琥珀色の戯言

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謎解きはディナーのあとで2 ☆☆☆


謎解きはディナーのあとで 2

謎解きはディナーのあとで 2

内容(「BOOK」データベースより)
令嬢刑事麗子と風祭警部の前に立ちはだかる事件の数々。執事の影山は、どんな推理で真相に迫るのか。そして、「影山は麗子に毒舌をいつ吐くの?」「二人の仲は、ひょっとして進展するのでは?」「風祭警部は、活躍できるのか?」など、読みどころ満載な上に、ラストにはとんでもない展開が待っていた!?―。

 『本屋大賞』を受賞し、大ベストセラーとなった『謎解きはディナーのあとで』の続刊。
 元々短編ミステリを集めたものだったので、無理矢理の続編、という感じもなく、相変わらずの読みやすさです。
 ちょうどテレビドラマが放映されていることもあり、書店でも大プッシュ中。
 こういう「ドラマ化にあわせて続編を発売」というのも、本が売れない時代の、新しいやり方になっていくのかもしれませんね。

 内容的には、麗子と執事のやりとりも相変わらずですし、

「失礼ながら、お嬢様」影山は麗子の目をまっすぐに見据えて、「お嬢様は冗談をおっしゃっているのでございますか」と真面目な質問。そして影山はキョトンとする麗子に対して、かしこまった口調で言い放った。
「もしそうだとすれば『ウケる〜』でございます」

 というような決め台詞も出てきます。
 ただ、多少マンネリ気味なのも事実で、執事の決め台詞のインパクトも、前作ほどではないような。
 そして、僕がこの『2』を読んでいて違和感があったのは、『1』ではかろうじてキープされていた「読者参加型ミステリ」というコンセプトが、失われてしまっていたところでした。
『1』 は、仕掛けは大きくないのだけれども、執事の推理を聞いた後読み返してみると、たしかに、「文中に答えが書いてある」のです。
 まあ、僕にはまったく答えを当てることができなかったとしても。


 今回の『2』では、「それまでの文章からはどう足掻いても読み取れないようなトリック」が出てきます。
 たとえば、「この家は密室だと思っていたら、屋根がクレーンでつり上げられるようになっていた!」というような。
(ちなみにこのクレーンの話は、『謎解きはディナーのあとで2』のネタバレじゃないですからね。あくまでも、「こういう感じの読者には読み取りようのないトリックが使われている」という一例です)


『2』でもあり、仕掛けを大きくしなければ、というのはわかるんです。
映画でも、そうしないと、「スケールダウンした」とか「マンネリ」とか言われてしまいますから。
しかしながら、読者に「なんで読んでいてそれに気づかなかったんだ……」と思わせることができないような「ズルいトリック」の使用によって、この作品のミステリとしての最大の魅力は失われてしまいました。


僕にとっては、「読者も一緒に推理できる」というのがこの作品の肝だと思うので、この変化は残念だったのです。


前作が大好きだった人は、たぶん、この『2』も楽しめるはず。
でも、前作があまり好きになれなかった人が、この『2』で見直すほどでもない。


まあ、「続編」としては、及第点の作品だと思います。
麗子と執事のやりとりがまた読めるだけで幸せ、という人も少なくないのだろうし。

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