琥珀色の戯言

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【読書感想】三谷幸喜のありふれた生活10 それでも地球は回ってる ☆☆☆☆


三谷幸喜のありふれた生活10 それでも地球は回ってる

三谷幸喜のありふれた生活10 それでも地球は回ってる

内容(「BOOK」データベースより)
朝日新聞の名物連載、連載500回突破。節目の第10弾。50歳を目前にして、人気脚本家の身に起きた私生活の大きな変化。東日本大震災直後に開幕した舞台への思い。大竹しのぶ×三谷幸喜+和田誠「結婚と離婚」について語り合う特別対談も収録。


このシリーズ、特別なことが書いてあるわけじゃないといつも思うのだけれど、出ると毎回買ってしまいます。
僕は三谷さんのファンなので。


しかし、今回はちょっと意味合いが違って、というか、若干「期待と不安」を抱いていたんですよね。
東日本大震災と、三谷さん自身の「離婚」の時期だったので。
三谷幸喜さん、小林聡美さん夫妻は「一風変わってはいるものの、お互いを尊重した関係」だとずっと思っていましたし、離婚のニュースを聞いたときには「なぜいまさら?」と感じたものです。
いや、離婚に対して、「いまさら」っていうのも変なのですが、なぜかそんな気がしてしまって。


この『ありふれた生活』では、三谷さんはけっこうプライベートのことを書いておられるので、避けては通れない話題なのだろうなと思いつつも、三谷さんの性格からすると、「さらっと流すだけ」になるのかもしれないな、とも予想していました。


ところが、三谷さんはけっこう正面きって「離婚」の話をしており、最後に収録された回「今の思いを書きます」では、本当に率直に離婚のことについて書いておられます。

 でも16年の歳月は、僕らの間にあった「生き方」の違いを広げてしまいました。分かりやすい例を挙げます。この「ありふれた生活」。連載の当初は、もっと頻繁に彼女のことを書いていました。僕としては身辺雑記のつもりで始めたので、家庭生活を題材にすることに抵抗はありませんでした。でも彼女はそれを嫌がりました。
 ある時、なるべく私のことは書かないで欲しいと言われました。気持ちは分かります。僕は、身の回りに起きた面白い話を書きたい。でもそれは、彼女にしてみれば、プライベートを切り売りするような気がしたのでしょう。実際、それ以降、このエッセーに彼女が登場する回数は激減しました。
 でも僕は本当は書きたかった。自分の身に起こった愉快な出来事を文章で表現し、読者の方に楽しんで貰う、それが僕の仕事だと思っていたるからです。多趣味で勤勉家でアウトドア派の妻と、無趣味で怠惰でインドア派の夫の多少変わった夫婦生活は、楽しいエピソードに溢れていました。でも彼女が嫌がるのに、書くわけにはいきません。
 断っておきますが、この連載が離婚の原因だったと言っているのではありません。それは一つのきっかけ。いや、きっかけにもならない些細なことです。でもそういった些細な「考え方」の違いは、長い年月を経て、大きな溝になってしまいました。そして僕らは話し合い、今後はそれぞれの「生き方」に従って、それぞれの道を歩むことを決めたのでした。決して喧嘩別れではありません。

これが「離婚の真相」かどうかは僕にはわかりません。
でも、「こういうことが起こりうる」というのも、いまの僕にはわかるような気がします。
もしかしたら、「私のことは書かないで」というのは、きっかけではなく、小林さんの三谷さんへの感情の変化を反映した「結果」だったのかもしれないな、なんて考えてみたりもするのです。
小林さんのほうも、ずっと面白いエッセイを書き続けておられますし(しかも、内容には身辺雑記的なものが多い)、書く側の気持ちは、わかっていたのではないだろうか……


「感情がすれ違っていく過程」って、何が原因で、何が結果なのか、わからなくなっていくんだよね……


たしかに、最近の「ありふれた生活」では、小林さんのことにあまり触れられていないな、と感じていました。
この10巻などは、ぽつりぽつりと「妻」という言葉が出てくる程度で、「離婚」という結果を知っている僕としては、「さもありなん」みたいな気持ちで読みました。


しかし、三谷さんには「それならこの連載はやめる」という選択肢はなかったのでしょうか?
無いよねやっぱり。そうできないのが、三谷幸喜なんだろうと思うし……


巻末の「大竹しのぶ×三谷幸喜+和田誠<特別対談>三谷幸喜は結婚に向かない?」は、なんというか、けっこうリラックスした感じで語っておられて、面白かったです。

三谷幸喜和田さんは、今まで、本当に、まったく、夫婦の危機はなかったんですか?


和田誠ケンカはしますよ。でも、危機まではいたらないですね。今のところは。


三谷:ケンカのあとは、「ごめんね」って謝り合うんですか?


和田:いや、お互いにそんなことは言わない。ケンカしても次の朝は普通になってる。


三谷:ああ、そういうの、憧れるなあ。


大竹しのぶ三谷さん、レミさんみたいな人と合うかもしれないですね。あ、でも、ご飯を作ってくれて、三谷さんがすごく仕事がしたいときでも、「ご飯食べて食べてーーーっ!」(レミさんの口調をまねて)って言われちゃうね。


和田:そうそう、それは大変ですよ。


三谷:そういうとき、和田さんはどうされてるんですか?


和田:そう言われたら、オレ、すぐ食うから!(一同爆笑)


大竹:三谷さんも「ご飯よ!」って言われたことあるでしょう?


三谷:えぇ。ただねえ、僕は家で仕事をしてますから。ご飯できたわよ、お茶いれたわよ、コーヒーいれたわよって、せっかく言ってもらっても、ちょうど書いていて、今、調子が出てきたみたいなときもあるわけですよ……。僕がいけなかったのは、「仕事してるから、今はいいや」と言ったまま忘れちゃって、二時間後ぐらいにリビングに行くと、ご飯やコーヒーがすっかり冷めていて、激しく落ち込むっていうパターン。もちろん僕がいけないんですが。


和田:お茶だって、オレは出されたらすぐ飲むからね。


三谷:(苦笑)

この話、勉強になるなあ……
僕もけっこう何かをやっている最中に「ご飯よ」なんて声をかけられると「あとで」って言ってしまいがちなのですが、それは、相手にとってはストレスの元になるのだよなあ。
三谷さんみたいに「仕事」をしているわけではないのだから、和田誠さんを見習って、「すぐ食う」「すぐ飲む」ように心がけようと思います。
いやほんと、笑い話じゃないというか、こういうのが「夫婦生活を長続きさせる秘訣」ではないでしょうか。


いちおう、離婚関係の話が書かれているのは、最後のほうと巻末の対談だけで、あとはいつもの「ありふれた生活」です。
これまでのシリーズが好きだった人は、読んで損はしないと思います(って書かなくても、みんな読みますよね)。

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