琥珀色の戯言

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【読書感想】自分のアタマで考えよう ☆☆☆☆

自分のアタマで考えよう

自分のアタマで考えよう


Kindle版もあります。

自分のアタマで考えよう

自分のアタマで考えよう

内容紹介
月間100万PVを誇る人気ブログ「Chikirinの日記」の筆者による初の完全書き下ろし。
ユニークな記事を生み出す独自の思考法を公開します!


プロ野球の将来性
◎結論が出ない会議の秘密
少子化問題のゆくすえ
◎婚活女子の判断基準
消費者庁が生まれた真相
◎就活で失敗しない方法
◎自殺の最大の原因
◎電気代の減らし方
◎NHK、BBC、CNNの違い


など、社会問題や日常の疑問を考えながら、「ちきりん流・思考の11のルール」をわかりやすく解説します。


第一線で活躍する経営者・ビジネスマン・コンサルタントも絶賛の内容です。


何度これと同じことを語ってきたか、
ということが無数に散りばめられている。
 『イシューからはじめよ』著者 安宅和人


ビジネスで成功したいなら、
この本で頭を鍛えることを勧めたい。
 ライフネット生命保険社長 出口治明

人気ブログ「Chikirinの日記」を書かれているid:Chikirinさんの2冊目の著書。
イマイチブログの書き手である僕としては、ちきりんさんの「思考のワザ」を盗んで、人気ブログにジャンプアップ!という、けっこうヨコシマな気持ちで読み始めました。


でも、この本を読んでいくうちに、すごく感心してしまったんですよ。
僕はいままで、「なんでChikirinの日記って、こんなに人気があるんだろうなあ、そんなに専門的な知識が含まれているわけでもないし、ツッコミやすいから?」などと思っていたのですが、それこそ僕が「考えていない」証拠だったのだな、と。


この本には、「ちきりん流・思考の11のルール」として、実際のデータと、それについて「考えていくプロセス」が紹介されています。
読んでいて、とくに面白かったのは、「婚活女子」を題材にして「判断基準を決めることの大切さ」を説明している第5章(「2×2マトリクス(ツーバイツー・マトリクス)は、優柔不断な僕には、すごく役立ちそう)と、就職活動を例にあげて、「情報ではなく、『フィルターが大事』であることが書かれている第7章でした。
もし、いま就職活動をやっている人がいたら、この第7章だけでも、ぜひ読んでみていただきたい。

 インターネット上で情報開示が進んでいる現代では、企業情報を集めるのはむずかしくありません。就職活動の成否は集めた情報量ではなく、「自分独自の、価値あるフィルターを見つけられたかどうか?」にかかっているのです。
 ところが学生が使っているフィルターは、「業種」や「企業規模」など一般的で粗すぎるフィルターばかりです。それではいくら企業情報を集めても自分に合った仕事を選り分けることはできません。
 たとえば学生の中には、企業分析と称して売上高や利益率など企業の財務指標を熱心に調べている人がいます。けれどそれらの指標で自分の適性に合った会社、働きたい会社をフィルタリングできるでしょうか?
 よくよく考えてみてください。志望企業を決めるのに、「就職先の現在の売上高や利益率」に意味がありますか? なかには、「オレには利益率が30%以上の会社が向いている!」という人もいるのかもしれませんが、一般的には会社の利益率とその仕事への自分の向き不向きはほとんど関係がありません。そんな無関係な情報を集めても仕事選びの役には立たないのです。
 さらにクラクラするほど無意味な仕事の選択理由が「社会の役に立つ仕事がしたい!」というものです。いったい「社会の役に立たない仕事」とはどんな仕事なのでしょう? オレオレ詐欺? それとも銀行強盗?? 「社会の役に立つかどうか」などというフィルターを使っても、志望業種さえ絞れません。
「成長できる仕事」というフィルターもナンセンスです。「社会人1年目に一生懸命取り組んで、まったく成長できない仕事」なんて存在しません。もし特定の仕事でしか成長できない新社会人がいるとしたら、問題は本人の学ぶ能力の方でしょう。


 このように、学生が使っている仕事選びのフィルターは、職業選びにはほとんど役立たないものばかりです。ではいったいどんなフィルターを使えば、意味のある職業選択が可能になるのでしょう?

 この問いへの、ちきりんさんの「解答例」は、実際に本を読んでみていただきたいのですが、本当にその通りだなあ、と思います。
 これから「職業選び」の必要がある人は、とくに、一度読んでおいて損はありません。

 
 でもまあ、この本を読んでいると、「自分で職業を選択できる立場の人ばかりではない」ということも、つい考えてしまうんですよね。
 多くの就職活動をしている人にとって、企業は「自分で選ぶもの」であってほしいけれども、現実的には「自分が選ばれる側」になってしまうわけです。
 それにさ、「社会の役に立つ仕事がしたい!』という人の多くは、「社会に役に立っているように周囲から見えて、カッコイイとみんなに思われるような仕事」がしたいというのも、ちきりんさんはわかっていて茶化しているようにもみえるのです。


 ただ、「万人に見られることを意識して、八方美人の無難なことしか書けなくなってしまっている人気ブログ」が少なくないことを考えると、こうして、「一定以上の知識水準を持っていて、ステップアップしたい人たち」にターゲットを絞っているというのは、おそらく、「正しい選択」なのでしょう。
 そうやって、「読み手を限定すること」もひとつの「判断」なわけです。
(逆に言えば、ネット上では、そういう「特定の人を狙ったエントリを、照準外の人たちが批判してくる」というケースが多いんですよね。人気ブログにとって、それはとても面倒なことのはず)


ちきりんさんのブログは、図やグラフがとても効果的に使われています。
「やっぱり、グラフにすると『見やすい』ねえ」などと、なんとなく僕は考えていただけなのですが、

 私はブログでもよくグラフ、図や絵などの視覚化情報を使うのですが、その際、最初は言葉で考えたことを「この考えを図にすると、どんな感じになるのかな?」と思いながら書いてみます。すると、図の配置や順番をどうするのか、形を丸にするのか四角にするのか、どこに色をつけるべきかなど、迷うことがたくさん出てきます。言語で考えていたときには抜け落ちていた思考部分について(=抜け落ちていたことにさえ気がつかなかった部分について)、絵にするためには明確にする必要が出てくるからです。

やみくもに「グラフにする」だけでは意味がない。
「とりあえずエクセルに打ち込んで、適当なグラフを描いて、『ああ良い仕事をしたなあ!』って自己満足」に浸ってしまう僕にとっては、とても勉強になりました。
グラフを書くときにも「なぜこれをグラフ化するのか?」「この形式のグラフを選んだのは何故なのか?」くらいは、最低限、意識するようにしていこうと思います。


僕はこの本を読んでいて、堀井憲一郎さんが「結果を予想せずに(仮説を立てずに)調査するほど無謀なことはない」と書かれていたのを思い出しました。
「情報を集めて、その情報について考える」のでは、あまりに効率が悪すぎて、成果を挙げるのには、よほどの運が必要です。
結果を出すためには、「想定した仮説を証明するのに必要な情報を集める」ようにするべきなのです。

多くの場合において、僕は「考えていない」し、「考えようとしたときには、もう、考えるべきタイミングは逸している」。


この本のなかで、いちばん印象に残ったのは、この部分でした。

 この国は「健康で文化的な最低限の生活を営むための生活費」が高すぎると思いませんか?
 ちきりんは、スーパーマーケットで売られているイチゴのパッケージを見るたび溜息が出ます。イチゴがみんな同じ方向に並んでいるからです。誰がイチゴをひとつずつ並べているのか知りませんが、その手間代はイチゴ代金に含まれています。そしてその手間代を払える人しかイチゴが食べられないのです!(こんなふうに並んだイチゴしか見つけられない国は、他にありません。)

ああ、この人は、スーパーマーケットで買い物をしているときも、ずっと「考えている」のだなあ。
「考える」って、なんだか難しいことのようだけれど、こういう「慣れて、あたりまえになってしまっていること」のなかに、小さな違和感とか疑問を持つというのが「考える習慣」のきっかけになるのでしょうね。

「他人の威勢のいいブログを読んだだけで、自分も考えたようなつもりになっている人」に、ぜひおすすめしたい一冊です。

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