琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

ATOM ☆☆☆☆


ATOM スタンダード・エディション [DVD]

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■ストーリー
夢のような空中都市、メトロシティ。天才科学者テンマ博士は事故で命を落とした愛息、トビーの身代わりにと最新型ロボットを作る。姿はそっくりで、記憶もトビーのまま。仲間のお茶の水博士が開発した<ブルーコア>という究極の未来型エネルギーを搭載。でも結局はロボット、息子の代わりにはならないと、テンマ博士は彼を追い出してしまう・・・。
居場所を求め初めてやってきた地上でロボットは自らを「アトム」と名乗る。新しい仲間もでき、父と別れた寂しさを抱えながらもたくましくなっていく。そんな頃、メトロシティのストーン大統領は<ブルーコア>の軍事利用を目論み、アトムの捜索を始める。捕らえられ、テンマ博士と再会するアトム。メトロシティと地上を巻き込んだ壮絶な戦いが、いま始まる!

この映画のDVDを観たのは、率直に言うと、「またいつもの原作を愚弄する『ハリウッドリメイク』だろうから、どんなに酷いか見届けてやろうかな」という黒い理由からでした。
近所のTSUTAYAでも、新作なのにあまりレンタルされていなかったみたいだし。

でも、この「手塚治虫と『鉄腕アトム』への敬意」がある程度は伝わってくるリメイクの『ATOM』は、僕にとって、自分の年齢と、それに伴う考えかた、感じかたの変化を意識せずにはいられなくなる作品だったのです。
最初に『鉄腕アトム』を観た(とはいっても、リアルタイムではなく、再放送とかテレビアニメのリメイク版)頃の僕は、「天馬博士って、とんでもないエゴイストで、酷い人間だ!」と憤っていましたし、「アトムは正義のヒーローなんだから、正義のために戦うのは当然」だと思っていました。

しかしながら、今回『ATOM』を観ていると、どうしても僕は「天馬博士の視点」になってしまったのです。
自分の息子を突然の事故で亡くし、技術の力で「息子の記憶を持つロボット」として生まれ変わらせた博士。
にもかかわらず、博士はアトムを「あれは(息子)のトビーじゃない、ただのロボットだ!」と邪険にするようになり、家から追い出してしまいます。
ひどい、ひどいよ天馬博士。でも、僕だって、自分の息子に万が一そんなことが起こって、「ロボットとして」再生された場合、「人間として生きていたときの息子」と同じように接することは難しいのではないかと、考えずにはいられませんでした。
やっぱり、それは、自分の息子ではないんじゃない?
その一方で、アトムのほうは「トビーの記憶」を持っているのですから、そんなふうに拒絶されるのはたまらないはず。
ある意味「記憶こそがその人そのもの」なんだけれども、それが宿るものをどう感じるかによって、人というのは、それを愛せたり、愛せなくなったりしてしまう。
人間って、本当にエゴイスティックな生き物だと思います。

その後、なぜかアトムの「自分さがし」がはじまったり、これは『WALL・E/ウォーリー』の大ヒットにあやかろうとしているのか?と言いたくなるようなシーンが連発されたりするのですが、最終的には、「人間と人間が創ったものたちの融和への道」が示されます。
これはまさに、手塚治虫先生が『鉄腕アトム』で描いていた「希望に満ちた未来予想図」そのもの。
少なくとも、「手塚先生の志を汲んだ作品」ではあると思います。

僕はこの映画を家で夜中に観終えたとき、少し泣いてしまいました。
「子供のころ、アトムが人類を助けてくれるのは『正義の味方だから当然』だとしか感じていなかった」のが、なんだかすごく申し訳なくて。
いくら10万馬力だろうが、こんな小さな子供に、「人間とロボットの未来」を背負わせて、「ヒーローなんだから、それで当然」だと思っていた自分の傲慢さが情けなくて。

それが「使命」だというけれど、アトムが受けた痛みや傷は、僕には「割に合わないもの」のように感じます。
もっと自力でがんばれよ、アトムにばっかり頼るなよ人間ども(僕も含む)!

テレビアニメの最終回も「アトムが人類のための犠牲になる話」でしたしね。
アトムの立場ではなく、天馬博士の視点から物語をみてしまうような年齢になると、こんなにもスーパーヒーローのことが心配になるのか、と僕は驚いてしまいました。
アトムの場合は、天馬博士との関係や、まだ小さな男の子である、ということから、とくに、感情移入度が高くなってしまったようです。

絵柄は苦手な人も多いかもしれませんし、中盤若干間延びしますが、僕にとっては、先入観よりもかなり良い作品でした。

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