琥珀色の戯言

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さよならドビュッシー ☆☆☆


さよならドビュッシー (宝島社文庫)

さよならドビュッシー (宝島社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
ピアニストからも絶賛!ドビュッシーの調べにのせて贈る、音楽ミステリー。ピアニストを目指す遙、16歳。祖父と従姉妹とともに火事に遭い、ひとりだけ生き残ったものの、全身大火傷の大怪我を負う。それでもピアニストになることを固く誓い、コンクール優勝を目指して猛レッスンに励む。ところが周囲で不吉な出来事が次々と起こり、やがて殺人事件まで発生する―。第8回『このミス』大賞受賞作品。

第8回『このミス』大賞受賞作品。
400ページ以上なのですが、宝島社文庫としては珍しく分冊されなかったのは、分けるのにちょうどよいところがなかったからなのでしょうか。

僕はこの作品、最初の設定部分を読んだ時点で、「ああ、『驚愕のどんでん返し』って、アレだな、なんてありきたりな……」と思ったのですよ。
そんなにミステリに詳しいとはいえない僕でも、すぐにわかる程度の「仕掛け」で、だいじょうぶなのかこれ、でも、実はベタな展開と予想させておいて裏切るのか?とか考えながら読んだのですが、それが逆に、「この(たぶん)ありきたりなどんでん返しに多くの読者が勘付いているなか、どうやって、この作者・作品は読者を最後まで引っ張っていくのだろう?」という興味につながったのも事実です。


この作品、一応「ミステリ」なのですが、「謎解き」というよりは、「ハンディキャップに立ち向かう人間の姿」を描く「音楽小説」「青春小説」として読むべきなのだと思います。
クライマックスの演奏シーンは、ベタベタだなあ、と思いつつも、けっこう読んでいて力が入ってしまいました。


音楽の世界は、こんなに甘いものではないだろうけれど、「生命力」みたいなものを感じられる佳作ではあると思います。

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