琥珀色の戯言

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名人誕生―面白南極料理人 ☆☆☆


名人誕生―面白南極料理人 (新潮文庫)

名人誕生―面白南極料理人 (新潮文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
巡視船で航海中突然呼び出された著者は、南極観測隊員に選ばれたことを知る。そうだ、ずいぶん前に応募してたんだっけ!過酷な訓練や悲劇に終った身体検査の間に、次々現れる濃〜いキャラの隊員たち。超お喋りな相方の料理人、どう見ても猪八戒パイロット、ウヒャヒャ笑い続ける隊長―夢と不安に包まれて到着した白い大陸で、外は寒いが仲間同士は温かい生活が始まる。南極料理人誕生爆笑秘話。

このシリーズ第一作の『面白南極料理人』が、堺雅人さん主演で映画化され、8月に公開されるそうなのです。
この文庫は、その「映画化便乗企画」みたいな感じなのですが、この「南極料理人」シリーズは、第一作の『面白南極料理人』は大傑作なのですが、それ以降は、「出がらし」っぽいんですよね。
第一作は、続編どころか、本になるかどうかすらわからないので、とにかく、「一冊入魂」で書かれていたのに、一度売れてしまうと、なんとなく「完投するための省エネ投法」みたいな内容になっているように思えます。
1冊のボリュームも少ないですし。

南極観測隊の生態? がのぞき見られて、面白いことは面白いが、いかんせん著者が科学者ではないので、学術的な興味でこの本を見ると裏切られる」
 最初に刊行された『面白南極料理人』のネット書評でこんな感想を見つけた。
 お金を出して我が拙著を買ってくれた読者様がおっしゃるのだから、まさに神の声ではあるが、正直若干むかついた。
「金だして教科書みたいなこむずかしい本を買う奴がいるか?
 何でもかんでも真面目に、真剣に、笑いはいらないなんて考えだから、今の日本はつまらない国になってしまったんだ!」

 たしかに、西村さんは、「面白く書く」ことをもっとも大事にされていますし、「南極観測隊の本」が、すべて学術的でなければならないというのも言いがかりです。
 読んでいて、たしかに西村さんの圧倒的なバイタリティに引き込まれますし、この『名人誕生』について言えば、当時、南極観測隊のスタッフたちがつくっていた「学級新聞」ふうの「南極新聞」が掲載されているのが興味深かったです。
紹介されているのは、1989年のものなのですが、ちょうどこのくらいの時代から、ワープロが普及しはじめたというのがよくわかります。
 ただ、もしこの話の舞台が「南極」という特別な場所でなければ、「暑苦しいオッサンの体験談」でしかないのかな、とも思うんですよね。


ちょっと脱線しますが、この『南極面白料理人』には、ひとつ思い出があって、昔、本好きの後輩女子が遊びに来たとき、「ここに来るまでの電車のなかで読んだ本が、すごく面白かった」と言っていたのです。
僕もちょうどその『南極面白料理人』を読み終えたばかりだったので、「これは何かの運命なのでは!」というようなことを感じたんですよねあの時は。

結局、その後も2人には大きな進展もなく、逆に、「趣味が近い人間どうしというのは、ときどき会って話をするにはいいけれど、ずっと一緒にいるのは難しいのかもな」というようなことを考えさせられたのですけど。


面白南極料理人 (新潮文庫)

面白南極料理人 (新潮文庫)

↑は強くオススメしておきます。こちらは本当に「全力投球」の面白さ。

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