琥珀色の戯言

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物語上野動物園の歴史 ☆☆☆☆


物語上野動物園の歴史 (中公新書)

物語上野動物園の歴史 (中公新書)

内容(「BOOK」データベースより)
明治五年、湯島の展覧場にオオサンショウウオなどが展示されて以来、140年の歴史を持つ上野動物園。明治期には、ニホンオオカミやトキが飼われ、徳川慶喜ナポレオン三世からもらったウマも暮らしていた。戦中には猛獣殺害という悲劇もあったが、いまでは飼育種数では世界有数の動物園に育ち、教育・環境保全などでも重要な役割を担っている。園長自身が激動の歴史を、代表的な動物たちのエピソードとともに案内する。

新書としては、かなり厚めの300ページ近くにわたって、上野動物園の140年の歴史と、それぞれの時代に上野動物園を彩った動物たちのエピソードがちりばめられています。
ただ、良くも悪くも「真面目に書かれている本」であり、紹介されている動物のデータもかなり細かいので、これだけのページ数がありながら、かなり「駆け足で紹介されている」ように思えましたし、情報量に圧倒され、読み疲れてしまったのも事実です。

しかしながら、上野動物園の開園百周年の際に刊行された『上野動物園百年史』は、「593ページの本編と852ページの資料編からなる大部なもので、重さは3.5キログラムにもなった」そうですから、この新書でも「駆け足での紹介」になってしまったのは、しょうがないのかもしれません。

もっとも、僕みたいに「目の前に本があると、それを読み終えないとなんとなく気分が悪い」というタイプでなければ、毎日少しずつ「上野動物園」の歴史をたどっていけば良いのでしょう。

この新書を読んでみると、いまでは「動物園にいるのが当たり前」だと僕が考えている動物、ゾウやキリンやライオンなどが上野に、そして、日本の動物園にやってくるまえには、かなりの試行錯誤があったことがよくわかります。
これらの動物の命を奪った「戦争」の悲劇や、戦後の平和とともに、日本の経済成長とともに、増え始めた動物たち(ちなみに太平洋戦争後の「動物交換」で海外から希望が多かった日本の動物は、オオサンショウウオとツルだったそうです)、そして、希少動物を守るための研究施設としての動物園の役割なども丁寧に描かれていて、当たり前のことなのですが、「旭山動物園だけが、動物園じゃない」ことをあらためて思い知らされます。
上野動物園でも「行動展示」は試みられているのです。

 年間入園者数300万人、パンダブームのころは700万人を超えていた上野動物園は世界で最も過密な動物園である。東京と人口規模が似ていて、5つの動物園、水族館が存在するニューヨーク市と比較してみる。ブロンクス動物園の面積は148ヘクタールと上野の10倍以上あり、年間入園者数は200万人だから入園者密度は上野の15分の1である。もしブロンクス並みにゆったり動物園を楽しんでもらうには、上野動物園の年間入園者数は20万人にまで下げなければならない。国土面積が日本より狭く、動物園面積もほぼ同じロンドン動物園の年間入場者数は100万人で、もしロンドンを手本にするなら上野の年間入園者数は100万人が理想になる。

パンダがいない上野動物園だって、「世界有数の動物園」なのです。
そして、この上野動物園と同じくらいの人が北海道の旭川の動物園に行くのですから、日本人は、本当に動物園が大好きなんですね。
もちろん、僕も動物園大好き。

ちなみに、

 1871年秋に開設された湯島の展覧場を動物園の発祥地とみなすならば、博覧会開催前から飼われていたオオサンショウウオクサガメが日本で最初の動物園展示動物といえる。

のだそうです。
ちなみに、1882年の上野への引っ越しの際の「外国産のスター動物」は、「スイギュウ」。

ずっと変わらない場所のような気がしていたけれど、動物園というのは、ずっと「進歩しつづけている場所」みたいです。

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