琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

【読書感想】日本人はこれから何を買うのか? ☆☆☆


内容(「BOOK」データベースより)
2035年、「一人暮らし世帯」が1846万世帯となる。逆に、かつて主流だった「夫婦と子ども世帯」は1153万世帯に減る。平均的だと思っていた日本の家族像がもはや過去のものになりつつあるのだ。また、「一人暮らし」というと、未婚の若者といったイメージが強かったが、今後20代、30代の一人暮らしは減り、代わりに高齢者のおひとりさまが急増する。「超おひとりさま社会」になることを前提に、社会全体を見直さなくてはならない。個人化・孤立化が進む中、ライフスタイルはどう変わっていくのか。モノを買わない時代、人々は何を求めているのか。キーワードは「シェア」と「共費」。さまざまな地域や企業の取り組みを紹介しつつ、日本社会のゆくえを予測する。


20歳以上、69歳以上のインターネット利用者、合計3万人をサンプルとしたウェブ調査から、世代別の消費行動を分析した新書です。
今後、日本は世界でも類をみない「超高齢化社会」となっていくことが予測されています(もっとも、そのすぐ次の時代には、中国がディープインパクトの末脚のようなスピードで、超々高齢化して日本を追い越していくのですが)。
そんななかで、人々は、何を欲しがっているのか?

 2010年の一人暮らし世帯は1679万世帯だが、2020年には1800万世帯を超え、2035年は1846万世帯である。未婚、離別、死別、子どもが独立した人などが増えるためである。逆に、2035年の夫婦と子どもの世帯は1153万世帯。世帯の主流は一人暮らしになる。

 2010年の一人暮らし世帯は20代だけで334万世帯、30代が260万世帯。しかし2035年は、団塊ジュニアが60〜64歳になり、50歳以上の中高年全体では372万世帯増え、1211万世帯になる! 一人暮らし世帯の3分の2が50歳以上なのだ。

 未婚者の数は今後ほとんど変わらないが、2030年には50歳以上の未婚者が860万人に増える。離別、死別も増え、75歳以上の死別・離別者数は2030年に994万人になる。未婚・死別・離別を合計すると、2030年は全年齢で4911万人になる!
(そのうち、50歳以上が2510万人)。

 これは「国立社会保障・人口問題研究所」による推計だそうです(2013年1月推計)。
 僕自身も2030年には、生きていればちょうど還暦くらいになっているわけで(まさに「団塊ジュニア世代」です)。
 20年後には、日本は「高齢者のおひとりさま社会」になっていくと予想されており、大きな戦争とか疫病の流行でもないかぎり、これはまず間違いない未来予想図です。


 この新書、率直にいうと、このインターネット調査の結果が羅列され、最後に少し著者が「今後の日本で必要とされるもの」を考察しているだけなので、マーケティングを生業にしている人以外にとっては、あんまり直接役に立つような内容ではありません。
でもまあ、こういう事実を目の当たりにしてみると、あらためて、いまの時代について考えさせられるところもあるわけで。
 著者も述べているのですが、このデータは、あくまでも「インターネットを使える人」対象ですから、高齢者の場合はとくに、平均的な同世代よりも収入が高かったり、好奇心が強かったりといった傾向もあります。

  
 ただし、これを読んでみると「高齢化、おひとりさま化していく社会」に対して、ある種の「補正」がかかってきているのも感じます。

 まず、シニア男性(60歳以上)の、一人暮らし世帯について家計の変化を見てみる。
 1947〜1949年生まれの団塊世代は2007年に60代に突入しはじめたから、2007〜2011年の60歳以上には団塊世代が含まれている。だから、2002〜2006年の平均値よりも2007〜2011年の平均値が伸びた分は、おそらく団塊世代が60代に入ってきたことの影響が大きいと思われる。
 最も伸びているのは「語学月謝」で13.6倍である。以下「インターネット接続料」「冷凍調理食品」「スポーツ月謝」「発泡酒」「自動車購入」が2倍以上である。
 さらに見ると、「語学月謝」「スポーツ月謝」のほか、「音楽月謝」も伸びており、教養娯楽関連の学習費用が伸びていることが明らかである。リタイア後の自由な時間をさまざまな学習活動に費やそうとしているということがわかる。
「映画・演劇等入場料」も伸びている。団塊世代は、ヌーヴェル・ヴァーグ、アメリカン・ニューシネマ、あるいは東映やくざ映画など、若い頃に映画をよく観た世代である。また、唐十郎寺山修司などの演劇に親しんだ人も多い。そうした彼らがリタイア後に映画、演劇にお金を払うようになっている。


 また、食品では「冷凍調理食品」のほか、「ハンバーグ」「スパゲティ」「マヨネーズ(風調味料含)・ドレッシング」「ソーセージ」「スナック菓子」「サラダ」「アイスクリーム・シャーベット」「紅茶」が伸びており、シニア男性の食生活が洋風化、若者化していることがわかる。
 考えてみれば団塊世代は、若い頃からこうした洋食やスナックを食べてきた世代であるから、60歳を過ぎても、多少の好みの変化はあるにしても、それ以前の世代のシニアよりも洋食志向、スナック志向が強いのは当然であろう。

 この新書には、詳細な表も掲載されています。
 たしかに、僕が子供のころにみていた「60歳」と、いまの「60歳」は、全然違うんですよね。
 僕は年をとったせいかもしれないけれども、60歳は、まだ「壮年」という感じがします。
 まあしかし、いまの若者層からしてみれば、下の世代はワーキングプアばっかりなのに、逃げ切れた「団塊組」は、習い事に娯楽にと忙しそうでいいですね……とか思われていそうな話でもありますね。
 

 
 著者は、各世代のデータをまとめて、こんな分析をしています。

・シニア男性は「若者化」
・シニア女性やミドル女性は「アクティブ化」
・ミドル男性は「おうち志向化」
・若年男性は「主婦化」
・若年女性は「男性化」

 というように、全体としては老若男女の差が小さくなっている。もちろん個別の消費分野については差が大きいものもあるが(たとえば、先述した生鮮食品の消費金額などは年齢差、男女差が大きい)、しかし全体的傾向としては、老若男女の差が縮まる方向に動いている。
 そういう意味では、老若男女に共通のニーズに応える商品は、巨大なヒット商品になる可能性がある。ユニクロはその一例であろう。

 たしかに「年齢、性別による違い」が、どんどん小さくなってきている感じはします。
 あくまでも一例ですが、僕が子供の頃には、まさに「子供のもの」だったテレビゲームは、現在では大人が遊んでいても白眼視されなくなりました。
 いかにも「おじいちゃん」「おばあちゃん」という感じの服を着ている高齢者も、あまり見かけませんし。
 そういう意味では、「おひとりさま」のほうはさておき、「高齢化」については、「もう、60歳で『老人』と考えるべきではない」のでしょう。
 というか、そうしないと、これからの日本が行き詰まるスピードは速くなっていく一方ですし。
 まあ、元気なうちはいいとしても、一度病気でもしたら、あとはもう淘汰されていくだけ、という状況になっていきそうでもありますけど……


 著者は「高齢のおひとりさま」が増えていく時代には「コミュニティ」(=だれかと一緒に過ごすこと)が価値を生むのではないか、と考察しています。
 「一人暮らしは気楽」だけれども、他者とのコミュニケーションを求めてしまうのも、また人間の性。
 商品を売るだけではなく、「つながりも一緒に売る」時代がやってくるのかもしれません。
 「ちわー、三河屋でーす!」みたいな売り側と買う側の関係が、再び、一般化してくるのでしょうか?
 それとも、Amazonで「1時間話し相手になってくれる権利」が売られるようになっていくのか?


 正直、「だからといって、自分に何ができるのか?」という内容ではあるのです。
 年取らないわけにもいかないし。
 これから「若者」をやるのは大変だな、ということは、よくわかるんですけどね。

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