琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

絶望に効くクスリ 14 ☆☆☆


出版社 / 著者からの内容紹介
1日平均86人が自殺すると言われる日本。この国で、希望はいったいどこにある…? 漫画家・山田玲司が体を張ってオンリーワンな人々に訊く、悪夢な時代の歩き方!!

元ホテルマン:加藤健
旅人:金井重
ギタリスト:鮎川誠
公認会計士山田真哉
ジャズピアニスト/作曲家:山下洋輔
SF作家/脚本家:ニール・ゲイマン
「かりゆし58」ヴォーカル・ベース:前川真悟
未来バンク事業組合理事長:田中優

山田玲司さんの「革命的対談漫画」の第14集。
僕はインタビューとか名言集が大好きなので、このシリーズもずっと読んでいるのですが、この第14集は、「ちょっと知らない人が多いなあ」という印象でした。
そして、読んで興味を持てた人も、加藤健二さんと山田真哉さん、山下洋輔さんくらいだったんですよね実際。
元不良が無茶苦茶やった末に母親の愛に目覚めて「愛の歌」を歌い始めたなんてエピソードは、僕にとっては「美談」というより、最初からずっと普通に生きて、親孝行してきた人のほうが、よっぽど偉くないか?としか思えないし。

山下洋輔

「『音楽家になりたい』っていう人はなれなくて… 『音楽家になると決めた人』が音楽家になるんですって言葉があるんです。要は、『やるんだ』って決めちゃえばできるよね。」

ニール・ゲイマン

「アメリカで有名な作曲家のソンドハイム氏が、「子供と芸術」という曲を作ったのですが、その時に言っていました……人類が唯一残せるものは「子供」「芸術」の二つだと…でも子供を作って自分が救われようとするのはあまり好ましくないので、僕は芸術(アート)を残します。これが私を救う唯一の処方箋です……」

こういうすごく印象的な言葉もありますし、僕にとっては、「元ニート公認会計士にして、ベストセラー作家」である、山田真哉さんの話がいちばん興味深かったです。

あと、僕が考えさせられたのは、田中優さんのインタビューの「後記」での、山田さんのこんな文章でした。

あの映画『タイタニック』で最後まで演奏をやめなかったミュージシャン連中を「プロだ」とほめる人がいるけれど、僕はそうは思わない。

僕もずっと、彼らのエピソードが「美談」とされていることに、なんとなく違和感があったんですよね。
むしろ彼らは、「パニックに陥りそうな自分自身のために、日常を続けざるをえなかっただけなんじゃないかな」とも思いますし。
その一方で、沈みゆく船で、最期まで演奏を続けること選んだ「滅びの美学」みたいなものに、言葉にしがたい美しさも感じるのです。

じゃあ、織田信長は、本能寺で、最期まで逃げのびようとあがくべきだったのだろうか?

今回も、いろいろと考えさせられる内容であることは間違いありません。
ただ、この14巻は、僕にはちょっと共感しにくい人物が多かったかな。

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