琥珀色の戯言

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ベンジャミン・バトン 数奇な人生 (角川文庫) ☆☆☆


ベンジャミン・バトン  数奇な人生 (角川文庫)

ベンジャミン・バトン 数奇な人生 (角川文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
老人として生まれ、若者へと時間を逆行して生きるベンジャミン・バトン。しかしその心は同世代の人間と変わらず、青春時代の苦悩や恋愛や結婚を経験し、戦争などの逆境に果敢に挑んでいく。不思議な人生を歩みつづける彼を、最後に待つものは…(「ベンジャミン・バトン」)。20世紀を代表する伝説的な作家による、ロマンあふれるファンタスティックな作品を集めた傑作選。

映画『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のほうを先に観てから、この小説を手にとったのですが、映画は3時間近い長尺にもかかわらず、「原作」は50ページしかない、とてもシンプルで「そっけない」読後感すら残る作品でした。
映画版は、「姿は80歳の老人だが、心は赤ん坊」から、「姿は若返り、精神的には老成していく」のですが、この小説では、「姿も心も80歳」からはじまり、「姿も心も若返っていく」というところから違っています。
映画版ではデイジーとの交流が丁寧に描かれているのですが、この小説版でのベンジャミン・バトンは、「映画版ほど不幸ではないけれど、映画版ほど幸福でもない」ような感じです。そして、映画版よりもっと切実に、人々から「なかったこと」にされ、周囲の人からも敬遠されていくのです。
映画版では、「それでも、ベンジャミン・バトンがこの世に生まれてきた意味はある」というような肯定的な視点から描かれているけれど、この原作(というより、「老人の姿から若返っていく主人公、という設定以外は全然別の小説ですし、そもそも描かれている時代も違うので、「原案」とするべきなのでしょう)では、読み終えたあと、「結局、この『数奇な人生』って、いったい何だったのだろう?」という居心地の悪い気分だけが残ったような気がしました。
だから、読む価値が無い小説だ、というわけではなくて、シュールな笑いというか、よくできた落語みたいなお話ではあるんですけどね。

この作品集には、表題作のほかに、「レイモンドの謎」 「モコモコの朝」 「最後の美女」 「ダンス・パーティの惨劇」 「異邦人」 「家具工房の外で」の6作品が収録されているのですが、このなかで僕が読んで面白いなと思ったのは、「最後の美女」「異邦人」だけでした。不安感に満ち溢れたラストの「異邦人」、せつない「最後の美女」は、好みだったのですが、ミステリっぽい作品である「レイモンドの謎」「ダンス・パーティの惨劇」については、「ミステリとしては『謎解き』に意外性もないし、何より読者に対して与えられている情報が少なすぎる」感じ。
率直なところ、「映画化で話題になった表題作だけ立ち読みでもいいかな」とは思うのですが、僕は最近「アメリカ文学」と「歴史的名作の再読」をテーマにしているので、『グレート・ギャッツビー』以外にも、こんなフィッツジェラルド作品があるのか、ということがわかったという意味では、とても興味深かったです。

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