琥珀色の戯言

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それでも会社を辞めますか? ☆☆☆


内容(「BOOK」データベースより)
「100年に1度」と言われる世界経済危機の中で、雇用の崩壊が進む日本。そんな逆風の中で、あえて「会社を辞める」という道を選ぶ40代も多い。なぜ彼らは、長年勤めた会社から離れる決心をするのか?辞めた後に、自分の望む仕事を見つけられるのか?それでも会社を辞めたい人のための、仕事選び直しマニュアル。

ちょっと前に読んだこの本のことを思い出したのは、
35歳までに迷いを断ち切れ(AERA) - Yahoo!ニュース
↑の記事を読んだのがきっかけでした。

サブタイトルは、「実録・40歳からの仕事選び直し」。
この本を読んで、僕は「転職って、キツイんだな……」と痛感させられました。
「転職でキャリアアップ!」みたいな景気のいい話は、ごく一部の「ヘッドハンティングされるような選ばれた人」の特権であり、「ごく普通のキャリア」の人にとっては、多くの場合、転職というのは、「より条件の悪い仕事をすることを余儀なくされる可能性が高い」のです。

そして、僕が愕然とさせられたのは、「自分ではプラスだと思っている職歴が、かえってマイナス要素として評価される場合が多い」ということでした。

 B氏は仕事の間を縫って、毎月10社ほどに履歴書、経歴書を送った。しかし、その結果のほとんどが採用見送りであった。その理由は色々とあるが、まず彼の場合過去に東南アジアで知人の会社を手伝ったこと、そして今の会社で海外営業をした経験の内実が足枷になっていたのだ。
 というのも、東南アジアでの経験で彼は多少の英語力を身につけることができた。だが、その語学力はビジネスに充分に活かせるほどに堪能とまではいえなかったのである。しかも2年間、海外営業をしていたが、彼は英語のブラッシュアップをまったくしていなかったため、語学力は現状維持のままだった。
 今は海外営業は取引相手も多様化し、相手は英語圏の人ばかりとは限らない。英語のブラッシュアップとともに、もう1つ中国語など話せるようにしておくべきだった。それゆえ、転職の際、彼が自分の強みとして海外営業の経験をアピールしても、再就職における武器にはなりえなかった。それどころか面接官からは、その程度の英語力では、海外営業を真剣にしていなかったのでは、と思われてしまう結果になってしまったのだ。
 時折、会社で長年働いた後、人生の経験を積むといって、しばらく海外に行く人がいるが、今の世の中にはそのような経験を積む人はあまたいる。よほどの内容の濃い海外経験をしなければ、これまで積み重ねてきたキャリアにただ穴があくだけの結果になってしまう。

そして、こんな例もあるのです。

 Eさんは大学を出て、電子部品を海外に輸出する会社へ勤務した。彼女は堪能な英語力を活かして、海外の法人相手に営業をこなすなどして、キャリアウーマンとして活動した。そして、30代中盤で結婚し子供が生まれた。大企業であったため産休制度もしっかりしており、しばらく休みをとった後、再び現場に復帰した。

(しかしながら、子育てがあっていままでのように長時間働けない彼女は、「いままでの部下が上司になってしまう」営業事務の裏方に異動することになります。耐え難かった彼女は、40歳目前で転職を決意)

 彼女は在職しながら仕事先を探した。1ヵ月に平均3社くらいに書類を提出して、その中から1社は面接に行った。しかし、なかなか面接が通らないのである。転職活動7ヶ月目になってようやく、1社から内定をもらうことができた。
 なぜ、Eさんはこれだけの堪能な英語力と海外営業の実績がありながら、なかなか内定がもらえなかったのだろうか。それは彼女が「残業も少ない会社で、育児と両立できる仕事」を望んでいたという事情もあるが、それだけではない。すばらしい彼女の経歴にこそ問題があったのだ。つまり、面接が不合格になった理由がオーバースペック、つまり優秀すぎて企業側が扱いづらいと判断したためだったのである。

こういう「実例」を並べられると、「キャリア不足でもオーバースペックでもダメ、じゃあどうすればいいんだ!」と嘆きたくもなりますよね。
それでも、この2人のように「これまでちゃんと仕事をしてきた人」でさえこんな状況なのですから、「いままでのいいかげんな人生を転職で一発逆転!」なんていうのは妄想であるということがよくわかります。

これを読むと、「ちょっとイヤになったくらいで、今までの仕事や職場を替えるのは愚の骨頂だな」と感じます。
まだ若い20代前半の人ならともかく、僕みたいに「アラフォー」になってしまえばなおさら。

「転職してみようかな」と憧れている30代諸氏は一度読んでみることをおすすめします。
「仕事選び直しマニュアル」というよりは、「転職なんてそうそううまくいくようなものじゃないよ、という警告の書」として。

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