琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

【読書感想】「中卒」でもわかる科学入門 ☆☆☆


内容(「BOOK」データベースより)
3・11後を生きる私たちのためのサイエンスリテラシーを解説。ダマされないための最低限の知識。


著者について
投資家、ブロガー。中学校卒業後、大検にて高卒資格を得る。その後、カリフォルニア大学バークレー校中退。よって最終学歴は「中卒」。現在、ディーエーエヌ有限会社代表取締役。読者家として知られ、ブログによる書評が話題。


この「自分は大検受かって大学には行ったけど中退したから中卒だ」というのを読んで、先日、西村賢太さんが伊集院光さんと玉袋筋太郎さんと朝のテレビ番組で鼎談していたときに仰っていたことを思い出しました。


西村賢太「ぼくからすると、一度でも高校に行ったことがあるやつと、純然たる『中卒』とは、全然違う」


いやまあ、だから小飼弾さんは「中卒」じゃない、と言うつもりはないのですが、この新書、面白いんだけど正直けっこう難しい。
少なくとも「中卒でもわかる」とか「”+ー×÷”で、科学のウソは見抜ける」というキャッチーなタイトルに釣られて読むと、途中で「これ、けっこう難しくないか?」と困惑することになりそうです。


小飼弾さんは「中卒」だとしても、「中卒が、みんな小飼弾なわけではない」のですよね。
というか、小飼弾が「一般的な中学生レベルの知識」に歩み寄っているのではなくて、「俺ができるんだから、お前らもこのくらいのレベルのことはわかるだろ?」とスパルタ教育を行われているような気分になってきます。


「四則演算(+―×÷)が理解できていれば科学はわかる」と書いてあるのだけれど、そこで僕が実感したのは、「四則演算って、けっこう難しいなあ」ということだったりしたわけで。

 四則計算は小学校のうちに習いますが、それは機械的に計算する手法を覚えるだけで、心のどこかで引っかかったまま大人になるのかもしれません。
 特に、割り算。学校教育においてはいくつか重要な節目がありますが、算数の割り算や分数は小学生にとって最初の試練です。大げさな言い方に聞こえるかもしれませんが、プログラマーや大学で数学を学んでいる学生は割り算の難しさに賛成してくれるはずです。プログラムを書く際には0で割らないようにチェックルーチンを組み込まないといけませんし、答えを整数で出すのも、浮動小数点で出すのか、それとも分数で出すのか、有効数字はどうするのか、専門家ですら悩んでしまうところです。

言いたいことはよくわかるんだけど……少なくとも、タイトルから受けるイメージほど「初心者向け」じゃないんですよね……
基本的には、学歴云々よりも、「数学が嫌いじゃない人」「科学に興味がある人」が、この本に向いた読者だと思うんですよ。
それは、著者が求めていた読者とは、けっこう違うかもしれないけれど。
「科学者を見分ける方法」として、「それを主張することによって、誰が利益を得るのか見極めろ」なんて話は、科学的な思考力云々じゃなくて、「世間知」として有用だとは思いますが。


ただ、「科学に興味とある程度の予備知識がある人たち」にとっては、小飼弾さんの「科学に対するスタンス」を知ることは、興味深いはずだと思うのです。

 まったく異なる言語を話す人同士でも、数字さえわかれば、モノの取引ができ、意思を通じ合えます。現在は、英語が共通語として広く使われていますが、それでも英語の公用語人口は14億人程度です。しかし、数字を読める人の数はそれよりはるかに多く、真の世界共通語は数学と言っても過言ではありません。
 そもそも、私たち人間は、どうしてお互いにコミュニケーションを取ることができるのか? それは科学、すなわち定量的なモノの見方があるからです。
「あなたが見ているモノと私が見ているモノは同じなのか?」
 異なる立場の人間が同じモノを見て話ができるのは、科学あってのこと。というよりも、それこそが科学の本質なのです。

 ちなみに、著者は「原発」について、こう考えておられます。

 まず最初に言っておきたいのは、科学的な観点からすると原発はとても「筋の悪い」技術だということです。それは、事故を積み重ねていくことができないから。

 この言葉の意味は、本には飛行機が安全性を高めてきた事例なども含めて、もっと詳しく書かれています。
 

 「ベーシックインカム」を制度として推奨する理由とか、局所的には「科学入門」の枠からはみ出して、著者の主張がほとばしっているところもあります。


 この新書を読んでも、「科学入門」には、あんまりならないと思うんですよ、率直なところ。
 というか、「数式なんて見たくもない」人にとっては、読むのがつらいし、何が書いてあるかもわからないんじゃなかろうか。
 僕も中盤あたりは、「ちょっと難しいというか、頭になかなか入ってこないな」と思いながら読んでいました。


 でも、「自分は科学的なモノの考え方ができているだろうか?」と、ちょっと疑問になってしまっている人間にとっては、刺激を受けるというか、「もっと勉強しなきゃいけないな」と思い知らされる新書ではあります。僕がまさにそうだったので。

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