琥珀色の戯言

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知らないと損する 池上彰のお金の学校 ☆☆☆☆


知らないと損する 池上彰のお金の学校 (朝日新書)

知らないと損する 池上彰のお金の学校 (朝日新書)

内容(「BOOK」データベースより)
そもそも、お金とは何でしょう?金利とは?株とは?保険とは?GDPとは?あなたは説明できますか?わかりやすい解説で定評のある池上彰が、わかっているようでわかっていない、お金のしくみを徹底解説。基礎がわかれば、お金の流れがすんなりわかる。

知っているのが当然なようで、実際には知らない「お金」に関することがわかりやすくまとめてある本。
書かれている内容が、「お金の歴史」「銀行」「投資」「保険」「税金」など多岐にわたっており、それぞれについてある程度の予備知識があり、詳しく知りたいという人には物足りないと思われますが、僕のように「まずは基礎的なところをひととおり知りたい」という場合には、ちょうど良い内容です。

いやほんと、「お金」って、みんな当然のように使ってはいるけれど、「わかっているようでわかっていない」ことばかり。
これを読みながら、「ああ、僕はいままで、知らなかったせいでいろんな損をしてきたのかもしれないなあ」と考えさせられました。
その一方で、生半可なお金の知識があったために、増やそうとして失敗することもほとんど無くてよかったのかな、とも思ったのですけど。

池上さんの話の素晴らしいところは、出てくる例が日常的でわかりやすい、ということです。

 では反対に、私たちが「銀行からお金を借りるときに金利を支払う」というのはどういうことでしょうか。これはお金の「レンタル料」を支払うということです。レンタルビデオ店でビデオを借りる時には、1泊2日で300円ほど払いますよね。この300円というのは、借りたビデオを一晩自由に使うためのお金です。銀行からお金を借りるときに金利を払うということは、そのお金を一定期間自由に使うためのレンタル料を払うということなのです。ですから、期日までに「返却ポスト」に返すということさえ守れば、そのお金を何のために使おうと自由です。期日までに返さないと「延滞料」を支払わなければならないのも、レンタルビデオと同じですね。
 ところで、ビデオ作品というのは、定価で買おうとすると数千円前後のものがほとんどです。でもそれをレンタルするのに、一日あたり300円も払わなくてはならない。これは金利にあてはめて考えると、とてつもなく高い金利を取られていることになります。レンタカーも同じです。定価100万円の自動車を一日借りると1万円ということは、年間で考えれば、365万円。自動車そのものの価格の3倍以上も支払わなくてはいけない。年利300%です。そう考えると、銀行からお金を借りるレンタル料は、かなり良心的ということもできるのです。

なるほど、レンタルビデオを借りるときに払うお金も「金利」だと考えればいいのですね。
レンタルビデオが1泊2日で300円というのは、映画を観に行ったり、ビデオソフトを買うことに比べれば「安上がり」なイメージがあるのですが、そういう見方をすると、けっして安くはないのです。
1泊2日で100円でも、けっこうな「金利」になってしまいます。
もちろん、レンタルビデオの場合は、だいたいの人は一度観れば十分だと考えているのだし、レンタカーも「使うときだけ借りる」から、こういう価格設定が成り立つわけで、どんどん他の人に貸していく店側と、一時的に借りられればいい客側とで、うまくバランスがとれているのですけど。

このような「いままでわかっているつもりで、僕自身がうまく言葉にできなかったことだけではなく、ちょっと難しめのことについても、池上さんは説明をされています。
僕はこれを読んで、「FXがなぜ危険なのか?」をようやく理解できました。

 今、個人投資家の運用先として人気なのがFXですね。FXの名前は、外国為替証拠金取引(Foreign Exchange)の「F」と「X」からきています。どういう内容の金融商品なのか。日々刻々と動いている通貨の交換レートの値動きに投資するのです。
 たとえば、1ドルが100円のときにドルを買ったとします。その後、1ドルが110円になった時にそのドルを売れば、10円の利益が出ます。反対に、1ドルが90円の時に売ると、10円損をする。こうした為替の交換レートを読みながら、投資をするのがFXです。このFXは、良くも悪くも、数ある金融商品のなかでもっともギャンブル性の高いものだと私は思います。

(中略)

 さらに、このFXという金融商品のギャンブル性を高めているのは、レバレッジ(梃子:てこ)をかけることができるということです。この場合の「レバレッジをかける」というのは、日本語に言い換えれば、「証拠金で信用取引ができる」ということです。これは証拠金の何倍もの金額を運用できるという取引の仕組みです。
 具体的に説明しましょう。たとえば、100万円を証拠金として預け、2倍のレバレッジ取引をするということになると、200万円の取引ができることになります。もし、200万円の金融商品を買って、それが300万円に値上がりしたとします。すると元のお金は100万円ですから、差し引き200万円の利益を得たことになります。こう聞くと、元手の少ない個人投資家は「何でいい仕組みだ」と思うでしょう。自分の買った金融商品が値上がりすれば、確かにこんなに素晴らしい仕組みはありません。でも値下がりした時は大変です。
 今の例と同じように、100万円を証拠金として、2倍のレバレッジをかけ、200万円の金融商品を手に入れたとします。もし、その200万円が100万円に値下がりしたとしましょう。すると、元手は100万円しかなかったわけですから、この取引によって、あなたの手元に残るのは0円ということになります。
 これはとてつもないリスクですね。普通に株を買ったとして、多少値下がりしたところで、投資した金がすべて持っていかれるなどということはありません。倒産でもして株券が価値ゼロの紙くずにでもならない限りない。でも、レバレッジを効かせた取引では、丸損ということも普通に起こるということです。

(中略)

 レバレッジ2倍くらいならまだ大したことはありません。でもこれが10倍になるとどうでしょう。100万円を証拠金として、10倍のレバレッジをかけると、1000万円の取引ができます。もし、これが2000万円に値上がりすれば、すごい儲けになります。でも逆に、値下がりした場合はあっという間にすっからかんです。1000万円の取引ですから、1割下がれば、100万円の損失です。そこで証拠金を積み増せなければ、強制売買で手元には一銭も残りません。強制終了になってしまうともう儲かるチャンスを失ってしまうわけですから、実際には「証拠金を積み増してください」と言われた投資家たちは、持っている株を売ったりして、何とか工面しようとします。つまり株が売りに出る。株が下がっている時には、株で証拠金取引をしている人たちもいますから、同じような境遇の人がたくさんいることになります。みんなが売ろうとするから、株価は加速度的に下がっていく。そして次々と市場から強制的に退場させられていくことがあります。怖いですね。
 このように証拠金取引というのは、うまくいけば大儲け、でもほんの少しでもうまくいかなければ投資金が消えてなくなるという、極めてハイリスク・ハイリターンの取引だということです。

「自分の手持ちのお金よりも『大きく勝負できる』のならいいじゃないか、値下がりしても元手以上に損をするわけじゃないからいいじゃないか」
 世間でFXを紹介する記事や本は、宣伝目的のものが大多数を占めます。
 まあ、そりゃそうですよね。FXをやらないために本を買って勉強する人は、ほとんどいないだろうから。
 でも、この池上さんの解説を読むと、FXというのは、証拠金に何倍ものレバレッジをかけ、大きなお金に見せかけることができ、うまくいけば利益は大きいけれど、元手を大きく見せかけている分だけ、ちょっとした値下がりでもすぐ証拠金が無くなってしまうのです。
 それを失いたくないために、どんどん追加投資をして、さらに傷口を広げていく……
 

 池上さんは、この本のなかで、「FXはやるな」と書いてはいません。
 でも、これを読んだ人の多くは、「かなり危険な投資の方法なんだな」ということが理解できると思います。
 安易な「儲け話」に騙されないためにも、「お金」の知識に自信が無い人は読んでみていただきたい。
 「これやって儲けましょうよ!」って本はたくさんあるのだけれど、「そう簡単にお金って儲かりませんよ」って教えてくれる本は、なかなか無いですからね。

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