- 作者: 卯月妙子
- 出版社/メーカー: イースト・プレス
- 発売日: 2012/05/18
- メディア: コミック
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- 作者: 卯月妙子
- 出版社/メーカー: イースト・プレス
- 発売日: 2013/06/28
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内容説明
夫の借金と自殺、自身の病気と自殺未遂、AV女優他様々な職業…
波乱に満ちた人生を送ってきた著者が36歳にして出会い恋をした、25歳年上のボビー。
男気あふれるボビーと、ケンカしながらも楽しい生活を送っていた。
そんなある日、大事件が起こる――。
年の差、過去、統合失調症、顔面崩壊、失明……
すべてを乗り越え愛し合うふたりの日々をユーモラスに描いた、感動のコミックエッセイ!
デビュー作『実録企画モノ』で大反響を巻き起こした
“漫画界の最終兵器”卯月妙子の、10年ぶり、待望の最新刊!
内容(「BOOK」データベースより)
壮絶な過去と統合失調症を抱えた著者が、36歳にして出会った25歳年上のボビー。苛烈で型破りで、そして誰より強靱なふたりの愛を描いた感動のコミックエッセイ。
「感動」のコミックエッセイ、か……
『本の雑誌』の2012年の「年間ベスト10」で第1位に輝くなど、かなり評価の高いこの作品、僕も「この絵でいいのか?でも、これリアルタッチで描かれてもつらいかもしれないな……」なんて思いつつ、一気に読んでしまいました。
それでも生きている、愛してくれる人がいる。
そういう意味では、たしかに「感動」します。
読み終えて、「やっぱり、生きていても良いんだよね!」という気持ちにもなりました。
でも、僕はこの本に「圧倒」されながらも(こんなに統合失調症の「妄想」というものを具現化した作品はあまり無いとも思うし)、なんだか落ち着かなくて。
ああ、そういえば『自虐の詩』を読み終えたときも、こんな感じだった。
この作品では、何人かの登場人物が、著者に「見返りを求めない愛情」を注いでくれます。
でもさ、精神的に不安定な人を支える、何があっても受け入れて行くっていうのはそんなに簡単なことじゃない。
大部分の人間は、自分ひとり支えるだけで、精一杯なのです。
(もちろん、だからこそ「支え合う」という考え方もあるのですけど)
著者は自分の求める「表現」や「好奇心」に従って生きているけれど、それによって起こる、さまざまなトラブルは、周囲の人たちの人生にも影響を与えずにはいられません。
「他人を傷つけてはならない」と自傷する場面は、あまりにせつなかったのだけど、著者の場合はその「一線」を越えないからこそ、なんとか社会生活がおくれている。
自殺未遂で、救急車で運ばれてきたとき、病院の救命救急のスタッフたちは、「ああ……」と、大きな溜息をついたのではないかなあ。
もちろん、運ばれてくれば、やれるだけのことはやるのが仕事。
でも、これだけ救急医療の崩壊が叫ばれているなか、「自分で自分の命を投げ出してしまおうとする人」を診るのは、つらいですよ。
そういう病気ではあるんだけど、自分で薬減らしたりしているし……
著者が「表現者」だからこそ許されるのか?
こんな凄い作品を描いたのだから……
ある酒好きで有名なミュージシャンの晩年を追ったドキュメンタリーを観たことがあります。
ステージでも飲み、アルコールで入退院を繰り返しながら活動していた彼の死に対して、身内のひとりだという人が匿名で「正直、死んでくれてホッとした、という気持ちもある。あいつの酒のせいで、こっちは迷惑かけられっぱなしだったから……」と話していました。
そのミュージシャンのファンにとっては「酷い身内」かもしれません。
しかしながら、僕は「ああ、ファンは『美味しいところ』だけを伝説化しておけばいいけれど、身内はこんなものだよね。おつかれさまでした」と思わずにはいられなかったのです。
この作品を読んで、「わかったような気になる」のは簡単なことです。
「感動した」「泣いた」っていうのはわかる。
でも、それは、「自分には直接影響がない、他の誰かが献身的に支えている人の物語だから」かもしれません。
「自分の身近なところにいる、いつ自殺するかわからないひと」を受け容れて、ともに生きていくのは、別次元の問題です。
僕は、著者の「生」を支えている人たちの壮絶さに、ひたすら圧倒されましたし、同じことはできないであろう自分が悲しくなりました。
僕なら、逃げる。
「病気のことを知る」のは大事なことです。
でも、この本の壮絶さにばかり、引きずられないで欲しいな、とは思うのです。
統合失調症にも、さまざまな病気の程度がありますし、薬を飲みながら、普通の生活をおくっている人もいるのだから。
凄い作品であることは間違いありません。
ただ、これを他人に薦めるか?と問われると、薦めていいものかどうか、すごく悩ましい。