- 作者: 山田真哉
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2012/12
- メディア: 単行本
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内容紹介
あのミリオンセラー著者が帰ってきた!
160万部突破の『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』を始め、数々の会計や数字にまつわる著書で「一大会計ブーム」を巻き起こした山田真哉氏が、5年ぶりの新境地を開く!
本書は、ビジネスパーソンに求められる「平社員会計学」の知識や、経営的なセンスを磨くために必要な「社長会計学」などの教養を、身近なエピソードを交えながら講義方式でわかりやすく解説。迫り来る「消費増税」後のビジネスや資産運用に役立つ知恵や情報が満載です!
●消費増税前に住宅や自動車などの高い買い物はするべきか? ●商店街の潰れそうで潰れない店に隠された非常に高い収益性の仕組みとは? ●「豆大福」「ソフトクリーム」「ドーナツ」を落とした時の損失の違いは? ●グラビアアイドルのウエストはなぜ58cmが多い? ●財務三表ならぬ財務三強とは? ●飲み会の幹事に学ぶ「損益計算書」と「キャッシュフロー計算書」の読み方とは? ●老後に必要な本当の貯金額は? ●株式投資の第3のゲイン「優待ゲイン」はなぜお得?――などなど、ビジネスパーソンならずとも気になる数々の疑問に答えつつ、さらに会計士的な物事の考え方や数字の捉え方などが学べます!
ああ、山田真哉さんは、本当に「本の売り方」がうまいなあ、と読みながら感心してしまいました。
このくらい読みやすくしないと、なかなかみんな手にとってくれないんだろうなあ。
僕も引っかかってしまったひとり、なんですけど。
正直、内容に関しては、『さおだけ屋』と、そんなに変わっていないと思うんですよ。
もちろん、「会計的な発想」が、そんなに急に変わってしまうほうがおかしいんですが。
後半、とくに3日目の「社長会計学」は、「これは僕にはあんまり関係ないし、内容的にもけっこう難しいし、面白い『例題』もないし、この本を手にとった『会計の素人』向きじゃないんじゃないかなあ」と感じました。
若干、この本を読む人が求めている内容より、高度になりすぎてしまっているところもあるかなあ、と。
もちろん、これ以上、簡単にするのは難しい、ということなんでしょうけど。
その「社長会計学」を除けば、読みやすく、わかりやすく、楽しく1時間くらいで読める格好の「入門書」です。
この本、タイトルもそうなのですが、とにかく「例題」が興味深い。「答え」を知りたくなって、読んでしまうのです。
第1問:老舗の和菓子屋店で、店員が豆大福を1個、床に落としてしまいました。
毎日昼頃には売り切れてしまう看板商品で、製造原価は30円。
販売価格は100円です。落としたことによる損失はいくらでしょうか?
1.原価の30円
2.利益の70円
3.販売価格の100円
第2問:観光地のソフトクリーム屋さんでは、製造原価30円のソフトクリームを販売価格100円で提供していました。
ある時、お客さんが購入後すぐにソフトクリームを落としてしまい、サービスで作り直してあげることにしました。店の損失はいくらになるでしょうか?
1.原価の30円
2.利益の70円
3.販売価格の100円
第3問:全国展開するドーナツチェーン店の問題です。
店舗にはセントラルキッチン(集中調理施設)で調理された大量のドーナツ(製造原価30円)が並んでいますが、閉店後には、残念ながらいつも売れ残りが出てしまいます。
ある時、店舗で小さなお子さんが棚からドーナツ(販売価格100円)を1個落としてしまい、売り物にならなくなりました。
損失はいくらでしょうか?
これ、「豆大福問題」として、会計の世界では有名なクイズなのだそうです。
答えはここには書きませんが(もちろん本では書かれています)、考え始めるとあれこれ迷ってしまって、答えを知りたくなりますよね。
答えを聞くと、そんなに驚くようなものではなくても。
ベストセラー『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』のときも感じたのですが、こういうのが「ベストセラーを生むセンス」なんだろうなあ。
もちろん、センスだけではなくて、山田さんは、こんな努力をしていることを、以前語っておられました。
『ダ・ヴィンチ』2006年10月号(メディアファクトリー)の対談記事「わたしにもベストセラー新書が書けますか?」より。
(対談されているのは、辛酸なめ子さんと、『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』の著者・山田真哉さんです)
辛酸:手元にある『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』の帯を見ると130万部と書いてあるのですが、いまは何万部ぐらい売れているのでしょうか。
山田:148万部ですね。ただ、人に言うときはキリのいいところで150万部にしています。
辛酸:100万部を越えると2万部も端数なんですね……。私の本は山田さんの端数分ぐらいが売り上げ数の相場なので。
山田:100万部越えたら2〜3万部は惰性ですよ。
辛酸:惰性、ですか。
山田:惰性というのは、とくに営業しなくても1ヵ月にそれぐらいは売れるということ。「ミリオンセラーだから買おう」という方々がいらっしゃるので。でも、ミリオン達成までにはかなり営業戦略的に仕掛けています。たとえば増刷するたびに毎回帯を変えたり。それでも、本の売れる要因は”商品8割・営業2割”と言われているんですよ。保険だったら「商品2割・営業8割」だけど、本は商品力、中身に依存している。
辛酸:タイトルも大事そうですね。『さおだけ屋は〜』以降、タイトルに「なぜ〜なのか」というのが増えましたし。
山田:新書は装丁で違いが出せませんから、タイトル勝負なんです。売れる本のタイトルには2つのパターンがあるんですけど、ひとつは”共感を取りにいく”。ふたつめは、”斬新さを狙う”。最近だと『ウェブ進化論』や『会社法入門』といったような、新しいテーマを扱っていることがタイトルでわかるものです。『さおだけ屋は〜』は”共感を取りにいく”パターンですね。
辛酸:共感が取りにいけるものだと、はじめて知りました。
山田:『さおだけ屋は〜』は、タイトルのマーケティングリサーチ期間に1年かけました。自分の主張を押しつけるようなものではダメ。相手は何を欲しがっているのか、それを知るのがポイントです。
(中略)
山田:新書だけではなくほかの本もそうですが、「読者に最後まで読み切らせる」というのがもっとも大事です。これは出版の極意。最後まで読み切らないと人は口コミしてくれないですから。とくに新書は通勤時間や仕事の休憩時間に読まれることが多いので、読み切らせるのは大変なこと。だから僕は1エピソードをだいたい10分で読めるように設定しています。
辛酸:もしかして、書きながら時間を計ったりしているのですか?
山田:当然、計ります。いつもストップウォッチを用意しています。
辛酸:!
山田:僕にとっては当たり前のことですよ。僕の本は「10分の休み時間に1エピソードが読める新書」。メインターゲットのことを知り尽くさないと新書は必ず失敗します。また、起承転結、もしくは序破急をつえて、読みやすくし、最後に実生活の知恵などを織りまぜて説得力を強くすることも重要です。あと、プロフィールの書き方も大切。僕は神戸出身なのですが、プロフィール欄の出身地や学歴などに地方色があるとその地方の人は親近感を抱いてくれます。
しかし、ここまでやっている山田さんでさえ、『さおだけ屋』以降、大きなホームランは打てていないわけで、「本を売る」ということの難しさも考えさせられます。
この本のなかでは、「売る側が、いかにして、買う側の気を引くか」というテクニックもいくつか紹介されています。
大手量販店での「50人に1人は無料!」なんていうキャンペーン、「タダになるのか!それでやっていけるの?」と、一瞬こちらが心配になってしまうくらいなのですが、実質的には「2%割引」と同じこと、なんていう話など。
「賢い消費者」のつもりでいても、意外とそういう「印象のトリック」に騙されがちなんだよなあ。
著者は、「会計のセンス」について、こんなことを書いています。
では、こうした会計的なセンスは天性のものなのでしょうか。僕は育めるものだと考えています。
たとえば、こんな質問の答えからも、その人の会計センスの一端が見えてきます。
「今、財布にいくら入っているかわかりますか?」
パッと答えられ、実際に中身との誤差が1000円以内なら、合格です。よく講演でも聞くのですが、だいたい合格者は3分の1くらいでしょうか。
それ以外の方は不合格です。無頓着な人は平気で5000円以上は外します。
僕はまさに「無頓着な人」でした……
「消費税増税前に買っておいたほうがいいもの、買う必要がないもの」とか「老後のために実際に必要なお金についての解説」とか、いままさにみんなが知っておきたいことも書かれていて、まさに「最低限の知識が得られる本」だと思います。