琥珀色の戯言

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スティーブ・ジョブズ ☆☆☆


内容(「キネマ旬報社」データベースより)
アップル社の創業者、スティーブ・ジョブズの生涯を描いた伝記ドラマ。人の心を掴むカリスマと呼ばれた男の、挫折を繰り返しながらも挑戦することをあきらめなかった知られざる真実に迫る。主演は『抱きたいカンケイ』のアシュトン・カッチャー


 映画館で観るつもりだった作品なのですが、あっという間に上映が終わってしまったため、DVDで観賞。
 ストーリーとしては、スティーブ・ジョブズの若い頃から、Appleでの成功、そして、あまりにも理想主義で傲慢な性格から、自分の会社を負われたものの、また復帰するまでの半生のダイジェスト版、という感じです。
 まあ、2時間でジョブズの人生の全体を語るのは、難しいよねやっぱり。
 昔のApple2とかMacがすごく懐かしかった。
 僕が小学生の頃に、マイコンがようやく日本でも知られはじめ、Apple2は憧れのマシンだったのです。
 iMacが流行ったのは、大学時代。
 そんなに大昔の話じゃないのに、ひと昔前のマイコン、パソコンを観ると、なんだかすごく懐かしくなってしまうんだよなあ。

 
 僕がジョブズの伝記で興味深かったのは、ずっと娘を認知しようとしなかった、人間としての往生際の悪さとか、理想主義で他者に対してもものすごく厳しくて、多くの人が離れていったところとか、Appleを追われたあとも順風満帆だったわけではなくて、迷走と浪費を続けたあげく、ギリギリのところでピクサーが『トイ・ストーリー』を完成させてなんとか復活したところとかなのです。
 「ものすごく困った人」であったにもかかわらず、強烈なリーダーシップと審美眼を持ち、自分が作るべきだと思ったものを、実現してみせた天才。
 そういう「才能」と「負の要素」がせめぎあった末に、復帰したAppleであれだけの大成功を収めたところが、ジョブズの魅力であり、面白さなのだと思うのです。


 だから、「陰」の描写が抑えめのこの映画は、なんだか物足りなかった。
 ただ、淡々と事実が並べられていって、時間だけが過ぎていく。
 しかも、個々のエピソードは、ほとんど掘り下げられません。
 カリスマとして、みんなに尊敬され、憧れられた一方で、多くの身近な人を、理不尽に、あるいは冷酷に切り捨てたジョブズ
 テクノロジーが人間を変えると思っていたはずなのに、自分の癌に対しては、最先端の医療が受けられたはずなのに、それを拒否して根拠の乏しい「自然な治療」に頼ってしまったジョブズ
 紆余曲折があったからこそ、ジョブズの伝記は面白いし、ドラマチックなのに。
 主人公を、あまりにも「ひどい人」として描くのはマズいのではないか、という気持ちはわかるのだけれども、ジョブズを描くには、その「理不尽なまでの容赦なさ」が必要なはず。
 多くの登場人物が存命なので、いろんな制約もあったのでしょうけど。
 

 キャストは実物にものすごく似ているみたい。それだけはすごかった。
 最後に、「どうです、こんなに似てるんですよ!」と、自慢げに実在の人物と劇中のキャストが並べられるのですが、個人的には「そっくりさん総出演」が売りなのかよ!と、なんだか拍子抜けしてしまいました。
 そりゃ、「似ている」のはすごいことだけど、だからこそ、ストーリーの薄っぺらさが際立ってしまうような気がします。
 自慢しなけりゃ、「でも、キャストが似ているのはすごい!」って、みんな素直に思うはずなのに。

 

スティーブ・ジョブズ I

スティーブ・ジョブズ I

スティーブ・ジョブズ II

スティーブ・ジョブズ II

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