琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

人生で本当に大切なこと ☆☆☆


内容紹介
悔しさこそがバネだった。日本一のプレッシャーと闘った二人の揺るぎない信念!!


野球とサッカーで日本を代表する二人は困難をいかに乗り越えてきたのか。
プレッシャーに打ち克ち、結果を残してきた裏に共通する信念を紹介。


最初から何もかもがうまくいく人なんていない。失敗したり挫折したり、時に不安で眠れなくなったり……。
「成長のためには怒りや悔しさを抑えるな」
「人生は『3歩進んで2歩下がる』の繰り返し」
「選択に迷ったら難しいほうを選べ」
「小さいことに手を抜くと運が逃げる」
「欠点には目をつぶり長所を伸ばせ」等々、
プレッシャーに打ち克ち、結果を残してきた裏には、
共通する信念があった。実は順風満帆に進んできたわけではない二人が、
人生の「試練」の意味を問う。

野球界・サッカー界を代表するふたりの「世界と闘った監督」の対談本。
最近、岡田武史さんと羽生善治さんの対談本も読んだのですが、その『勝負哲学』と比較すると、対談相手が年上の王監督ということもあり、いわゆる「人生訓」のような話が多い印象です。この新書自体も文字が大きめで、新書としてもやや文章は少なめ。
もちろん、「子供たちにも読んでほしい」という意図もあるのでしょうけど。


この新書を読んでいて意外だったのは、王監督も岡田監督も、けっこう「熱い人」だったということです。
とくに岡田監督は、外見上はすごく真面目で冷静な人のようにみえるんですよね、僕には。

岡田武史負けて悔しくなかったら嘘ですよ。
 僕はジャンケンで負けるのも嫌な性質で、遊びでサッカーのミニゲームをやっていたとき、審判役のコーチが見間違えて、相手のゴールを認めたんです。「入ってないだろう」と抗議したら、「いや、ゴールはゴールだ」というので、頭にきてゼッケンを投げ捨てて帰っちゃったことがあります。
 試合に負けた後、ロッカールームで笑っている仲間も許せませんでした。全力を尽くして負けるのはしょうがありません。でも、全力を尽くしたのなら「相手のほうが強かったから仕方ない」なんていって平気な顔をしていられるわけがない。
 いつまでも負けを引きずれとはいいませんが、少なくとも試合後すぐ、ロッカールームで笑っていられるのは全力を尽くしていない証拠ですから、我慢できませんでした。
 そんなわけで高校時代、試合に負けると仲間はみんな「帰りにお好み焼きでも食べに行こうぜ」なんて笑いながら話をしているのに、僕だけ「冗談じゃない」と捨て台詞を残して帰っていました。みんなは「おいおい、また岡田が怒って帰っちゃったよ」と呆れていましたけどね(笑)。


このあいだ、『マネーボール』という映画を観たのですが、その映画では、アスレチックスのゼネラルマネージャー、ビリー・ビーンブラッド・ピットが演じていました。
ビリー・ビーンは、「セイバーメトリックス」という理論を実際の球団運営に導入した人なのですが、映画で描かれていたビリーは、ものすごくせっかちで、感情が表に出てしまう人でした。
「なんでこんな短気な人をゼネラルマネージャーにしたんだろう? 一流大学に入れるくらい、入団前の学校の成績が良かったから?」などと僕はすごく疑問だったのです。
でも、この新書を読んで、ビリー・ビーン、そして岡田武史監督が、「リーダー」として選ばれた理由が、わかったような気がしたのです。

岡田武史「リーダーはどうあるべきか」ということについては、決断力や判断力といったことがいわれます。もちろん、それは大事なことだし、身につけなければなりません。しかし僕はリーダーにとっていちばん大事なのは、自分が成し遂げたい目標をはっきりと掲げ、まわりがなんといおうが、命を懸けてその実現へ突き進むことだと考えています。
 もちろん、その目標は他の誰よりも次元が高く、私利私欲とも関係ないものでなければなりません。そういう目標へ向かって必死に努力している姿を見て、まわりの人はついてくるんです。
 別に頭がよくて議論がうまいとか、品行方正でいい人だとかいうのは、リーダーの資質には関係ありません。
 幕末に活躍した坂本竜馬がいまでもなぜ人気があるのかというと、権力とか名誉、財産なんかには目もくれず、「この国をなんとかしなくちゃ」と必死になっていたからです。


王貞治必死な気持ちというのは、時代を超えて人に伝わるものですね。

この「岡田武史監督のリーダー論」が、僕にはいちばん印象に残りました。
そうなんですよね、ひとつの集団・組織のなかで、リーダーにみんなが求めているのは「自分たちは何をめざせばいいのか?」という「目標設定」なんだよなあ。
10人いたとして、8〜9人は、「言われた通りには動けるけれど、自分が何をやればいいのか判断することができない」ような気がします。
にもかかわらず、リーダーになった人というのは、ついつい、「人間関係の調整」とか、「部下に優しく接すること」で「良いリーダー」だと思われようとしてしまう。
でも、「ちゃんとした目標」がないところに「お互いを傷つけないことを重視した人間関係」が成立してしまうと、そこには、「馴れ合いだけの組織」しか残らないのです。
それでは、リーダーも、その組織で働いている人たちも、長い目でみれば、幸せにはなれない。


ビリー・ビーン岡田武史監督が、リーダーとして成功できたのは、性格が良かったとか、頭が切れたとかいうのが最大の理由ではなく、彼らには、確固とした目標があり、そこからブレなかったから、なんですよね。


正直、大人にとっては、「なんでこんな当たり前のことばっかり書いてあるんだ?」と思うような本かもしれません。
でも、「当たり前のことを、当たり前にやることが、成功への近道なのだ」というのを、彼らは実証している存在でもあるのです。


「なんでこんなキツイことばっかりなんだ?」と思いながら日々を過ごしている中高生に、とくに読んでみてもらいたい一冊です。

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