琥珀色の戯言

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ひなびたごちそう ☆☆☆


内容紹介
サバサンド、マグロのカツレツ、スキヤキ――変わり種から正統派まで、うまいものにありつくために、台所で試行錯誤を繰り返し、日本全国・世界各地で、さまざまな名物を口にする。「ひなびた」家庭料理がにわかにいとおしく思えてくる、文壇随一の料理人による食エッセイ。巻末にレシピ付き。

このエッセイを読むまで、僕は島田雅彦さんがこんなに「食通」だなんて知りませんでした。
その「食通」というのも、どこそこのブランド牛がとか、高級レストランが、というような話ではなく、あまり「高級感」はないけれども、たしかに食べたらおいしそうな「B級グルメ」から、羊の脳やウミヘビのような、「ゲテモノ」(って言ったら、島田さんには怒られてしまいそうなのですが)までが採り上げられており、かなり身近で興味深い「食」のエッセイです。
巻末にはレシピ集がついており、本文中にも島田さんが実際に料理をして得た「勘所」みたいなものが書かれているので、自分で料理をする人にとっては、かなり参考にもなりそうです。
僕は残念ながら料理は苦手なので、「美味しそうだなあ」と思いながら読んだだけで、この本を活かせていないのではないかと思います。

このエッセイ集には、ところどころ、これまでの「僕の中途半端な食に対する先入観」を打破してくれる記述がありました。
これはそのうちのひとつ。

 さて、ステーキの焼き方だが、毎度毎度ミディアムでは能がない。といって、レアは霜降り肉でないと、硬くて顎が疲れる。いっそ、ウェルダンで食べてみればよい。ウェルダンは、オーヴァーダンではない。レストランでは、焦げ目をつけた後、オーブンに入れて、肉の芯まで灰色に変わったところで取り出す。最も技術を要する焼き方だ。マスタードもソースもよく絡むし、肉は軟らかくなる。

僕は長年、「ステーキはレアで食べるべきもの」というイメージを抱いていたのです。実際のところは、「レア」がちょっと苦手なので、「ミディアム」にすることがほとんどなのですが。
「ウェルダン」は、言葉くらいは知っていたけれど、それをオーダーしている人を目の当たりにしたことはないし、「ウェルダンを頼むのは、ステーキの作法に反する」ような気がしていたのです。
でも、この島田さんの文章を読んでいると、「ウェルダンは、最も技術を要する焼き方」で、「肉も軟らかくなる」のですね、全然知らなかった。
今度はぜひ、「ウェルダン」にしてみようと思います。店の人は「ウェルダン」に慣れていないのではないかと、ちょっと心配ではありますけど。

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