琥珀色の戯言

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【読書感想】人生はふんどし1枚で変えられる ☆☆☆☆


人生はふんどし1枚で変えられる

人生はふんどし1枚で変えられる


Kindle版もあります。

内容紹介
人生は何度でもやりなおせる!


大卒で美容師になったあと、コンサル会社に転職するも、
営業成績が悪く思い悩みウツ病になった37歳が、
「ふんどし」に出会い独立起業! 復活するまでの物語。


たった一人、資本金30万円ではじめた「ふんどし」ビジネス。
パンツを捨ててふんどしに賭けた男の生き様と、それをあたたかく応援する妻の姿勢に涙が止まらない……。


今ちまたで話題の「ふんどし」ブームの仕掛人が語る、感動のノンフィクション。
いとうせいこう氏、遠山正道氏推薦!


ふ、ふんどし、ですか……?
この本のタイトルを見たとき、僕の心に去来したのは、そういう「困惑」でした。
同時に、ふんどし一丁でふんぞり返っている自分の姿を想像してみたりして、「宴会芸だよな、それじゃ……」と。
僕のこれまでのイメージでは、「ふんどし」って、「自分が『男!』であることを過剰にアピールしたい人のためのもの、あるいはなんらかのネタの小道具」だったんですよね。
それが、この本を読んでみて、「これはなかなか良いものなのかもしれないな」と思えてきました。
うん、試してみても、良いかもしれない。


著者の中川さんは、都内の大学卒業後に美容師になった「変わり種」です。
美容師になるために、高校卒業後に専門学校に行く人が多いので、かなり遅い決心ともいえるでしょう。
それをカバーするために、著者は、「直接美容室に就職し、働きながら通信教育で免許をとる」ことにしたのだそうです。
でも、大学まで出て、免許もない美容師を、雇ってくれる美容室があるのかどうか?


著者は、そのハンディキャップを上回る「メリット」を就職先に提供するために、こんなことをやったのだそうです。

 たとえば街ゆく女性に、今、行っている美容室と、これから行ってみたい美容室、さらには髪型で参考にしている芸能人は? などのアンケートを取ってまとめた「街頭100人アンケート」。また、雑誌やTVで紹介される東京の有名サロンを見学し、そのすべてをレポートにまとめた「有名サロン30店舗マル秘レポート」、さらには自分がお店に入店すれば、お店にどんな影響を与えることができ、何年後にはこうしてみせるということを書いた「未来予想図作文」などを用意しました。

これが効いて、就職活動もうまくいきました。
僕でもこういう人と一緒に働いてみたいと思う。
著者は、すごくバイタリティのあるアイデアマンだな、と、いきなり感心してしまいました。
美容師としても、かなりの成功をおさめておられたようです。


ところが、そんななかで、ある事情により、著者は美容師をやめ、「転職」することになります。
そして、身内の会社で、いきなり責任ある立場につくことになるのですが、これが、負の連鎖のきっかけになってしまいました。
社内では「身内なのに仕事ができない」などと白眼視され、どんなにがんばっても、空回りしたり、功を焦りすぎて、かえって損をしてしまったり……


僕はこれを読みながら、「美容師をやめなかったらよかったのに!」「美容師に戻ればいいのに!」って、何度も思ったんですよね。
でも、基本的に真面目で責任感が強い人だけに、「うまくいかないのは、自分が悪い」と思い込む結果になってしまい、ついには「うつ」を発症してしまいます。


自宅で療養していた著者の頭に浮かんできたのが、以前知人に紹介されて試したことがあった「ふんどし」だったのです。

 3日目に届いた初めてのふんどし。
 手ぬぐいサイズの長方形の生地に腰紐がついているだけ。なんとも潔い。
 なるほど、広げるとこんな形なのか。
 早速、同梱されていた「締め方」のイラスト通りに締めてみる。
 人生初の越中ふんどしでした。
 な、なんなんだ! この快適さは!!
 素っ裸なんじゃないか! と思えるほど、身につけている感がない軽快さ。
 風が股の間を自由自在に通り抜ける通気性。
 大切な部分をやさしく包み込んでくれている安心感。
 

 これはただごとではないぞ!


 本能が直感しました。


 そして、おなかの前でチョウチョ結びをするこの所作が、なんだかとても新鮮です。締め方も予想以上に簡単でした。なんだか難しくて、めんどくさそうなイメージしかなかったふんどしが、こんなにも簡単なものだとは知りませんでした。


 僕はずっと、「なぜ女性があんなに下着にこだわるのか?」疑問だったのです。
 「見せることが予想される状況」ならさておき、そうでないときにも、こだわりを持っている人が多いような気がしていて。
 ある女性のインタビューで、「いや、見せるとか見せないとかじゃなくて、逆に、見られないからこそ、自分のなかで、良い下着をつけていることのワクワク感がある」というのを読んで、「そういうものなのか……」とは思っていたのですが。
 血流の改善とか、ムレることが少なくなるとか、身体に良いところもたくさんありそうなのですが(立場上、「効能があります!」と断言することもできないんですけどね)、少なくとも、「ふんどしで、気分が変わる」というのは、あるのだろうな、と。


 もちろん、「ふんどしを売る」という商売が、うまくいくと考える人ばかりではありませんでした。
 著者が奥様と相談し(本当にすばらしい奥様なんですよ。個人的には、ふんどしの話以上に奥様の愛情に感動してしまいました)、「ふんどしビジネス」を立ち上げるために退職の挨拶をしてまわっていた際には、こんなやりとりもあったそうです。

「はい、これからは自分でやっていこうと思います。今、『ふんどし』に可能性を感じていて、ふんどしでビジネスをしようとアイデアを練っています」
「……ふんどし?」
「はい。越中ふんどしというタイプのふんどしがあって、本当に快適なんです。越中ふんどしというのは、ゴムの締めつけがなくて……」
「いや、ふんどしなんて売れないでしょう。誰が買うのよ」
「はい。ふんどしの快適さを知らない人に向けて発信します。健康やおしゃれに敏感な若い人、僕と同じ世代をターゲットにした……」


 まだ説明の途中でしたが、「ケイジ君。今、どこも厳しいんだよ。ふんどしなんて難しいと思うよ。ふんどしなんてしてる人まわりにいるの? いないよね? お祭りの時しかニーズはないでしょう? ちゃんとマーケットを調査した? ちょっと甘いんじゃないかなぁ。奥さんもいるんだからさあ」

 この本を最初から読んでいると、著者に肩入れしてしまうので、なんだか酷い言いようだな、と思うのですが、まっさらな状態で、僕にこんなことを言ってくる人がいれば、同じようなリアクションをしてしまいそうです。
 でも「まわりにしている人がいない」というのも、「考え方しだい」なんですよね。


 こんな有名な小話があります。

二人の靴のセールスマンがアフリカのとある国に派遣されました。

一人のセールスマンは意気消沈して本社に戻って来て、こう部長に報告しました。「あそこには靴のマーケットはありません。なぜならみんな裸足なのです」。

でも、もう一人のセールスマンはなかなか帰ってきません。

心配になった部長が国際電話をかけると、彼は、意気揚々と言ったのです。「部長、ここのマーケットは無尽蔵です。なぜならみんな裸足なのです!」と。

 マイナスの要素のようにみえることでも、見方をかえれば、かえってプラスになる場合もあるのです。
 

 これまでは「ふんどしの日」などの仕掛けも当たり、順調に業績をのばしておられるようですが、これからもずっと右肩上がりになるのかどうかはわかりません。
 ただ、この本を読んでいると、奥様やお子さんのためにも、そして、自分の居場所を間違ったと感じているにも関わらず、失敗するのが怖くて、リセットして再チャレンジする勇気を出せない人のためにも、うまくいってほしいな、と願わずにはいられなくなります。
 頭で考えるだけで「できない」と決めつけてしまうのではなく、実際にぶつかってみれば開く扉って、案外少なくないのだな、ということも伝わってきます。
 

 いや、僕も正直「自分がふんどしっていうのは、無いな」って思っていたんですよ。
 それが、この本を読んでみて、ちょっとだけ変わりました。
 試してみるのも、いいかもしれない。


 まあでも、残尿とかちょっと心配ではあるんですけどね、ほらもう40代だしさ……


参考リンク:おしゃれなふんどし SHAREFUN(しゃれふん)

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