琥珀色の戯言

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毎日かあさん(映画版) ☆☆☆


毎日かあさん(通常版) [DVD]

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内容(「キネマ旬報社」データベースより)
西原理恵子の原作を小泉今日子永瀬正敏共演で映画化。漫画家のサイバラは、子供たちに振り回されながらもたくましく毎日を送っていた。一方で元戦場カメラマンの夫は、アルコール依存症から入退院を繰り返す。やがてふたりは離婚を決意し…。

いくらなんでも、西原理恵子小泉今日子、はないだろ……
そう思いながら観始めたのですが、途中から、違和感は全くなくなってしまいました。
見た目はともかく、このふたりの「生きざま」って、案外、近いのかもしれません。


もともと新聞連載されていた短編を2時間の映画にしたため、小さなエピソードの積み重ね、という感じで、ちょっとゴチャゴチャしてしまっている印象はあります。
軸になるのは、アルコール依存症から「還ってきた」夫、鴨志田穣さんのことなのですが、アルコールに溺れた「鴨ちゃん」が、暴れて家の中を荒らしまくるシーンは、すごくリアルで観ている胸が苦しくなりました。
「妻ばかりが売れて有名になっているなかで、家のなかに自分の居場所すら失ってしまった男の気持ち」というのは、想像できなくもないだけに、なんだかいたたまれないよなあ、と。
とはいえ、「鴨ちゃんと西原さんの家族」の生活を支えていたのは、「西原さんが仕事でつくったお金と人脈」であり、「生活苦」がなかったからこそ、ああやって最後まで「つきあっていく」こともできたのです。


このふたりの関係については、僕のような「西原理恵子フォロワー」にはこの映画くらいの情報量でも、これまでの西原さんの著書などで補完できます。
ただ、「予備知識」がなく、この映画だけを観た人にとっては、あまりに駆け足に説明されすぎていて、西原さんが「アルコール依存症の夫を献身的に支える聖母」みたいに感じられるのではないかなあ。


西原さんと鴨志田さんの関係というのは、「アルコール依存症の男とその妻」だけではなく、表現の世界で戦う「同志」でもあり、西原さんにとって「数少ないやすらげる場所」でもあったんですよね。少なくとも、ふたりが幸せだった期間は。
時間的な制約として難しかったのだとは思いますが、そういう「深み」はあまり感じられませんでした。
ただし、それは「お涙頂戴の物語を避けて、楽しい映画にしたかった」という可能性もあり、一概に「西原ワールドをわかっていない」とも言えないのですけど。


離婚してしまった小泉さんと永瀬さんの共演ですから、ふたりは内心どんな気持ちで演じていたのかなあ、なんて、いろいろ想像してしまうのですけどね。


それにしても、リアルタイムで観ていると「慣れてしまう」のだけれども、西原理恵子さんほど「修羅場に踏み込み続け、それを描き続けている表現者」って、いまの時代には本当に希有な存在だよなあ。

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