琥珀色の戯言

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ビブリア古書堂の事件手帖3 〜栞子さんと消えない絆〜 ☆☆☆


内容(「BOOK」データベースより)
鎌倉の片隅にあるビブリア古書堂は、その佇まいに似合わず様々な客が訪れる。すっかり常連の賑やかなあの人や、困惑するような珍客も。人々は懐かしい本に想いを込める。それらは予期せぬ人と人の絆を表出させることも。美しき女店主は頁をめくるように、古書に秘められたその「言葉」を読みとっていく。彼女と無骨な青年店員が、その妙なる絆を目の当たりにしたとき思うのは?絆はとても近いところにもあるのかもしれない―。これは“古書と絆”の物語。


まあ、なんというか、安定飛行の3巻目。
このシリーズの魅力というのは、「古書に関する知識」と、「それをうまくミステリに落とし込んだこと」だと思うのですが、栞子さんのお母さんの「謎」がクローズアップされるにつれて、「古書の話を書く」というより、「登場人物の人間関係を描く」ことが重視されてきているような気がしました。
第二話、第三話で採り上げられている本には、あまり興味がわかなかったものなあ。
とくに第二話は、あまりにベタすぎる話で、ちょっとがっかりしてしまいました。
最初のページで、仕掛けがわかるっていうのは、あまりに残念すぎる……

 酒が入るにつれて、栞子さんはリラックスしてきていた。あまり口数が増える方ではないらしく、代わりに身振りや表情の変化が大きくなっている。かわいい酔い方だった。
「もうすぐ、新年ですね……」
 頼んだ料理を一通り食べ終わった頃、彼女は壁を見上げながらしみじみと言った。視線の先には新年会の案内ポスターが貼られている。飲み放題つきで3500円。どういうわけか宴会で浮かれている兎のイラストが描かれていた。
「……なんで兎なんですかね」
「来年の干支、だからじゃないですか」
「あ、なるほど」
 確かに2011年は卯年だ。でも、ちょっと分かりにくくないか。
「……『おとといは兎を見たわ。きのうは鹿、今日はあなた』」
 日本酒のグラスを握りしめたまま歌うようにつぶやいて、にこっと得意げに笑った。うまいこと言った、みたいな顔をされても困る。


とはいえ、栞子さんは相変わらず魅力的だし(栞子さんの酔っぱらいっぷりに対する描写には、ちょっと萌えます。いや、こんな女性が実際にいたら、「芝居じゃないか?」って勘ぐってしまいそうではありますが。


なんとなく、停滞ムードになってしまった巻という印象もあり、五浦と栞子さんの関係も微妙な感じです。
読んでいると、『美味しんぼ』の連載初期の「とにかく知っている食べ物の知識を詰め込んでやるっ!」っていう絵がヘタでも気合いが入っていた時代から、人気作品になって、どんな問題でも食べもので解決してしまうようになった時期への変化を思い出してしまうんですよね。
商品として「延命」するには、やむをえない変化なのかもしれないけれど。


僕はこの作品の世界は嫌いじゃないので、そうやって長く続けてくれるのも悪くないな、という気もするのですが、やっぱり、ちょっと違和感はあります。


とりあえず、『たんぽぽ娘』の結末は、すごく気になるので、探して読んでみようと思います。
それにしても、『王さまの耳はロバのみみ』は、あまりにベタすぎないか……

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