
- 作者: 岩村暢子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/02/19
- メディア: 単行本
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内容(「BOOK」データベースより)
お菓子で朝食、味噌汁回し飲み、夫と妻の昼飯格差、赤ちゃんの一人食べ、家庭のネットカフェ化―食卓ナマ写真が映し出す今どきの家族像とは?前作『普通の家族がいちばん怖い』に続く、10年以上に及ぶ徹底的な食卓調査の集大成。
この本、「【食DRIVE】調査」にもとづいて書かれているのですが、これは、1960年以降に生まれ、首都圏に在住する子供を持つ主婦を対象とした、家庭の食卓調査」なのだそうです。
1年に1回、1週間分、120家庭の1日3食の内容を日記と写真で記録し、それを解析する調査で、記録された4098食卓(家族がバラバラに食べる場合もあるため)のうち、274の食事の写真が、この本では紹介されています。
複数の野菜を使った炒め物やコンビネーションサラダ、肉と野菜の煮込みや、幾つかの素材を組み合わせた味噌汁などが減り、モヤシだけの炒め物やレタスだけのサラダ、芋だけの煮物、豆腐だけの味噌汁などが増えているのだ。
「サラダは1つの素材で作るものと決めている」と話す主婦(38歳)。彼女は、「ウチで作るときは、いろんな材料を用意して洗って切ってボールで和える、というような大掛かりなことはしない」と言う。いろいろ入ったサラダは「外で食べるもの」だそうだ。
それが「大掛かり」なのか……と読みながら困惑してしまいましたが、これが「作る側の実感」なのかもしれません。
「お菓子だけ」の朝食やたこ焼きだけの昼食、朝昼夕全部卵料理、などの写真を眺めていると、なんだか暗澹たる気分になってきます。
「家族の食卓」が、これでいいのか?と。
20年前の20歳くらいの僕だったら、当時の自分の食生活は棚上げにして、読みながら憤っていたと思うんですよ。
でも、結婚して、3歳の子どもがいる、いまの僕がこの本を読み、よその家族の食卓を眺めると、食生活のいいかげんさを責める気持ちよりも、「みんな大変なんだなあ」と共感してしまう気持ちのほうが強いのです。
もちろん、子どものためには、ファストフードや冷凍食品のみ、というような食生活が望ましくないというのは、承知しているのですけど。
「ウチの子供たちスゴイんです」「ウチの子怖いですよぉ」「ウチの子キケンなんです」「息子は外に放したら大変なことになります」。これらは外食に連れて行ったときの我が子の様子を語る主婦たちの言葉だ。
具体的に聞けば、「店の中を走り回っていろいろなものに触る」「椅子の上に乗ったりして大騒ぎをする」「興奮して大声を出し止められなくなる」「じっとしていられずに騒いで飾りものを壊したりする」「店内を走り回り、ギャーギャー暴れて泣き出す」「大はしゃぎして遊び出す」「店内で踊り出したり大変なことになる」「食事中座っていられず立ち歩く」……等々。2、3歳の幼児から小学生の子供たちの話が多い。
(中略)
だが、主婦たちは口を揃えてこう言う。「子供は言っても聞かないですから」(37歳)、「子供が騒ぐのは仕方ないじゃないですか」(31歳)と。「親がきちんと注意すれば、小さい子供でも2時間くらいなら静かにできるもの」(41歳)とか、「私は子供(7歳・6歳)に静かにしなさいと、ものすごく厳しく何回も言う」(33歳)など躾の大切さを語ったのは、直近の5年分のデータで2〜12歳の子供を持つ主婦全員(92人)を調べても2人しかいなかった。
1953年生まれの著者の「家族の食事」への理想像は、ひと世代下の僕にとっては、「とはいえ、それをいまの時代に実現するのは難しいだろうなあ」というものでなんですよね。
親たちが「疲れた」「がんばって作っても、子どもはどうせ食べてくれないし」っていうのも、よくわかる。
僕たちも、毎日「泣けてくるほど、ごはんを食べてくれない息子」と格闘しているので……
本当に「好きなものしか、食べない」のだものなあ。
妻もいろいろと工夫しているのに報われなくてつらそうです。
「しつけ」を重視しすぎて、子供が「ごはんを食べること」を嫌うようになってしまったらどうしよう、とかも考えます。
お弁当に対する幼稚園からの「指導」についても、こんな話がありました。
野菜料理はほとんど入らない。理由を尋ねると、驚くことに園から入れないように言われているとの答えが最も多い。詳しくは「子供たちに完食の達成感を与えるため、子供が嫌いなものは入れないで下さい。食べきれるよう量は少なめにしてくださいと、園から言われているから」というものだ。過去5年分のデータでは、幼稚園弁当を作っている主婦の3分の1以上がそう答えている。まるで同じ幼稚園に子供を通わせているのかと思うほどだ。
うちの子供も、そろそろお弁当がはじまります。
こういう指導が、「完食の達成感」のためなのか、幼稚園側が「子供が嫌いなものを食べさせるための手間を省く」ためなのかはわかりませんが、いずれにしても、親も幼稚園も、もちろん食べない子供も責められないなあ、という気がするんですよね。
いや、僕自身、子供の頃は、野菜嫌いで、食べたくなかったし。
いまから考えると、親に申し訳なかったなあ、と。
食べない人にごはんを作るっていうのは、悲しいことだったはず。
「食」の問題は、身近なものであるだけに、デリケートなものです。
他の家庭でどんなものを日頃食べているかなんて、なかなか知る機会はありませんし。
僕にとっては、「こんな状況でいいのかなあ……」と「これで責められるのも、なんだかなあ……」と感じられた本でした。
実際に「改善」するのは難しそうですけど、まずは「知ること」なのでしょうね。