琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

屋上ミサイル ☆☆☆


屋上ミサイル (上) (宝島社文庫) (宝島社文庫 C や 2-1)

屋上ミサイル (上) (宝島社文庫) (宝島社文庫 C や 2-1)

屋上ミサイル (下) (宝島社文庫) (宝島社文庫 C や 2-2)

屋上ミサイル (下) (宝島社文庫) (宝島社文庫 C や 2-2)

内容紹介
第7回『このミス』大賞は大紛糾! 選考委員がまっぷたつに分かれ、喧々諤々の議論の末、大賞のダブル受賞となりました。本作は、高校生が結成した「屋上部」が、屋上の平和を守るため、難事件に挑む青春ミステリーです。選考委員のコメントは次の通り。「読みはじめてすぐ、今回の大賞はこれだ!と確信した。キャラと会話は抜群。文章のセンスもいい。自信をもって推薦します。私も屋上部に入りたい」大森望(翻訳家・評論家)「前半の複線が綺麗にはまってくる後半に随所で感心。口当たりのいい青春活劇に仕上がっている」香山二三郎(コラムニスト)

内容(「BOOK」データベースより)
大統領がテロ組織に拉致監禁されるという大事件がアメリカで発生していたものの―日本の高校生たちにとって、それは遠い国の出来事だった。それよりも、もっと重要なことがある。例えば、校舎の屋上でスケッチをすることだとか。美術の課題のため、屋上にのぼった高校二年生の辻尾アカネ。そこで、リーゼント頭の不良・国重嘉人や、願掛けのため言葉を封印した沢木淳之介、自殺願望を持つ平原啓太と知り合う。屋上への愛情が共通しているということから、国重の強引な提案で“屋上部”を結成することになった四人。屋上の平和を守るため、通行人を襲う罰神様騒動、陸上部のマドンナ・ストーカー事件、殺し屋との遭遇などに巻き込まれることになる。それらはすべて、ひとつの事件に繋がっていた!『このミステリーがすごい!』大賞2009年第7回大賞受賞作。

あの海堂尊先生を生んだ『このミス』大賞受賞作。
2010年度の『このミス』の座談会で、微妙な評価をされていた作品なので、ポジティブなものとネガティブなもの、2種類の期待をしながら読み始めました。

「屋上部の活動内容は?」とわたしは訊いている。
「屋上の平和を守る」
「世界の平和じゃなくて?」
「世界の平和を祈るのは人間だけですけど、それを実現できるのは、きっと人間じゃあありませんよ」と平原が溜め息のような声を出した。
「世界なんてどうなってもいいっつうの」国重が不満げな顔をする。「世界を救う気なんてさらさらねえ。俺たちが守るのは、屋上だって」

冒頭の雰囲気はなかなか良かったです。
「屋上部」っていうのも、「青春」っぽいし。

しかしながら、このあたりの会話から受けた「印象」は、最後まで覆ることはありませんでした。

これって、伊坂幸太郎米澤穂信ぽいなあ……

というか、キャラクター(「ちょっと抜けた「殺し屋」とか出てきますしね)や会話の「伊坂っぽさ」は、ちょっと尋常じゃない。
選考委員の大森望さんの「キャラと会話は抜群。文章のセンスもいい。」という選評を読みながら、僕は「それって伊坂幸太郎っぽいところばっかりですから! 残念!」と懐かしいギター侍になってしまったくらいです。
この選評の裏を返せば、「ミステリとしてのストーリー展開やトリックはちょっと……」ということなのだろうな、と。
というか、トリックなんて何一つないですからねこれ。主人公たちの都合のいいように、状況のほうが勝手に動いてくれるんですよ。犯人を捕まえるために彼らがつくった「あるもの」に、アッサリ自分から引っ掛かる犯人! そんなバカなやついねえよ……
そもそも、これって「ミステリ」なの?
米澤さんの「青春ミステリ」系の作品と比べると、あまりに「知的興奮」に乏しいというか、御都合主義感が強いのです。
米澤さんの場合は、多少強引なところはあるにせよ、「探偵役の頭の良さが伝わってくるような小事件の解決」を、最初のほうにちゃんと配置しています。
同じような舞台を設定しているようで、読んでいる側の「納得度」は全然違うんだよなあ。

この(伊坂幸太郎米澤穂信)÷3、という作品については、『このミス』大賞でも、大激論となったそうです(巻末の大森望さんの「解説」に書かれています)

吉野仁さんは、「選評」で、

 さっぱりダメだったのが『屋上ミサイル』。伊坂幸太郎をまんま真似たような設定や科白まわしが鼻につく青春小説。ご都合主義の展開ばかりで、ミステリーとしての興趣もなくサスペンスとしての興奮もない。……すべて都合よく人物や設定がお膳立てされてくのだ。あまりに安易。

と、この作品への授賞に反対されています。
大森さんは、「本書の場合、最初から、ありえない偶然(裏に名前が書かれた”死体写真”を国重がたまたま拾う)が話の出発点。同時に沢木が拳銃を拾うという、さらにありえない偶然まで重なるのだから、いわゆるリアリズム小説の文法ではなく、ゲーム的な(ライトノベル的な)リアリズムに従っていることは最初から明白だ」と仰っているんですけどね。

ミステリなら、もっと知的興奮を味わえる作品がたくさんあるし、ライトノベルなら、もっとぶっ飛んだ展開で楽しませてくれる作品がたくさんあるのだから、あえて『屋上ミサイル』をオススメする理由は、あまり無いような気がします。
「こういう作品」を読みたければ、まずは伊坂幸太郎米澤穂信を読んだほうが効率的じゃないかと思うしね。

でも、なんというか、最後まで一応読んだし、ツッコミどころもまた小説の味だと思えば、そんなに悪い作品ではないのかなあ……他人には、ちょっと薦めがたいのですけど。

それにしても、この程度の長さ・内容の小説をわざわざ分冊にする宝島社文庫は、えげつないなあ……
これじゃあ、『屋上ミサイル』じゃなくて、『地雷文庫』だよ……

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