琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

トータル・リコール ☆☆☆



あらすじ: 容易に記憶を金で手に入れることができるようになった近未来、人類は世界規模の戦争後にブリテン連邦とコロニーの二つの地域で生活していた。ある日、工場で働くダグラス(コリン・ファレル)は、記憶を買うために人工記憶センター「リコール」社に出向く。ところが彼はいきなり連邦警察官から攻撃されてしまう。そして自分の知り得なかった戦闘能力に気付き、戸惑いながらも家に帰ると妻のローリー(ケイト・ベッキンセイル)が襲ってきて……。

参考リンク:映画『トータル・リコール』オフィシャルサイト


2012年22本目の劇場鑑賞作品。

公開初日の夕方、18時半からの回で、お客さんは30人くらい。
なんだかすごく混んでいるなあ、と思ったのですが、11日が土曜、12日が日曜で、今夜からお盆モード突入、という人がけっこう多かったんですね。
観終えて帰るときには、レイトショーを観る人たちが行列していました。


この映画を観ての僕の感想を一言でまとめると、こうなります。
「やたらと陣頭指揮をとりたがる偉い人は、組織にとってはかなり迷惑」


いやまあ、これが「それを描きたかった映画」かと問われたら、たぶん違うんでしょうけど、僕にとってはそれがいちばん印象的だったんですよね。
この映画、1990年に『ロボコップ』のポール・ヴァーホーヴェン監督、アーノルド・シュワルツェネッガー主演で映画化されていたのですが、僕はそちらのほうは未見です。
当時は、アーノルド・シュワルツェネッガー全盛期で、ひねくれていた僕は「シュワちゃん映画は、観る必要なし!」と決めつけていた記憶があります。
リメイクされると聞いて、「ついこのあいだ、同じタイトルで映画化されたばかりなのに……」と思ったのですが、もう22年も経っているんですね……


そういえば、僕が愛読しているマンガ『コブラ』の第1話、海賊ギルドとの戦いに疲れたコブラは顔を変え、記憶を消して、しがないサラリーマンとして生きていたのですが、そうなってみると日常は退屈で、刺激を求めて「トリップムービー」という、好きな夢をみせてくれる娯楽施設に出かけていきます。
そこでみた「夢」こそが、コブラがいままで体験してきた現実で、コブラは元の海賊稼業に戻っていく……
小学校のとき、この『コブラ』の冒頭のカッコよさに、僕はすっかりやられてしまいました。


この映画の「原案」は、フィリップ・K・ディックの短編小説『追憶売ります』なのですが、『コブラ』の第1話は、この作品の前半と似ているんですよね。
コブラ』の作者の寺沢武一さんは、当時から海外SFをけっこう研究していたのかもしれません。
(ネットで検索した範囲では、寺沢さんが直接それについて言及したことはないようです)


この映画、宣伝などでは「記憶を買う話」として紹介されているのですが、実際は「ほとんどアクション映画」です。
いくつか観客の予想を裏切るような場面もあることはあるのですが、「その記憶はウソだ」と言われては、観客は推理のしようもなく、ミステリでいえば「反則」でしょう。
ストーリーに関しては、なんかめまぐるしく話が展開していくけど、「フォール」のセキュリティ甘すぎだろ……というようなツッコミを入れたい気分にしかなりません。


アクションシーンはかなり見ごたえがあります。
エアカーによるカーチェイスのシーンとか、3次元エレベーターでのトリッキーな攻防とかは、「面白い」というより、「よくこんなの撮ったなあ」と感動してしまいますし。


しかし、欧米の監督が「カオスな都市」を描こうとすると、どうしても「漢字とカタカナ混じりの看板が立ち並ぶ香港」(+この映画ではベネチア)みたいになってしまいがちなのは、なかなか興味深いですね。
この映画、ストーリーよりは、未来都市のデザインとか、アクションシーンを楽しむべきなのかな、と僕には思われました。


正直、ストーリーは今ふたつ、くらいなのですけど、アクションシーンや都市のデザインには、かなり目をひかれるものがあります。
まあ、「スーパーマザーによる子育て」とか「長くて陰気なアメコミ映画」に比べると、誰がみても「そこそこ」楽しめて、観終えたあとで喧嘩にならない映画なので、いろんな世代の人が観られる「お盆向きの作品」ではあります。

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