琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

徹底抗戦 ☆☆☆☆


徹底抗戦

徹底抗戦

内容紹介
2年前に“国策捜査”で逮捕・起訴され、現在、最高裁に上告中の元ライブドア社長・堀江貴文氏。
数年前、日本を騒がせた「ホリエモン旋風」と「ライブドア事件」について、マスコミ報道は山のようにあったが、堀江氏から見えていた風景はまったく違うものだった。それを自ら書き下ろすことで、「ホリエモンライブドアの真実」を明らかにし、堀江氏逮捕がいかにおかしな、検察の暴走・横暴によるものだったかを明らかにする。

この本、いろんな意味で興味深く読みました。
3ヶ月もすれば、ブックオフの100円均一コーナーに山積みされているんじゃないか、などと思いつつ。

これはあくまでも「堀江元社長が見た世界」の話であり、「客観的な事実」ではないのかもしれません。
僕はこれを読みながら、「同じようなことをしている会社は他にもあるのではないか」と思ったし、「ここに書いてある罪状が事実であるならば、『無罪』ではないとしても、実刑は重過ぎる」と感じました。
「堀江元社長が逮捕されたことによって、ライブドア株が市場を混乱させた罪」まで、堀江さんに背負わされているような印象を受けましたし。

この本を読んでいると、堀江さんというのは、本当に「純粋」というか「すごい自信と大きなビジョンはあるけれど、世渡りとか根回しとかが下手な(というか、そういうものをやるのを屈辱だと感じるタイプの)人なのだな、と感じます。
その一方で、必要以上に露悪的で、言わなくてもいいことを言っては敵をつくってしまう。
「反省してみせて執行猶予を狙う」という作戦が「現実的」であっても、「無罪」にこだわって、実刑を食らってしまう。
もうちょっとうまく立ち回っていれば、こんなことにはならなかったかもしれないのに。

正直、この本を読んでも、堀江さんが「無罪」なのかどうか、僕にはよくわかりませんでした。
ライブドア事件の真相」については、「堀江さんにとっての真実」だけではなく、他の関係者にとって、司法にとっての「真実」もあるでしょうし。
この本のいちばんの「面白いところ」は、堀江貴文という「神輿に乗せられた男」が、どんなビジョンを持って「ライブドア」を経営してきたか、そして、容疑者として拘置所に入れられて、どんな体験をしたか、という「個人的な体験を率直に語っている部分」だと僕は感じました。
拘置所で15分間の風呂の時間にオナニーをしていた、なんていう「そんなことわざわざ書かなくても……」というようなことをあえて書いているのは、堀江さんらしいな、と思うのと同時に、こういうのが「読者サービス」だと考えてしまうところが、堀江さんの現在の苦境の原因なのではないか、という気がしたんですよ。
あと、拘置所への差し入れは、食べ物よりも「ふかふかの毛布と布団」や「ふかふかの座布団」「切り花」などのほうがありがたかったそうです。「差し入れというのはその人のセンスが現れる」なるほど、参考になるなあ。あまり役立てる機会に恵まれたくない知識ではありますが。

この本を読んで感じるのは、急激に成長した「ライブドア」という会社における、堀江元社長と他の幹部の「温度差」なんですよね。

 この一件(ニッポン放送買収騒動)で得た1000億円を超える莫大な軍資金を活かして、もっと大きなジャンプアップを図らなければならなかった。宮内氏なんかは、莫大なキャッシュをボーダフォンの買収に宛てようとしていたが、そんな小金儲けの仕事には興味がなかった。やるのなら、トップを目指さなきゃ!
 ライブドアは当時、日本企業としては初めて、ヨーロッパに本拠地を置く「Skypeテクノロジー社」と半独占的業務提携を結ぶことに成功していた。同社のネット電話とメール・メッセンジャーを統合したP2P(Peer to Peer:不特定多数のPCが相互に接続され、直接ファイルなどの情報を送受信するインターネットの利用形態)のソフトと、携帯電話ハードの技術、そして、当時流行りつつあったiPodのような携帯音楽プレイヤーを融合させ、Wi-Fiも使えるようにしたら、画期的な情報端末ができ、さらにメッセンジャーやメールを使用してのコミュニケーションがもっと活発になるな、と考えたのだ。
 そのためには「ソニー」のブランド力と技術、そして音楽・映像のコンテンツが必要だった。ソニー=音楽プレーヤーというイメージができているのも好都合である。また、ネット音楽配信事業の優勝劣敗を決するのは、どれだけ多くの楽曲をスタート時に提供できるかにかかっている。すでに音楽・映像業界に深く入り込んでいるソニーならば、競合他社に対して優位に事業をはじめられるはずであった。
 iPodで携帯音楽プレイヤー市場の地殻変動を起こしたアップル社に、かるての覇者ソニーが追いつき追い越すためには、この戦略しかないと思ったし、ネット時代の個人向け端末は携帯電話でもノートPCでもなく、現在のiPhone的なものになるであろうと、当時の私は結論づけていた。実際に、Skype関連の講演会で、私はそのことを将来のネット端末の形として提示している。
 ソニーライブドアを合併させることでライブドアブランドを捨て、新生ソニーiPhone的端末で世界を席巻、世界で一番利益をあげる企業体になる。これが、私の考えたゴールであり、そのゴールが見えたところで宇宙ビジネスに完全にコミットする予定であった。
 しかし、このヴィジョンは私の逮捕で、全て夢に消えてしまうのであった。

ライブドアソニーの合併計画!
そして、その先には「宇宙ビジネス」!

堀江さんは「純粋に夢を追い求める人」だったのかもしれません。でも、他のライブドアの幹部たちは、そのヴィジョンを共有できなかったというか、「付き合いきれないよ」というのが本音だったのではないでしょうか。
堀江さんが「宇宙ビジネスのために」お金を貯めている一方で、ある幹部は「会社の金を私物化して、フェラーリを即金で買って自慢していた」のだとか。
まあ、「宇宙ビジネス」なんて海のものとも山のものともわからないようなヴィジョンを掲げるトップに不安を抱くのが「普通」なんじゃないかと思います。
蝶野正洋アントニオ猪木を評して、「あの人は遠くから仰ぎ見れば神様だけど、近くにいると悪魔だ」と言っていたという伝説があるのだけれども、堀江さんも、他のライブドア幹部からすれば、そういう人だったような気がするのです。

結局は、堀江さんにいくら才能があっても、「人を見る目がなかったこと」「周りの言葉を聞き入れることができなかったこと」が、あの「ライブドア事件」を生んだのかもしれないな、と僕は思います。
ナベツネさんあたりに媚を売って「日本を動かす企業人」になっていればよかったのか?と問われたら、それはそれですごく「感じ悪い」ことだし、ああいう形で「玉砕」してしまったからこそ、堀江さんに共感する若者も少なくないのでしょうけど。

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