琥珀色の戯言

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ある「乗り物酔いっ子」の主張

まずは↓をお読みください。
----- 全国いろんな所にいらっしゃってるようですが、今迄に食べた中で、これは美味しかった!と思うもの、心に残っている食べ物は何処の何ですか?(成松哲さんへの「ザ・インタビューズ」での質問と回答)


僕も「乗り物酔いっ子」でした。
幼稚園の頃から、とにかくあらゆる乗り物に酔っていた。
「乗り物酔いくらい、たいしたことないだろ」と、酔わない人は言うけれど、これは僕の子ども時代の大きな悩みだったのです。
幼稚園や学校のバス旅行で吐き(あるいは吐きそうになり)、みんなに敬遠されたり、家族で車に乗って食事に行くときの車に酔って、ごはんが食べられず、結局、車に酔っただけで家とレストランを往復する羽目になったり。
かなり強引に海釣りに連れ出されたときには、船酔いで釣りどころじゃありませんでした。
あのときは、翌日までなんか揺れてた気がしたなあ。


「乗り物酔い」っていうのは、経験が無い人には、なかなかつらさがわかってもらえない。
(病気というのは、一般的にそういうものなのでしょうが)
原因は「甘え」だとか言う人までいました。
僕の親はそんなことは言わなかったけれど、そんなふうに乗り物酔いばかりしている子どもの面倒をみるのは、けっこう大変だったはずです。


そんな僕も、最近はあまり乗り物酔いしなくなり、飛行機や電車で本を読むこともできるようになりました。
なぜ、あまり酔わなくなったのかは、よくわかりません。
大人になって、自分で車を運転するようになり、乗り物の挙動みたいなものが理解できるようになったからなのか、体質が少し変わったのか、それとも、タバコの煙を移動中に吸う機会が少なくなったからなのか。
僕にとっては、バスや電車のなかでのタバコの煙は、酔いをおおいに助長していたのです。


これを読んでいて、僕は子ども時代のことを思い出したのと同時に、成松さんと奥様が、「乗り物酔いというハンディキャップを無理に克服しようとせず、自分たちのやりかたで、人生を楽しもうとしていること」に感銘を受けました。

いやたぶん、「旅行に行けなくて寂しいね」なんて言われたりもすると思うんですよ。世の中の価値観としては、そう言う人のほうが多数派でしょうから。

 僕の知り合いに、食べもののアレルギーがたくさんある女性がいます。
 彼女はとても優しくてしっかりものの素晴らしい人なのですが、とにかく食べもののアレルギーが多い。みんなで食事をする際にも、ひとりだけ「特別メニュー」が準備されるくらいです。

 彼女の夫は大変だろうなあ、と思うのだけれども、彼女によると、「夫は、私の前でも、自分の好きなものを遠慮せずに美味しそうに食べてます」とのことでした。
 彼女も、そのほうが気楽で良い、のだとか。


 人にはいろんなハンディキャップがあるものだけれども、本当に大事なパートナーであれば、それを乗り越えることもできるのです。
 そして、そのための方法は、ひとつじゃない。

「愛さえあれば乗り越えられる」なんて言うつもりはないけれど、こういうふうに、それぞれのやり方で工夫して人生を楽しんでいる人たちは素晴らしいなあ、と僕は思うのです。

 「旅行に行けないなんて、かわいそう」
 「そんなに食べられないものばっかりで、かわいそう」

 そんなふうにしか考えられない人のほうが、本当は「かわいそう」なんじゃないかな。



僕の『ザ・インタビューズ』はこちらです。
http://theinterviews.jp/fujipon

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