琥珀色の戯言

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出版社すっとこ編集列伝 ☆☆☆


出版社すっとこ編集列伝 (電撃ジャパンコミックス)

出版社すっとこ編集列伝 (電撃ジャパンコミックス)

著者について
中邑みつのり
苦節13年、ヤンマガでデビューして、本誌代原で『ハゲ60W』を度々掲載していただき、さあ! 連載を狙おう! ! って時にスポンサー様の○デ○ンスさんから「ハゲ」とはなんだ! ! と、クレームが入り、1年半ぐらい描いてた『ハゲ60W』が本誌から強制撤去。その後取材漫画をやることになり、更にギャンブル漫画へ・・・。単行本の話は4回あったが全て頓挫。ああ・・僕はどこへ向かうのだろ・・・。(著者ブログより)
そんな中邑先生が、画業13年目にして、ついに初コミックス刊行!


「この編集の醜態! 全部身に覚えがある!」 ―― 佐藤秀峰( 『海猿』 作者)。暴力編集、バブル編集、熱血ブス専編集など、実在するトンデモ編集をネタに、作家人生13年目の著者が捨て身で描いた超実録ギャグがついにコミックス化!! これぞ、“漫画家マンガ”の極致!!?


 編集者からみた「ひどいマンガ家の話」は、これまでけっこう読んできたような記憶があります。
 手塚治虫先生や赤塚不二夫先生と編集者たちの物語は、何度も書籍やドラマで採りあげられていますしね。

 しかしながら、「マンガ家からみた、ひどい編集者の話」というのは、ちょっと珍しい。
 著者の中邑みつのりさんは、長年「単行本が出ない、読み切り作家」としてマンガを描いてこられたそうなのですが、苦節13年、初の単行本が、こんなニッチな内容だとは。


 それにしても、マンガ家と編集者の力関係って、「そのマンガ家が売れっ子かどうか」によって、ここまで違うものなんですね……
 基本的に「売れないマンガ家」には、発言の機会そのものがあまりないので(大家になったマンガ家が、「売れなかった時代」を振り返ることはあっても)、その生態は謎でした。
 この作品を読むと、大部分の「売れないマンガ家」にとっては、編集者は「重要な取引先の顧客」であり、「大企業のエリートサラリーマン」のような存在なのではないかと思われます。


 この単行本も半ばくらいまでは、「マンガマニアじゃない僕にとっては、どうでもいいような、よく知らないし、興味もないような内輪ネタばっかり」だったのですが、中盤から後半は、僕でも知っている有名マンガの暴露話(と思われるもの)が頻出してきて、けっこう楽しめました。

「君たちは超一流漫画『ドラ息子ボーイ』を知ってるな?
 あの先生が担当と相談して、フリーター編で終わりにしようって話になったんだ
 しかし、編集長がドル箱を終わらせるとは何事だと怒り
 その担当を異動させようとしたんだ そうしたら…


 先生が”連載続けますから、異動させないでください”と懇願したのは
 有名な話だよな

 うーん、『ドラ息子ボーイ』って、何のマンガのことかなー?(白々しく)
「人気マンガは、なかなか終わらせてくれない」という話は耳にするのですが、あのマンガが、同じようなパターンを繰り返し、インフレ化していった背景には、こんな「マンガ家と編集者の絆」そして、「編集長の横暴」があったんですね……
 むしろ、こんな話、リアルタイムで読んでいたときに知らなくてよかったよ……


 業界人ではない僕にとっては、役に立つわけでも、感動するエピソード満載でもないのですが、だからこそ、「気楽に面白がることができる業界モノ」ではあります。


 この本の巻末の「すっとこ編集外伝」で、編集者に作品の感想を求めたときの、佐藤秀峰先生の悲劇が紹介されています。

佐藤「どこがダメなんですか…?」


編集者「キミがダメ」

作品の感想を求めたら、出てきたのは、人格への感想(というか否定)だった……
そりゃ、編集者不信にもなりますよね……

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