琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

Twitter社会論 ☆☆☆☆


Twitter社会論 ~新たなリアルタイム・ウェブの潮流 (新書y)

Twitter社会論 ~新たなリアルタイム・ウェブの潮流 (新書y)

140字の「つぶやき」がなぜ世界を変えるのか

リアルタイム性の高さと強力な伝播力によって、ツイッターはコミュニケーションを変えた。
ジャーナリズム、政治、ビジネスの世界に、何が起きているのか?

勝間和代さんとのスペシャル対談「つぶやく力」収録!

ツイッターとはいったい何なのか?

「2013年には10億人のユーザーを獲得する世界初のウェブサービスとなる。その時ツイッター
地球の鼓動となり、神経系となるだろう――。」
オバマ大統領をはじめとして各界著名人や各種公的機関、マスメディアや大企業がこぞって使い、全世界で
爆発的にユーザーを増やし続けているツイッター
今、何が起こっているのか? これからどうなるのか?
いち早くツイッターを使いこなし、「tsudaる」の語源ともなった著者がそのインパクトを読み解く!

僕自身が最近Twitterにかなりハマっていることもあり、先日の『ツイッター 140文字が世界を変える』に引き続き、話題のこの新書を読んでみました。
ツイッター 140文字が世界を変える』が、「これからTwitterをはじめようとする人に、Twitterの使い方、楽しみ方を紹介する入門書」であるのに対して、この『Twitter社会論』は、「Twitterで世界はどう変わるのか?」「Twitterで自分を、世界を変えるには、どうすればいいのか?」が書かれています。
そういう意味では、「ある程度Twitterに慣れてきた人」のほうが、理解しやすい内容だと思われます。

僕はこれまで、「tsudaる」という言葉を知ってはいたものの、実際はどんなものなのかよく理解できていなかったのですが、この新書を読んで、ようやくそれがわかりました。
tsudaる」(Twitterでリアルタイムに公共性のある会議やイベントをまとめ、レポートすること)のは、けっして簡単なことじゃないよなあ、というのも含めて。
ジャーナリストや専門家、あるいはそういう職種を目指す学生には「tsudaる」トレーニングは非常に有用だと思うのですが、大部分の人たちは、そんな重要なミーティングに出席する機会もないし、自分の会社の会議を「tsudaる」のは許されない場合がほとんどでしょう。
「誰でも発信できる」というのはたしかにTwitterの魅力だけど、現実的には、「発信者になる」のは、そんなに簡単なことじゃないよなあ」と思い知らされます。

雨後の筍のごとく乱立している「Twitter本」のなかで、この本が優れているのは、津田さん自身がTwitterを使いこんだ人であり、「Twitterの限界」も熟知している、ということです。
Twitterの「リアルタイム性」は大きな魅力なのですが、その一方で、「デマがあっという間に広がってしまうリスク」や「フォロワ―が多くないと、広まりようがない」という点にも言及されています。
また、Twitterの「功績」として語られることが多い、イラン、モルドバ民主化運動の「リアルタイム中継」に関しても、

 米国の政府がツイッター社に対してメンテナンスの延期要請を行ったというのも一見「美談」のようであるが、米国にとっては、現政権が存続するよりも穏健改革派のムサビが政権を取って「民主化」が進む方が単に「国益」になるというわかりやすい話でもある。2009年7月、ブッシュ元大統領の副セキュリティ顧問を務めていたマーク・フェイフルはクリスチャン・サイエンス・モニター紙に「イランでTwitterが演じた役割はノーベル平和賞候補として検討されるだけの価値がある」というコラムを寄稿したが、元政府高官がこうした政治的発言をすることも含め、ツイッターは急速に政治性を帯びてきている。

と書かれているのには、著者の良心を感じました。
Twitterは「リアルタイム」の「新しいメディア」で「属人性が強い」と言われていますが、「個人のつぶやきの集積だから、公正で権力に左右されない」というわけではないのです。
ある種の「フィルター」をかかっている可能性については、つねに留意している必要があると思います。
アメリカ政府は、自分たちに都合の悪い「つぶやき」が蔓延するようになれば、Twitterをずっと「メンテナンス中」にすることだってできるのですから。
いまのTwitterの先駆者たちのなかには、「個人の発言」という形式の「強力な宣伝・広告ツール」としてTwitterを利用している人もたくさんいます。
もちろん「宣伝」が悪いわけじゃありませんが、「Twitterだから、本音で書かれている」というわけでもない。
ブログで苦い思いをした人たちは、当然、Twitterでは最初から慎重に発言をしているはずです。

僕はTwitterの「リアルタイム性」については、すごいなあ、愉しいなあ、と思うのと同時に、「でも、それが僕を幸せにしてくれるのだろうか?」という疑念を拭い去ることができません。
ジャーナリストやメディアの関係者には、すごく「有用」なのかもしれませんが、「田舎の一般的な社会人」である僕のような人間には、「即時性」にとりつかれて何時間もタイムラインを追いかけ続けるよりも、ある程度時間が経って、取捨選択され、まとめられたあとの情報を確認していくほうが、はるかに「効率的」に感じるのです。
そもそも、異国の政治情勢や国会のやりとり、自分の知り合いもいない地域の災害情報をリアルタイムで追いかけて、何のメリットがあるのか?
人間というのは、「知ること」そのものが最大の娯楽だともいわれるのですが、情報の洪水に溺れて、自分自身の手の届く範囲が見えなくなるような生活が、本当に「幸せ」なのか?
Twitterで世界にモノ申すより、自分の専門の論文でも読んでたほうが、「有意義」なんじゃない?

もちろん、スポーツ中継などでは、「リアルタイムでタイムラインを追っていく」のは、夜のスポーツニュースや翌朝の新聞で試合結果を知るのとは違った「愉しみ」があります。
しかしながら、これからもっとTwitterが広まっていけば、とくに、政治とか社会問題に関しては、「ノイズばかりがなだれ込んできて、右往左往しているうちに一生が終わる」なんてことが起こるかもしれません。

この本のなかでとくに興味深かったのは、津田さんと勝間和代さんの対談でした。僕は勝間さんの押しの強さがどうも苦手なのですが、「Twitterの伝道師」であるお二人は、「Twitterいいよ、とにかくつぶやいてみて!」と広報活動をすすめている一方で、世の中には「Twitter向きじゃない人」がいるというのもわかっている。そういう景気の悪い話はメディアの「Twitter特集」で語られることは少ないので、とても貴重だと思うのです。

津田大介確かに名前で商売している人間にとっては、ツイッターで注目を集めることが評判を高めることにもなりますよね。ただ、会社勤めをしている人にはそういう方向では直接的なメリットが見出しにくい。ただ、この本を含め「ツイッターって面白いよ」と報じるメディアは増えつつあって、ITに明るくないビジネスパーソンの目にも触れるようにはなってきてますよね。彼らがツイッターを使いこなすにはどういう訓練を積めばいいですか?


勝間和代ブログから始めたらいいんじゃないですか。


津田:まずは長い文章から書けと(笑)


勝間:私はツイッター万能論は避けたいと思っているんです。ネットのコミュニケーション能力を養うのはツイッターだけ使っていてもムリ! ツイッターの何が辛いって、津田さんや私たちのようなプロの物書きと同じタイムライン上で140文字てやりあうこと。物を書いたり、編集したりする習慣のない人には、それは難しいですよ。ツイッターはあくまで現実の全局面のほんの一部。バリバリ使いこなしたいなら、むしろ、ブログをキチンと書けるようにするとか、オフ会に行ってもちゃんと話をするとか、いろんな方面からスマートなコミュニケーションのありかたを探るべきだと思いますね。


津田:現実社会ではコミュニケーション下手でもツイッターでは人気者という人は……。


勝間:初期ならあり得ますけど、最終的には淘汰されちゃいますよ。


津田:夢も希望もないなぁ(笑)

ああ、なんか身もふたもない話だなあ。
でも、それが「現実」なんだろうな、とも思う。
『レッドカーペット』を観ていても、1分で面白いネタをコンスタントに作れる芸人は、もっと長い持ち時間でも観客をひきつけられる場合がほとんどですし。

結局のところ、個人サイトがブログになっても、ブログがツイッターになっても、そこで人気になっている人が入れ替わることはないのかな、という気もしています。
そういう意味では、ブログもツイッターも、「いれものが替わっただけで、中身は同じ」なのかもしれませんね。

長々と書いてしまいましたが、Twitterの話というだけでなく、「これからのネット時代のコミュニケーションのありかた」について興味がある人は、一度手にとってみることをオススメします。
Twitterの魅力」だけじゃなく、「Twitterは万能じゃないよ」ということがしっかり書いてあることも含めて、とても良心的な新書です。

僕は正直、「今くらいのぬくもりのTwitterが、ずっと続いてくれればいいのに」って思うのですけど、そうはいかないんだろうなあ……


そうそう、僕のTwitterは↓です。一度覗いてみていただけると嬉しい。
http://twitter.com/fujipon2



参考リンク:『ツイッター 140文字が世界を変える』感想(Twitter初心者は、こちらの新書から読んだほうが良いと思います)

ツイッター 140文字が世界を変える (マイコミ新書)

ツイッター 140文字が世界を変える (マイコミ新書)

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