- 作者: 浦賀和宏
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2003/10
- メディア: 文庫
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内容(「BOOK」データベースより)
平凡だが幸せな生活を謳歌していた香奈子の日常は、恋人・貴治がある日突然、何者かに殺されたのを契機に狂い始める…。同じ頃妹の度重なる異常行動を目撃し、多重人格の疑いを強めていた根本。次々と発生する凄惨な事件が香奈子と根本を結びつけていく。その出会いが意味したものは…。ミステリ界注目の、若き天才が到達した衝撃の新領域。
うわあ、また「うずくまって泣きました詐欺」にやられてしまった……
この文庫、某所のTSUTAYAで平積みになっており、「今、売れてます!」「15万部突破!!」「ミステリーファンが声を合わせて『傑作』と唸る驚愕作!」などという宣伝文句が並んでいました。
まあ、そこまで言うなら、読んでみるのもやぶさかじゃないか……
うーん、どこの店の誰とは言わんが、最近の「書店員オススメ」って、なんだかもう不良債権を売り捌くためにやっているんじゃないかと疑わしくなってきます。
いや、あるんだよ確かに。「拾い物」も。
でも、TSUTAYAはまあしょうがないとしても、紀伊国屋とかでもけっこう「書店員オススメの地雷本」が少なくないんだよねえ。
どうした紀伊国屋!
すみません、読書感想でしたね。
この本を読んでいて感じたのは「読みにくいし、もう『多重人格もの』は、読み飽きたよ……」だったのですが、これに関しては、2001年に書かれた本を2012年に読んで、「古い」とか「こういうのはもう飽きた!」なんていうのはこちらの都合でしかないので、あんまり酷いこと言っちゃいけませんね。
でも、「読者をミスリードさせたい!」という意欲のあまり、なんかもう書いているほうも、こんがらがってしまっているのではないか、と思わずにはいられませんでした。
あまりに文章や視点や登場人物がごちゃごちゃしているので(そんなに大勢の人物が出てくるわけでもないのに!)、「もうこれ、出てくるやつみんな多重人格とかいうオチじゃないだろうな……多重人格祭り!」とか、「実は全部ひとりの多重人格者が頭の中でやっていた、っていうのが『トリック』なのでは……」とか、猜疑心のかたまりになってしまったのです。
(ややネタバレ気味ですみません)
読み終えたあとも「やられた!」という爽快感よりは、「こんな読みにくいものを読ませて、無理やり読者をミスリードさせようとしていたのもかかわらず、結局こういう話だろうとは思っていたところに着地して、なんか急に読者を感動させようとするというよくわからなさ。
いや、いくらなんでもこの犯人に共感するのは難しかろう、と。
眠くなってきた、あるいは飽きてきた読者の眠気を振り払うためだけのような残虐描写なんて、「悪趣味」のひとことです。
僕はよほど「多重人格もの」との相性が悪いのか、あんまり面白いと思ったことがないんですよね。
この作品も、百田尚樹さんの『プリズム』の気色悪さふたたび!という感じでした(ちなみに、『プリズム』のほうが後発ということもあってか、かなり「多重人格について勉強になる」ところはあります。
この『彼女は存在しない』は、「そんな多重人格、さすがにないだろ……」と言いたくなる場面連発!人格の入れ替わりもスムースすぎ!
「単行本のときに話題にならなかったミステリで、文庫になって評判になったものは地雷率が高い」という僕の推論を証明するデータのひとつとして以外には、「どうおすすめてしていいのか、よくわからない作品」です。
はっ、ここで酷いことを書いているのは、僕の別人格ですからね!なんでこんな勝手な感想書いているんだ……
(とか言いたくなるようなミステリですよ、要するに)
参考リンク:『プリズム』感想(琥珀色の戯言):これもなかなかの「問題作」でした……