琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

【読書感想】リアル30's ☆☆☆


リアル30's

リアル30's

内容紹介
「年間自殺者3万人って、未遂はもっといるってこと。ちょっとした戦争状態。私もみんなもその時代を必死に生きてる」


――バブル経済崩壊後 の「失われた20年」に青春期を過ごし、就職氷河期を経て社会に出た30歳世代。
働くことと生きることに悩みながら、迷いながら、閉塞感漂う社会でそれでも懸命に前に進もうとする彼らの姿をリアルに描き、大きな反響を呼んだ毎日新聞連載の単行本化。
社会への醒めた目線、仲間へのリスペクト、シェア感覚など、30歳前後の世代の本音と生き方から2012年日本の現実が見えてくる。
連載への読者ツイートも多数収録。


実は、この本を購入した時点では、40歳を少し越えた僕も、この「リアル30's」の範疇に入るのではないかと思っていたのですが、この本のなかでの「30's」は、こう定義されています。

 本書が取り上げる「30's」は次のような人たちだ。78(昭和53)年〜82(昭和57)年ごろに生まれ、バブル経済が崩壊した91年には小学校高学年から中学生を迎えていた。90年代後半に大学に入るか就職などの道を選び、大学進学者は00年〜04年ごろ社会に出た。ちょうど今30歳〜34歳の人たちである。

僕よりちょっと下の世代、ということになりますね。
ああ、そういえば僕の妻は、ちょうどこの世代の上のほうだなあ。


 この記事のなかで紹介されている「30's」の話を読んでいると、納得できるところもあるし、なんだかなあ、と感じるところもあります。
 都内の大手企業に勤めている33歳女性の話。

 ボサノバから入り、ブラジル好きが高じてポルトガル語にはまった。日系ブラジル人が多い群馬県大泉町に住んで働いたこともある。日本とブラジルの交流団体「キモビッグ」を作り、昨年6月から語学教室を始めた。講師は無償だ。
 昼間の仕事はブラジルにすべてをつぎ込むための手段。だが、手は抜かない。猛烈に働いて5時半には会社を出る。「早く帰りたいから。すんげえがんばる。トイレに行くヒマも惜しい」
 でも9時から5時、私は「死んでる」し、ブラジルにかかわる時間以外は、私は私じゃない。「私のアイデンティティーはキモビッグ。少なくとも会社の仕事じゃない」

 うーむ。気持ちはわかる。
 仕事も頑張っているんだと思う。
 でも、「会社では『死んでる』」という言葉を聞くと、それでいいのかなあ、とも感じずにはいられません。
 それは「割り切り」ではあるし、僕自身だって、割り切って仕事をやっている部分は少なからずあるんですけどね……


 この本を読んでいると、ある世代の悩みというのは、他の世代には実感しづらいものなんだろうな、ということだけはわかります。
 記事への「反響」も紹介されているのですが、64歳女性からの投稿に、こんなものがありました。

 学生諸君よ、あなたは学生生活をどのように過ごした? 自分に何かスキルを身につけることをしたのか? このような状況においては、それだけの対策をしなければ勝ち残れないだろう。
 就職できなかったなら親の協力も必要だ。私の息子は大卒後、就職できなかったが、9月までアルバイトをして、アメリカの語学学校で1年間、大学で2年間ビジネス英語を学び、現在はサンディエゴの会社にいる。
 親は退学にならないだけの仕送りはしたが、ほんにんも慣れてくると日本料理店の皿洗いなどをしていた。帰国した時、私がお皿を洗っているのを見て、「それではとても雇ってもらえない」と言われた。

 僕は40歳世代なんですけど、これを読んで、「息子自慢かよ!」ってツッコミを入れずにいられませんでした。
 この人に「悪気」はないのだろうけど……
 いや、僕自身だって、「お前は逃げ切れそうでいいよな」と言われる可能性もありそうなのですが……

 
 「30's」といっても、あまりに「違い」がありすぎるのは、この本で読者からの反応として紹介されているたくさんのツイートを読むと、よくわかります。

 しかし、これを読んでいると、「たくさんのツイートが羅列されていると、かなり読みにくいし、140字では何が言いたいのかよく伝わらず、とにかく愚痴とクレームと揚げ足取りばかりがたくさん並んでいるようにみえる」のですよね。
 「twitterは議論には向いていない」というのが、よくわかる。 

 
 僕は読みながら、「30'sだけが辛いわけじゃないんだけどな……」と何度も言いたくなりました。
 いわゆる「バブル」の時代を実際に観ているだけに、さらに下の世代ほど「達観」できないというのもわかるんだけど。


 こんなツイートがありました。

 時間はまだある。スティーブ・ジョブズが一度追い出されたアップルに復帰したのは41歳だ。天才だって紆余曲折。

 40代前半の僕からすると、「時間はまだある」と思っているうちにこんな年になってしまって、「ジョブズは、僕の年齢には、もうあれだけのいろんなことをやっていたのだなあ」と暗澹たる気持ちになるのです。
 いや、ジョブズと比べてもしょうがないんだけど、少なくとも「だから自分もまだ大丈夫」とは思えない。
 「紆余曲折」すらない人生っていうのが、さらに悲しくもあるんだよなあ。

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