参考リンク:11歳で父の婚約者を殺した少年 与えられるべき「罰」は何か - ガジェット通信
罪を犯したら裁かれる。罪を犯したら償う。それは当たり前のことだが、どの罪に対してどのような「断罪」「償い」が妥当なのか、その判断は言うまでもなくとても難しい。ましてや罪を犯した者がたった11歳だったとしたら――。ここではアメリカで起こった殺人事件を取り上げる。「彼」は、罪を償うには未成熟な存在だろうか? 少年の未来すべてを「牢獄」に詰めこむのは残酷か? それとも、彼の罪はそれほど重いのか。皆さんにも考えていただきたい。
英国のガーディアン紙や米国CBS放送局のウェブサイトの報道によると、事件はアメリカ合衆国のペンシルバニア州で、2009年2月に起こった。当時11歳だったジョーダン・ブラウンは、ベッドルームで眠っていた父親の婚約者、ケンジー・ハウク(Kenzie Houk)の後頭部をショットガンで撃ち抜いて殺害し、その後いつもと同じようにスクールバスに乗って小学校に登校したという。この銃は、子ども用にデザインされた狩猟用のものだった。当時ケンジーは男の子を妊娠しており、出産予定日まで2週間だったため、ジョーダンは「2人」を殺害した罪で起訴されている。
ペンシルバニア州・ローレンス郡の判事が「少年は良心の呵責を覚えておらず、自らの行動の責任を取っていない」としてこの事件を少年裁判所に移すことを拒否したため、このままいけば、現在13歳になったジョーダンは未成年としてではなく成人として裁かれることになる。ガーディアン紙によると、そこで有罪となった場合彼には「仮釈放の可能性がない終身刑」が科されるという。
この11歳の少年は、どう裁かれるべきなのか?
僕はこの記事を読んで、ずっと悩んでいます。
僕の基本的な立ち位置は、「人は、年齢や立場にかかわらず、『自分がやったこと』に対して、責任をとるべき」というものです。
11歳の少年とはいえ、1人(この事件の場合、お腹の子供も含めると2人、ですね)の命を奪うだけの力を持っていれば、それに準じた「責任能力」を問われるのは当然のことではないか、と。
ただ、この記事、少年の「動機」には一切触れられていません。
もしこの少年の動機が「人を殺してみたかった」というような「快楽」のためのものだったとしたら、僕はもう、11歳でも死刑に値すると思います。
でも、この少年が、「自分に新しいお母さん(と母親の違う弟か妹)ができること」に対して、怒りや苛立ちを感じて、こんな凶行に及んだとすれば、「終身刑」にするのはしのびないようにも感じるのです。
自分が11歳くらいのときって、自分の親や世界に対して、ものすごく「こうあるべき」っていう理想みたいなものが強かったし、ああいう時期に、離婚なり死別なりで、自分と二人きりだったはずの父親が「新しいお母さん」を連れてきたら、ものすごく傷つくのではないかと思うのです。
傷ついたから、ショットガンで撃っていい、なんてことはありません。それは間違いない。
でも、そこにショットガンがあったら、撃ってしまいたいくらいの少年の苛立ちというのは、想像できなくもないのです。
もちろん、多くの少年少女たちは、そういう状況に陥っても、いろんなつらさを、心の奥に押し込めて、成長していきます。まだ、自分ひとりで生きていく、というわけにはいかないしね。
そして、自分がその頃の親くらいの年齢になって、気づくのです。
ああ、あのとき、親にも親の人生があったし、親というのは、子供が望んでいるほど強くもないし、淋しさにも耐えられなかったのだろうなあ、って。
もちろん、11歳でも、そういうことを、なんとなく理解できる子供も少なくないのだろうけど。
もし、この11歳の少年が、大人になって、そんな自分の父親と、自分が殺してしまった婚約者と生まれることができなかった子供のことを「理解」することができたら、自分がやってしまったことへの「後悔」は、とうてい言葉にできるようなものではないでしょう。
「動機」なんていうものは、結局のところ、本人の口から語られたものしか周囲にはわからないし、それが「真実」かどうかなんて証明しようがないのですけどね。
「人を殺してみたかったから」と言ったら「終身刑」になると思えば、「父親の再婚で裏切られたと思った」って口には出すかもしれなしい。
そもそも、ちゃんと説明できるような「動機」があったのかどうか、本人にだってわからないかもしれない。
米国では2005年にミズーリ州で起きた事件について、「18歳以下への死刑は憲法違反」との最高裁判決が出ており、この刑はジョーダンに科されうるものとしてもっとも重いと考えてよい。ジョーダンにこの刑が科された場合、彼はアメリカの歴史上でもっとも若くして「永遠の投獄」をくだされることになる。
一方、ジョーダンの父親クリス・ブラウンは、息子の無罪を主張。クリスは去年、「12歳の少年に、『残りの人生』の意味を説明してみてくれよ。理解できるはずがない」と米メディアに語っている。しかし、被害者の母親デボラ・ハウク(Deborah Houk)は、少年にもっとも厳しい刑を望んでいる。彼女はメディアに対し「『ああ、彼はまだ11歳なのよ』とか、『洋服のサイズが合ってないわ』とか、そういうのには耐えられない。彼は、自分がなにをしていたかわかっていたわ。あの子が私の娘を殺したのよ」と発言した。
僕はやはり、動機がどうであれ、「少年はやったことに対して、相応の量刑を受けるべき」だと思うし、「終身刑」やむなし、だと考えています。
遊んでいた銃が暴発したわけではなく、狙って引き金を引いたのだし、彼は、それがどういう結果を生じるのか、わかっていたはずだから。
それが「正義」だと言い切る自信は無いのだけれども。