琥珀色の戯言

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プリンセス・トヨトミ ☆☆☆☆


プリンセス・トヨトミ

プリンセス・トヨトミ

内容(「BOOK」データベースより)
このことは誰も知らない。五月末日の木曜日、午後四時のことである。大阪が全停止した。長く閉ざされた扉を開ける“鍵”となったのは、東京から来た会計検査院の三人の調査官と、大阪の商店街に生まれ育った二人の少年少女だった―。前代未聞、驚天動地のエンターテインメント、始動。

何を書いてもネタバレになってしまいそうな小説なので、あまりストーリーには触れないようにしますが、『鴨川ホルモー』『鹿男あをによし』に続く、「関西を舞台にした、壮大な法螺話シリーズ」の集大成という作品です。
毎度のことながら、万城目学さんの「発想力」と、ちゃんとこういう奇想天外な話をまとめてみせる「構成力」には感心してしまいます。

「面白い小説」であることは間違いないのですし、「一見バカげたことを大事に受け継いでいく市井の人々への温かい気持ち」が伝わってくる、とても感じの良い作品であることは間違いないのですが、正直、読み終えて、「500ページも読んだような気がしなかった」のも事実です。広げた風呂敷の大きさのわりには、なんだかちょっと小さな話にまとまってしまったな、とも思いますし(それは、けっして悪いことではないのでしょうけど)。
あと、いまの「ネット社会」では、たぶん、この物語で描かれているよりもはるかに、人々の「口が軽い」のではないかと。
そして、あまりに美しすぎる人間関係って、ある意味「鹿がしゃべること」よりもはるかに「非現実的」に感じるのも事実です。

それでも、「こういうスケールの大きな嘘」を書ける作家が貴重な存在であることは間違いないですし、『プリンセス・トヨトミ』ほどのデキのエンターテインメント作品というのは、そうそう無いんですけどね。
万城目さん未体験の方は、『鴨川ホルモー』の文庫くらいから読み始めてみたほうがいいかもしれません。

鴨川ホルモー (角川文庫)

鴨川ホルモー (角川文庫)

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