画家としての生涯にも惹きつけられます。
年季十分の作者だけに、この作品は、ひとつの「戦後史」にもなっていますしね。

でもほんと、この作品って、「バカミス」ギリギリのところですよね。
というか、『このミス』3位という先入観がなければ、僕は「バカミス」にカテゴライズしていたと思います。
作者は狙ってやっているのだろうけど、最近のミステリの「精緻なトリック」に慣れていると、「面白いけど、面白すぎだろこの設定……書きながら考え直さなかったのか?」という感じ。このオチのために1000枚書くという執念には脱帽するしかありません。
いやほんと、最後の50ページくらいはあまりの強引な展開にお茶噴きそうになりました。
「いくらなんでも、現実的にはそりゃちょっと無理があるだろ!」と思うのだけど、それを「まあ、面白かったからいいや」と読者に納得させてしまうのは、並大抵の力技ではないですよ。

「ミステリ好き」よりも「歴史好き」「伝記好き」のほうが楽しめる作品なのではないかな、と個人的には思います。

この作品を支えているのは、なんといっても作者の「童貞力」。
でもさ、いくらなんでも、あれはあまりにも現実にはありえない「過剰叙述トリック」だよね……

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