琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

インセプション ☆☆☆☆



参考リンク:映画『インセプション』公式サイト

あらすじ: コブ(レオナルド・ディカプリオ)は人が夢を見ている最中に、その潜在意識の奥深くにもぐり込んで相手のアイデアを盗むことのできる優秀な人材だった。彼は、企業スパイの世界でトップの腕前を誇っていたが、やがて国際指名手配犯となってしまう。そんなある日、コブの元に“インセプション”と呼ばれるほぼ不可能に近い仕事が舞い込む。

木曜日のレイトショーで観賞。
まだ夏休みな人も少なくないとはいえ、終演が24時近くなるので、さすがに観客も十数人といったところでした。
公開から1ヵ月くらい経ちますしね。

観たい観たいと思いながら、忙しかったのと、2時間半近い上映時間にあわせるのが難しかったため、なかなか観られなかった『インセプション』、とりあえず劇場で観られてよかった。
とはいえ、この作品、率直なところ、寝不足のままレイトショーに駆け込んだ僕にとっては、ちょっと難しくて、上映中何度か寝落ちしてしまいました。
「夢」を描いた作品ですから、眠くなるのは正しい観かたなのかもしれませんが、それにしても、この映画の後半の「どんどん深い層に潜っていく展開」には、ちょっとついていけなかったというか、そこでそうすると、なんでそんなふうにうまくいくことになるんだ?そもそもそこは、誰がつくった「夢の世界」なんだか、わけわかんないぞ……という感じ。
みんなはこの映画「わかった」のだろうか……
もっとも、僕くらいの年になると、ヘタに「理解する」ことを追究するより、「わからないものは、わからないなりに、そのわからなさを愉しむ」ので良いのかな、と開き直ることもできます。
「わかりやすいけど、ありきたりなハリウッド映画」よりも、「わからなくても、新しい感覚に触れることができる」という意味では、この『インセプション』、けっこう貴重な映画です。
クリストファー・ノーラン監督がこの映画を撮ることができたのも、『ダークナイト』の大ヒットのおかげかもしれません。

しかしながら、この映画、僕が予告編を観て期待していた「映像の新しさ」は、あんまり感じなかったんですよね。
というか、映像的には、あの予告編以上の見せ場はなくて、クライマックスでも、ありきたりなアクション映画の爆破シーンが連発。
うーん、それでは夢の世界をモチーフにした意味があまりないのでは……

この『インセプション』を観ていると、「現実とは何か?」ということについて、考えずにはいられません。
一応、作品中の「現実」が設定されていて、そこから、夢の世界の第一層、二層と「降りていく」のですが、なんとなく「現実」というのも、「夢の第0層」なのではないかな、という気分になってきます。
そして、「人は、そこまでして、『現実世界で生き抜くことに誠実でなければならないのか?」とも思うのです。

最近印象に残った、こんな言葉があります。

 僕たち開発陣は、『ラブプラス』とコンビニさえあれば、他には何も要らない、そんな作品を目指しているんです。

ニンテンドーDSの大ヒット作品『ラブプラス』の作者の言葉だったと記憶しています。

これまでの世の中って、「(少なくとも表向きは)ゲームはあくまでも気分転換、現実で何事かを成し遂げ、日常を生き抜くことが人間にとっての幸福なのだ」といわれてきました。
本当は子どもが1日1時間しかゲームをやらなかったら困るはずの人も「ゲームは1日1時間!」って公言しなければならなりませんでしたし。

でも、どうなんだろう?
単調でめんどくさくてつまらない「現実」に、そこまでこだわる必要があるのだろうか?

現実社会では、『ラブプラス』の登場人物のようなかわいい女の子と付き合えるのは、ごく一部の「勝ち組」の特権です。
でも、ゲームの世界に生きることに決めてしまえば、ゲームを買ったほとんどの人が「勝ち組」になれる。

リアルでは、ほとんどの人が「ここはアレフガルドのくにだ」って言うくらいの役割しか果たせませんが、小説やゲームの世界に没入できれば、誰でも「勇者ロト」になることができる。

「それじゃ食えない」という問題さえ解決されれば、むしろ、「現実で人間どうしが争うより、それぞれが架空の世界に生きて、人間どうしは戦わないほうが幸せ」なんじゃないだろうか?

コブは、どうして、「現実」にこだわってしまったのかな……

「現実こそが正しい」という先入観を捨てられれば、人間はもっとうまく生きられるのかもしれませんね。
実際、そう考える人の割合が増えてきてもいるみたいですし。

この『インセプション』、僕自身は、正直あまり良く理解できていないので、DVDになったら、もうちょっとじっくり観てみたい作品です。
でも、「なんかヘンなものを観たなあ」という漠然としたインパクトは、十分感じることができました。

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