琥珀色の戯言

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【読書感想】世界から猫が消えたなら ☆☆


世界から猫が消えたなら

世界から猫が消えたなら

内容(「BOOK」データベースより)
僕の葬式。僕の枕元に集まる人はどんな人たちだろうか。かつての友達、かつての恋人、親戚、教師、同僚たち。そのなかで僕の死を心から悲しんでくれる人は、何人いるのだろうか。僕と猫と陽気な悪魔の7日間の物語。

今年もやります、『ひとり本屋大賞』6冊目。
かなり売れているらしいこの本なのですが、読み終えての率直な印象は、「これ、あの『KAGEROU』と似たようなもんだろ」というものでした。


あまりにも簡単な人の死と和解。
いきなり出てくる「悪魔」。
明日死ぬ運命の主人公が、「世界からひとつのものを消す」ことによって、生き延びられるが、それが「消されることによって、大切さがわかる」というコンセプト。
突然別れた恋人から連絡があっても、あっさり受け容れてくれる元彼女。
時代劇言葉でしゃべる猫。


薄い、あまりにも薄っぺらいぜこれは……
なんか、数学的理論をもとにプレイヤーを夢中にさせ、課金するソーシャルゲームと同じような「あざとさ」を感じてしまう。
もっとさ、書き手の側の迷いとか、ためらいとか、怒りとか、苛立ちとか、そういうザラザラしたものが感じられる小説のほうが、僕は好きです。
なんか「感動させる小説ツクール」かなんかで書かれたような気がするんだよこれ。
フィクションだからこそ、そんなに簡単に人を殺したり、世界を変えないでほしい。


いや、「母親の愛情」的なものを語られると、僕もやっぱりちょっとウルウルしてしまうところもあるのだけれど、それは本当に感動したというより、「ああ、この作者は、人が感動するスイッチを心得ていて、ピンポイントで押しているんだな」と、かえってそんな手に引っかかってしまう自分が情けなくなってしまうのです。


まあなんというか、徹頭徹尾「予想を裏切らない物語」であることに驚くのと同時に、こういうのが「いま、売れる小説」なのかな、と暗澹たる気持ちになりました。
ましてや『本屋大賞』にノミネートって……いや、もうみんな『本屋大賞』に、そんなに期待していないのかもしれないけどさ。


少なくとも、『KAGEROU』を「つまんねー!」と思った人は、読まないほうが無難です。
「猫好き」だったら、好ましく読めるのかなあ、これ……

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