琥珀色の戯言

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ザ・ライト エクソシストの真実 ☆☆☆


ザ・ライト エクソシストの真実 Blu-ray & DVDセット(初回限定生産)

ザ・ライト エクソシストの真実 Blu-ray & DVDセット(初回限定生産)

内容紹介
アンソニー・ホプキンス主演! 今も実在するエクソシストの真実とは─?
ひとりの青年がエクソシストになるまでを追う衝撃作!


エクソシストとは、バチカン公認の正式な職業である。
バチカンにはエクソシスト養成講座が存在し、そこで学んだ者たちが、悪魔祓いの儀式を遂行する。
中世ではなく、まさに今、21世紀の話だ。
実際にイタリアでは、悪魔祓いを必要とする人々が急増し、エクソシストが不足したために、広く募集した時期もあったという。
そして2010 年11 月、市民からの高まる要求応え、カトリック司教たちが召集された。
その要求とは、“悪魔祓い”―その時のある司教の「戦いに備えよ」という呼びかけが、ニューヨークタイムズの紙面を飾り、アメリカの人々を驚かせた。


我々が日本で何も知らずに時を過ごしている間に、海を越えた地の少なからぬ人々が、かつてない戦いの季節に突入しようとしているのだ。
そして、全世界にその実態を知らしめるかのような衝撃作が誕生した。
主人公は、信仰を見失ったアメリカの神学生マイケル。
卒業を間近に控えたマイケルは、司祭になる道を捨てようとしていたが、恩師に引き止められてローマに渡り、バチカンエクソシスト養成講座を受け始める。
やがてマイケルは、異端だが“一流のエクソシスト”だと讃えられるルーカス神父の悪魔祓いを手伝うことになる。
16歳の少女の儀式に立ち会ったマイケルは、悪魔の存在を疑う。
だが、マイケルを待ち受けていたのは、疑惑を完璧に打ち砕くような、数々の恐るべき出来事だった─。

このDVDのパッケージをTSUTAYAで見たとき、「ああ、エクソシストが出てくるホラー映画なんだな、アンソニー・ホプキンス主演だし」と思いました。
主人公マイケルは、「神を信じ切れない(というか、神の存在に対して懐疑的ですらある)神学生」なのですが、ある事件がきっかけで、ヴァチカンの「エクソシスト養成講座」に派遣されることになります。
そこで、サン=ピエトロ寺院が出てきたので、「えっ、こんなホラー映画で、カトリックの総本山の映像を使ってもいいの?」と思ったのですが、この映画、実は、「エクソシストを題材にしたホラー」ではなかったのです。
「現在も存在しているエクソシストたちを採り上げることにより、「悪魔憑き」という宗教的な解釈と、「精神病の一症状」という科学的な解釈のあいだで揺れる(でも、現在の医学では治癒しない)病める人々の存在を描くのと同時に、「科学万能主義」のなかでの宗教の立ち位置の難しさが描かれています。


僕がこの映画でいちばん驚いたのは、エクソシスト養成講座の光景でした。
暗い部屋で儀式を行うわけではなく、普通の大学の大講義室のような場所で、パワーポイントで作ったようなスライドを使って、「悪魔にも階級があります。上から○○、次に△△、そして××……」と、その肖像画を提示しながら、講師役の神父さんが説明していくのです。
それが、(採り上げられているのが「悪魔」であることを除けば)あまりに普通の大学の講義だったので、かえって不思議な感じでした。


当たり前のことなのかもしれないけれど、「宗教」も、かなり近代化されているんですね。
それでも、どうしても「近代化」できない面もある。


エクソシストが行う「儀式」は、ホラー映画の映像に比べると、かなり地味です。
「職場見学」に来て、「これって精神病じゃないの?」とぶつくさ言っているマイケルに疲れ切った表情を見せながら、アンソニー・ホプキンス演じるエクソシスト、ルーカス神父はこんなことを言うのです。

「回る首 緑のゲロが見たいか?」

「泥棒は家を荒らす時、明かりをつけない 
そこにいることを知られないように
悪魔も同じ いないフリをする」


「存在の証拠がないことが 悪魔がいる証拠ですか」


「そうだ」

正直、「神」を持たない日本人である僕にとっては、マイケルが言っていることのほうが「正しい」ような気がしてならないんですよ。
キリスト教の「悪魔」は、キリスト教徒にしかとりつかないっていうのは変だし。
でも、日本にも「祟り」とか「狐憑き」はありますから、「そういう状態になる人」というのは、信じる神の名前はさておき、世界共通ではあるのかもしれません。


それにしても、いま、この時代に、ハリウッド以外の場所にも「職業的エクソシスト」が存在していて、彼らを必要としている人が少なからずいるということに僕は驚かされました。
「悪魔についての講義」がパワーポイントで行われている一方で、「悪魔払いの儀式」は、ずっと前から同じような形で受け継がれているのですね……


「神の存在を意識したことが無い人間」である僕には、実感するのが難しい映画ではありました。
「非科学的だけれども、それが有効な人が存在する治療法」に対して、どういう態度をとるべきか?
それは、医学の世界にとっても、他人事ではないのですけど。

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