琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち ☆☆☆☆

内容(「BOOK」データベースより)
鎌倉の片隅でひっそりと営業をしている古本屋「ビブリア古書堂」。そこの店主は古本屋のイメージに合わない若くきれいな女性だ。残念なのは、初対面の人間とは口もきけない人見知り。接客業を営む者として心配になる女性だった。だが、古書の知識は並大低ではない。人に対してと真逆に、本には人一倍の情熱を燃やす彼女のもとには、いわくつきの古書が持ち込まれることも、彼女は古書にまつわる謎と秘密を、まるで見てきたかのように解き明かしていく。これは“古書と秘密”の物語。

表紙の栞子さんの絵に負けた……

まあ、なんというか、「本好きの内向的男子」には、たまらない本ではありますね。
僕もピンポイントで弱点をつかれたような気分です。


「古書」の蘊蓄を扱った本はたくさんありますし、「古書」に限らず、「書店」を舞台にした作品も、紙の本の危機が叫ばれる昨今、かえって増えてきたような気がします。
僕は古本屋めぐりをする趣味はなく、新刊書店かamazonを利用することがほとんどですし、最近では「コレクションとしてではなく、読むために買う本」については、僕の好みの範囲では、amazonなどのネット書店で手に入るもので事足りています。
ネットの発展というのは、古本屋業界にとっては困ったものなのだろうな、と思うのですが、その一方で、ブックオフやネットを利用して、新たに古本屋をはじめる人も出てきているようです。

 理由? 仕事だよ仕事。こないだ知り合った同業の奴と、在庫の交換でもしようって待ち合わせたんだ。今日持ってきた『書物の出現』の下巻は、そいつに分けてもらったもんだ。
 ……は? 下巻だけかってお前、本気で訊いてんのか? 絶版本ってのはな、後の刊になればあるほど手に入りにくいもんなんだ。上巻だけ買って下巻を買いそびれる奴はいても、その逆はいねえだろ? 下巻の方が出回る数が少ねえから、その分だけ価値が上がるんだ。

 知ってみれば当然のことなのですが、こういう「ちょとした古書に関する豆知識」が散りばめられているのも、本好きにとっては嬉しいのです。


 正直、ミステリとしては、そんなにたいしたことはありません。
 栞子さんの「安楽椅子探偵」としての腕は、「ちょっとした相手の行動の違和感から真実を見いだす」という、『謎解きはディナーのあとで』レベル、あるいは、もうちょっと下かもしれません。
 題材になっている本の内容を知らない読者にとっては、ほとんどノ―ヒントなわけですし。
 「すべてが本で解決する」というのは、このシリーズが長く続けば『美味しんぼ』かよ!と言いたくなりそう。


 とりあえず、この卷に関しては、僕は十分堪能させていただきました。

「あなたは……本を読む人じゃない、から……」
 言いにくそうに彼女はつぶやいた。
「……どんなことをしてでも、大好きな本を手元に置きたい、気持ちを……分からないかもしれない、そう思ったんです……たかが本のこと、だから」

 鎌倉・古書店・大人しいけど本のことになると話が止まらない綺麗な女性。
 狙われてるのがわかっているのに、あっさり陥落してしまう自分が情けなくもあり。


 でも、この本がこんなに売れているということは、自分はそんなに「少数派」でもないのかもしれないなあ。
 それはそれで、嬉しいような、ちょっと寂しいような……

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