琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

実録・闇サイト事件簿 ☆☆☆


実録・闇サイト事件簿 (幻冬舎新書)

実録・闇サイト事件簿 (幻冬舎新書)

内容(「BOOK」データベースより)
面識のない男たちが、サイトを介して初めて会ったその日に犯罪を計画し、見も知らぬ31歳の女性を殺した「闇サイト殺人事件」。犯罪小説を地でゆくこの事件を生んだ「闇サイト」とはそもそも何のために開設され、どんな人物がアクセスしているのか。さらに報酬20万円で殺人を請け負う「何でも屋」、恨みを晴らす「復讐代行」など、2005年頃から危険なサイトが増殖している。閉塞した現代社会の合わせ鏡、インターネットの「裏」に深く切り込む、戦慄の実録ルポ。

うーん、「新書らしい新書」というか、「この著者がいままで書いてきたことのダイジェスト版」みたいな内容です。
「闇サイトと依頼殺人」「自殺系サイトとネット心中」「出会い系・家出サイトに潜む罠」「ネットで流通する合法ドラッグ大麻」という4つの章+終章からなっているのですが、200ページあまりの新書にこれだけたくさんの要素が詰め込まれているので、内容としては、「さまざまなメディアで報じられた『ネット関連事件』をまとめたもの」という印象で、著者の独自の視点をあまり感じませんでした。

著者の渋井哲也さんは、以前書かれた、『明日、自殺しませんか 男女七人ネット心中』(幻冬舎文庫)でネット心中について、「関係者への綿密な取材」をされていましたから、こういう「いままでの仕事を簡単にまとめてみました」というのを読むのは、ちょっと寂しい気がします。この間も書いたけど、最近の新書って、「書ける著者に手抜き仕事をさせてしまう媒体」になってしまっていることをつくづく感じるんですよね。
渋井さんは、「とにかくネットは不気味」「犯罪の温床」というマスメディア寄りではなく、「ネットを良く知っている立場」から、比較的公正なみかたをされているのではないかと思います。
しかしながら、「ネットのおかげで、人間の悪意が増幅される」のか、それとも、「ネットがなければ、そういう人間の悪意は形を変えて(あるいは、もっと暴発的に)世の中に撒き散らされる」のか?
その答えは、僕にはよくわかりませんでした。
「ネットがない社会」は、そんなに不便なのだろうか? そのことによるデメリットより、メリットのほうが大きいのではないだろうか?
こういうのは、もう「あともどり」できないことは承知の上で、そんなことを考えてもみるのです。

それにしても、いわゆる「闇サイト」の管理者たちの多くは、なんらかの主義主張のためにそういうサイトを運営しているわけではなく、単に「話題になって、アフィリエイトでひと稼ぎ」という目的で開設しているのだというのには、ちょっと驚きました。現実っていうのはそんなものなのかもしれませんが、「自分の運営しているサイトで、何かトラブルが起こること」への責任感みたいなものを持っているひとというのは、ほとんどいないようです。
そして、利用者たちにとっても、そこは「道具」にしかすぎない。
現実では援助交際なんてできないはずの「大人」たちが、ネットを通じてなら、欲望に忠実になれる。

でも、率直なところ、最大の問題というのは、やはり、「少なくとも、その根本的な原因はネットではないのだ」ということでしょう。
人間がいないところに、いくら光ケーブルが通っていても、そこで犯罪は起こらない。

2009年3月18日に判決が出た、「闇の職安」殺人事件では、名古屋地裁で、被告3人のうち2人に死刑、1人に無期懲役との判決が出ました。
この無期懲役になった男Kは、「短時間で自首したことで他の2人の逮捕に協力、その後に起こり得た犯罪を阻止し、解決に結果として寄与した」ということで無期懲役となったのですが、このKというのは、闇サイトで仲間を募った張本人だったのです。

 取調べ後、Kは日本テレビ系列のNNNからの手紙に返事をした。その文面には「自首した件については正直言って気の迷いです。なんとなくが正しいかも。死刑になりたくないからではない」とあり、謝罪についても「心にも思っていない事を口先だけで話しても失礼にあたると思います。現段階においては考えてもおりません」と書いていた。
 判決後、死刑を宣告された、元朝日新聞セールススタッフの男Tは、日本テレビ系列のNNNのインタビューに応じて、「一つ不満なのは、3人とも死刑にならなかったこと。これは私の作戦ミス。点数でいくと70点」「死が恐怖とか、そういうのは生きていることに価値のある人はそうかもしれないが、私の場合、ゼロの等しい。死に対して恐怖心はない。自分の命をもって償うのが一番」と答えた。

「闇サイトの罪」以前に、こういう人間たちが社会に存在している。そしてそれはたぶん、彼らだけではない、ということに、僕は恐怖を感じます。これはもう、ネットだけの責任ではないでしょう。
ただ、「彼らは、ネットで『仲間』を見つけることができなくても、同じことをやっただろうか?」とも考えてしまうんですよ。
ある種の「増幅効果」があることは、やはり、否定できないような気がします。
ネットで「癒される孤独」や「得られる仲間」は、かならずしも自分を救ってくれるとは限らない。

明日、自殺しませんか―男女七人ネット心中 (幻冬舎文庫)

明日、自殺しませんか―男女七人ネット心中 (幻冬舎文庫)

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