琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

フリーメイソン ‐‐「秘密」を抱えた謎の結社 ☆☆☆☆


内容(「BOOK」データベースより)
ダン・ブラウンの最新刊、ロスト・シンボルを読み解くための必読書!フリーメイソンは、なぜ「世界征服をたくらむ陰謀結社」と言われているのか?フリーメイソンが抱える「秘密」の正体とは?知才・荒俣宏がその真実に迫る。


旅先の空港で見かけて購入。
平積みにされていたので、新刊だと思い込んでいたのですが、2010年5月に初版発行となっていました。
新書フリークの僕が、この手の本を見逃していたとは……


どうもこの新書、ダン・ブラウンの『ロスト・シンボル』の発売に合わせて出たもののようで、いま読むと、「そこまで『ロスト・シンボル』にこだわらなくても……」と感じてしまいます。
荒俣さんの著者だけあって、広範な知識が網羅されており、「フリーメーソンって、何?」「世界を操っている秘密結社なの?」という人には、入門書として薦められますし、正直、これ一冊読んでおけば、マニア以外はお腹いっぱいになるはずです。
新書としてはかなり多量の知識が詰め込まれているのと、世界中の話が、時系列的にも前後しながら書かれているので、ちょっと読むのは大変なんですけどね。


この本のオビには、「モーツァルトも、カリオストロ伯爵もフリーメイソンだった!?」と書かれているのですが、世界史に登場する「偉人」のなかに、フリーメイソンがこんなにいたのか!と僕も驚かされました。
ワシントンやベンジャミン・フランクリンフリーメイソンのメンバーで、アメリカ建国には、フリーメイソンの理念が大きな影響を与えているそうです。
アメリカの1ドル札に「MASON」の文字が隠されているとか、不気味な目を持つピラミッドが描かれているのは、フリーメイソンの影響なのだとか。
ちなみに、この不気味なピラミッド、マンガ『コブラ』の「最終兵器」を想起させられるのですが、寺沢武一さんも、フリーメイソンだったのでしょうか?


カリオストロ伯爵」について、荒俣さんは、こんなふうに書いておられます。

 そして、このエジプトへの憧れをフリーメイソンの儀式に取り入れたのが、他ならぬ「カリオストロ伯爵」であった。この人物は錬金術師でもあり、何より希代の詐欺師と言われた怪人で、いろいろな王侯を騙し、宝石の偽造事件などを起こした人物である。彼は1740年代頃に、イギリスを通じてメイソンの資格を得、グランド・ロッジを作り、そこにエジプトに関する秘儀を導入した。名付けてミスライムの秘儀と呼ばれ、このミスライムの秘儀は後に別の人物によって「メンフィスの秘儀」という名前でも展開されるようになった。

 この儀式がまた、「裸の上に白衣を着せられた女たちの上にあるドームの天井が開き、そこから裸の男(これがカリオストロ伯爵!)が綱に縛られてゆっくりと下りてくる」というような、いかがわしさ満載のものだったと伝承されているらしいのです。
 僕が知っている「カリオストロ伯爵」は、『ルパン三世』の映画に出てくる人だけだったのですが、「ゴート札」とかつくってしまうあのキャラクターのモデルにふさわしい人物だったのですね。
 いや、物語をつくる人って、本当にいろんな歴史的エピソードを研究しているものだなあ、と。


 ただし、この本を読んでいくと、フリーメイソンというのは、「世界征服を目指す、怪しげな組織」では無いようです。
フリーメイソン内に、そういう「過激な分派」ができたことはあったようですが)
 
荒俣さんは、「エピローグ」で、このように書かれています。

 フリーメイソンが探究した知識には、自然科学といっていい分野にかかわるものも多い。これは当然で、合理的な論理によって心理を掴むということを信条にしていたからである。しかし、それと同時に、古代の叡智を取り上げようというファウスト的な情熱、すなわち、古い叡智をできるだけすくい上げようとする知の在り方へも、関心が向いていた。そしてこの二つは、当時あったキリスト教の教えに満足しない人々を呼び集めた。旧来とは方向は違うが、同じように真理を求める大きな動きとなったのだった。フリーメイソンは、その探究の保護者と言うべき役割を果たした。

フリーメイソン」というのは、すべてがキリスト教中心の時代に、自然科学によって、合理的に人間を知ろうとした、先進的な人たちの集団でした(ただし、あくまでも教会の規律に反しない枠内で)。
フリーメーソン」は宗教の時代のなかで、科学や合理主義が芽を出すための温室のような存在だったのです。
ところが、「秘儀」や「細かい階級制」が取り入れられ、閉鎖的な組織のなかで、それが連綿と受け継がれてきたことにより、いまの世の中では、「神秘主義の、前時代的な、怪しげな集団」というイメージを持たれるようになってしまいました。
彼らは、「変わらなかった」ために、時代に取り残され、いつのまにか「先進的な思想を持つ集団」から、「歴史を操る謎の組織」とみなされるようになったのです。

この本を読んだかぎりでは、「ああ、フリーメイソンって、要するに、上流階級の知識人たちが、世間に『俺たちはちょっと違うぜ』っていうのをにおわせるための集団」=日本でいえば「ライオンズクラブ」みたいなもなんだな、というのが僕の印象です。


本当に「いろいろなこと」が書いてある本なので、「フリーメイソンって、何?」という人は、ぜひ一度読んでみていただきたいと思います。
情報量が多すぎて、ちょっと読むのは大変ではありますが、「フリーメイソン」の歴史というのは、「宗教」と「科学」の共生と対立の歴史であり、フリーメイソンを知ると、なぜ日本で『幸福の科学』などの「新宗教」があれだけ勢力を伸ばしてきたのかも、わかってくるような気がしますよ。

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