琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

エデン ☆☆☆☆


エデン

エデン

あれから三年――。白石誓は、たった一人の日本人選手として、ツール・ド・フランスの舞台に立っていた。だが、すぐさま彼は、チームの存亡を掛けた駆け引きに巻き込まれ、外からは見えないプロスポーツの深淵を見る。そしてまた惨劇が……。大藪賞受賞、本屋大賞2位に輝いた傑作の続編が、新たな感動と共に満を持して刊行。

日本ではほとんど採り上げられることのない「自転車ロードレース」の世界を描いた『サクリファイス』の続編。
出る、と言われながら、前作からもう3年も経ってしまったんですね。
白石誓も、あれから3つ、年を重ねて、ついに「ツール・ド・フランス」の舞台に立つこととなりました。
もっとも、彼の場合は、「総合優勝を目指すようなスター選手」としてではなく、あくまでも、「エースのアシスト」としてなのですが、それでも、この世界最大の自転車ロードレースの舞台に立つというのは凄いことでもあり、その世界にいる人間にとっては、「出られるだけで幸せ」なのだということが伝わってきます。

ちなみに「続編」なので、未読の方、既読でも、前作のストーリーを忘れてしまった方は、前作を読んでおくことをお勧めします。
ストーリーそのものは、前作を読んでいなくても理解できますし、この作品単体でも、面白い「スポーツ小説」なのですが、主人公・白石誓に「とりついているもの」を知っているのといないのとでは、『エデン』への思い入れは、全然違ってくると思いますので。

この『エデン』、スポーツ小説としては素晴らしい作品だと思います。
僕も一時期、ツール・ド・フランスに興味があって、フジテレビが夜にやっていたレポート番組を楽しみに観ていたのです。
最初は、ただ単に「速く走ればいいだけじゃないか」と思っていたのですが、自転車レースには、選手同士、チーム同士のさまざまな駆け引きががあり、勝負のゆくえは、「実力」だけでは決まらない、「消耗を避けるために、マイヨ・ジョーヌを手放す」(マイヨ・ジョーヌを着ている選手のチームは、「レースをコントロールする」という暗黙の義務を課せられるので、チームの疲労とストレスが大きくなるから)、なんていう戦略まであるというのには驚かされます。

二転・三転するレース展開、そして、なかなか起こらない事件……

うーん、『サクリファイス』のときも感じたのだけれど、この作品に「事件」って必要なのかなあ……
プロスポーツの厳しさ」や「人間どうしの暗い駆け引き」みたいなのを描きたかったのかもしれないけど、なんか、せっかくのツールに水を差されて、そのまま終わってしまったような消化不良の印象です。
ただ、「普通のスポーツ小説」であれば、ここまで話題にもならないだろうし、ああいう「事件」を描くことが、物語の「引っ掛かり」として機能している面はあるのでしょうが……

個人的には、「面白いけど、文庫になってから読んでもいいんじゃないかなあ……」という感じでした。
自転車レースという題材も、ツール・ド・フランスですから、スケールは大きくなったのだけど、やっぱり、『サクリファイス』のあとだと、「同じような話」に思えるしなあ。


サクリファイス (新潮文庫)

サクリファイス (新潮文庫)

↑『サクリファイス』が文庫化されていますので、『エデン』の前に、こちらを読んでおくことをおすすすめします。
『サクリファイス』への僕の感想


自転車レースに興味のある方には、この本がオススメです。いや、自転車レースというより、人生に興味があるすべての人に。

 それから最高のときが来た。チームメイトとともに勝利を祝う最後の一周をするのだ。USポスタル・サービス・チームは、シャンゼリゼ通りをゆっくり流した。見知らぬ男性が突然道路に飛び出してきて、僕に棒のついた大きなアメリカ国旗を渡した。僕は国旗を高く掲げた。深い感動で胸がいっぱいになった。
 最後にフィニッシュラインの所に戻り、僕は涙を懸命にこらえながら記者たちに話した。「信じられない。本当に。すごいショックです。僕が言いたいことはただ一つ。もし人生で二度目のチャンスを与えられたら、徹底的にやり抜くことです」

ランス・アームストロングの「この本で書かれた後の人生」には、いろいろ考えさせられますが……

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