結果を出し続けるために (ツキ、プレッシャー、ミスを味方にする法則)
- 作者: 羽生善治
- 出版社/メーカー: 日本実業出版社
- 発売日: 2010/11/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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内容紹介
◇頂点を極めて、今なおトップを走り続ける羽生名人による「思考を進化・深化させるために大切な3つのこと」
18歳での竜王位奪取、25歳での史上初の七冠達成以降も、40歳になった現在、19年連続・王座をはじめ、
永世六冠保持(全七冠中)など、結果を出し続けている自在の棋士・羽生善治名人。本書では、閉塞感の強い、先行きの不透明な時代を切り拓いていくためにも、究極の「考える仕事」である将棋棋士として、
20年以上トップを走り続けて培った、3つの秘訣を明かす。羽生名人は、思考を進化・深化させるためにも、
1ツキと運にとらわれない最善手の決め方、
2プレッシャーとの付き合い方、
3ミスへの対応の仕方、
が大切だと語る。早くから「天才」と言われた羽生名人だが、円熟期を迎えたからこそ感じる、単なる勝負一辺倒の結果論ではなく、
周囲との調和も視野に入れた、「1人ひとりの持つ可能性は想像以上に大きい」というメッセージが根底にある
◇仕事、日常生活で名人の思考プロセスを活かす
本書のコンセプトは、羽生名人の思考プロセスを平易な言葉でつづられ、だれにでも再現できるところにある。「次の一手の決断プロセス」「不調の見分け方」「ミスをしたときの五つの対処法」「無謀でない、リスクの取り方」をはじめとする
勝負で大切なことから、「最高のパフォーマンスを発揮するために」「集中するために」「才能とモチベーション」「成功とは何か?」など
日常でどういう風にすごしたらよいか、などたくさんのヒントが詰まっている。
以前御紹介したこの本が、「将棋」の世界をそのまま描くことによって、羽生さんの「すごさ」を紹介したものなら、こちらの本は、羽生さん自身が講演などで語られているという、将棋の世界に詳しくない人でもわかるように「勝つための秘訣」を語られたものです。
梅田さんの本を読んだ後なので、なんとなく「わかりやすいけど、わかりやすく噛み砕かれすぎている」ような気もするのですが、将棋にあまり興味はないけれど、日本を代表する「頭脳」のひとりである羽生さんが何を日頃考えているかに興味がある人には、こちらの本のほが、ずっと読みやすく、わかりやすいのではないかと思います。
この本を読んでいると、羽生さんは、勝ち続けるために「特別なこと」をやっているわけではないんですよね。
将棋の対局のプレッシャーに関しては、実は少し不利なときのほうが気持としては楽です。なぜなら、不利なときは自力ではどうにもならず、相手のミスを待つしかない、他力本願な局面だからです。
自力ではどうしようもないために、ある意味気楽になって、いつ投了しようかと考えたりします。だからこそ、良い意味で開き直って気楽に指せますし、元々、分が悪いからこそ、思い切って大胆な一手を指すこともできます。
また、不利を自覚してこそ指せる勝負手もあります。不利な際に無難な手を指し続けても逆転の望みは薄く、ジリ貧になっていくからです。
単純でわかりやすい局面を、複雑で先の読めない、混沌とした状況に持っていくほうが、逆転の可能性が高くなります。もちろん相手に対応されてしまえば、すぐに終わってしまうかもしれません。しかし、思い切った手に逆転の可能性があるのなら、その可能性にかけられるという意味で、不利なほうが”有利”となるのです。
大変なのはむしろ、少し自分が優勢なとき、リードがあるときです。「このままうまくいけば、勝ち切れる」というときが精神的にきつく、プレッシャーがかかります。なぜなら、このままのリードを守り切れば勝てる、結果が出せるというときに、ミスはできないからです。
この羽生さんの言葉、今回のサッカー・アジアカップを観ていると、まさにその通りなのだな、と感じました。
「少し優勢な状態から、リードを守る」というのは、本当に難しい。
そして、だからこそ、「王者として、勝ち続ける」ことも難しい。
「特別なこと」を天才的なひらめきだけでやっているのではなく、あたりまえのことを、徹底的にやり続ける。
結局のところ、それしかないんですよね。
羽生さんは、「人間はミスをするものだ」という前提に立っています。
自分もミスをする、でも、相手がミスをすることもある。
僕は劣勢なとき、「一発逆転の妙手」を探してしまうけれど、それは、かえって自滅への道のことが多い。
勝負事というのは、「勝った」あるいは「この形勢なら、勝たなければならない」という心境になってしまったときが、危ないのです。
劣勢であれば「チャレンジャー精神」で思い切ってやれていたことが、トップに立ったとたんにできなくなるのは、珍しいことではありません。
そして、羽生さんは「天才」なのだと僕も思うけれども、どんな才能も磨かれなければ光らないし、どんなに光っている才能でも、研鑚することをやめれば、すぐにその光は失われてしまう。
私は小学二年生のときに将棋道場に入ったのですが、実は最初の二〜三ヵ月間は一度も勝てませんでした。
道場に入ると、普通は8級くらいからスタートします。しかし、そのときの道場の席主が、私があまりに弱いので、毎回昇級して励みになるようにと、15級という通常にはない級を作ってくれて、そこからスタートしたのです。弱すぎて相手もいないので、その席主がずっと駒落ちで相手をしてくれていました。毎週土曜日に、その道場に通っていたのですが、日曜日にはNHKの将棋対局の放送があります。私は、席主にずっと先週の将棋放送の話をしていました。誰が対局して、どういう展開になって、どちらが勝ってという話を、延々としていたのです。
席主は、その放送をすでに見ていたにもかかわらず、私が将棋に興味を持つように、毎回ちゃんと話を聞いて、受け止めてくれました。それもあって、最初はまったく勝てなくても、道場で将棋を指すことが本当に楽しくなりました。
昇級、昇段のたびに名刺大のカードをいただき、それを大きな励みにして将棋を続け、少しずつ上達していきました。そしてだんだん強くなっていって、勝つことが増えていき、それが自信につなかっていったのだと思います。結果を出し、自分の道を進むためには、「これをやっていこう」と決めたことに対して、自分のペースで少しずつハードルを上げながら課題をクリアしていくこと。自分の予想通りにならないことを楽しむこと。少しずつ新しいことにチャレンジして、日々新しい発見をしていくこと。
そして何より、続けることです。
これはもう、読んでみれば「当然の話」です。
生まれたときから、将棋の駒の動かし方がわかる人なんていないし、駒の動とかし方を覚えたばかりの子供が、そんなに強いわけがない。
将棋の世界はそんなに甘いものではないはずです。
でも、羽生さんは、そこから着実に強くなってくることができた。
そこには、本人の才能ばかりではなくて、羽生さんを応援したり、対局したりしてきた人たちの影響も、当然あるのでしょう。
すごくわかりやすく書かれているのですが、ここにある言葉は、社会で「ときには戦っていかなければならない」僕たちにとって、とても役立つものばかりです。
特別なことをやってきたから強くなってきたわけではなくて、あたりまえのことを、あたりまえにやり続けてきたからこそ、「名人」として君臨できる。
でもね、「やるべきことを、毎日ちゃんとやる」っていうのは、簡単そうで、本当に難しいことですよね。
ダイエットのための機械に毎日10分乗ることすら、いつの間にか忘れてしまっているものなあ。
どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?―現代将棋と進化の物語
- 作者: 梅田望夫
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2010/11/25
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