琥珀色の戯言

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町長選挙 ☆☆☆


町長選挙 (文春文庫)

町長選挙 (文春文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
町営の診療所しかない都下の離れ小島に赴任することになった、トンデモ精神科医の伊良部。そこは住民の勢力を二分する町長選挙の真っ最中で、なんとか伊良部を自陣営に取り込もうとする住民たちの攻勢に、さすがの伊良部も圧倒されて…なんと引きこもりに!?泣く子も黙る伊良部の暴走が止まらない、絶好調シリーズ第3弾。

いま日本で最も安定している「面白い小説メイカー」である奥田英朗さんの「伊良部シリーズ」第3弾。
もちろん、「つまらない本」ではないし、随所に「奥田英朗の視点」が垣間見られて興味深い作品ではあるのですが、表題作以外の3作は、いずれも「モデルになっている人物」がすぐにわかるので、ちょっと安易な感じがするんですよね。
奥田さんは、ナベツネさんとかホリエモンを語っているようで、実は、彼らのような「話題の人物」を自分たちの都合でもてはやしたり叩いたりする「社会の酷薄さ」のほうを語っているのですけど。
「世間で叩かれている人物ほど、面白いところ、良いところを見つけてみたくなる」というのは、まさに「小説家」だなあ、と感じるのですが、「患者」がイメージしやすいだけに、今回は伊良部の影が薄いように思われますし、「上手いし面白いんだけど、ちょっと毒気が足りない」気がしました。

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