- 作者: 佐藤健太郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/10/17
- メディア: 新書
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Kindle版もあります。
- 作者: 佐藤健太郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/11/28
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内容紹介
空気のように、非常に身近でありながら、ほとんどその存在を意識されることのない「国道」。その国道を真っ正面から扱った記念碑的作品。
実は、国道には不可思議なことが数多く存在する。
・国道246号は存在するのに、なぜ国道60号や国道99号はないのか?
・圏央道やアクアラインは高速道路なのになぜ国道指定されているのか?
・車が通れない商店街や階段がなぜ国道指定されるのか?
・道路すら走っていないフェリー航路が国道扱いされるのはなぜなのか?
など、いちいち挙げれば、数限りない。
国道をこよなく「国道マニア」として知られる佐藤健太郎氏が、こうした国道にまつわる、様々な謎を読み解くとともに、国道をこよなく愛する「国道マニア」たちのマニアックな生態を解説する。悪路を好んで走る「酷道マニア」。旧道を好んで走る「旧道マニア」。国道のありがたさを実感するために非国道のみを頑なに走行する「非国道走向マニア」、道路元標に異常な執着を示す「道路元標マニア」など、彼らのこだわりは相当なまでにマニアックである。抱腹絶倒の一冊
好きだな、この本。
僕は「乗り物酔いしまくりの乗り物好き」なのですけど、「国道」というのは、あまり意識したことがない存在でした。
でも、この「国道への愛が溢れ出してしまって、とうとう講談社現代新書を一冊書き上げてしまった」という佇まいには、すごく惹かれるのです。
こういう「読んだからといって、ちょっとしたネタが増えるだけで、人生において何の役にも立ちそうもない本」って、いいですよね(って言っても、同意してくれる人はそんなにいないかもしれないけれど)。
「ビジネス書」みたいに「役に立つ」ことは主張しないけれど、読んでいるあいだは、「よくやるなあ!」って半ば感心し、半ば呆れてしまうような、そんな本です。
本書は、日本の道路行政の問題について鋭く分析・検討し、何ごとか物申すような本ではない。各地の絶景やグルメを楽しむための、ドライブガイドのような本でもない。本書は、「道路」そのものを楽しむために書かれた、「国道マニア」の入門書だ。
鉄道マニアなら知っているが、国道マニアなんてものがいるのか? と思われそうだが、実は意外にいる。ある国道研究書は、相当に高度な内容にもかかわらず3万部以上売れたというし、mixiでの「酷道」コミュニティの人数は、なんと1万人を超えている。すっかりメジャーになった鉄道趣味にははるかに及ばないが、国道マニアという人種も思ったより多く存在しているのである。
「鉄道マニア」「飛行機マニア」の存在はある程度社会的に認められているのですが、それならば「道マニア」がいても、おかしくはないんだよなあ。
「国道」と聞いてみなさんが思い浮かべるのは、どのような道だろうか。複数車線が整備された車道、街路樹などが植えられた広い歩道、沿線に立ち並ぶ商店や住宅街――といった道路ではないだろうか。しかし世の中には、そうした道とはかけ離れた、悲惨な整備状態の国道も存在する。センターラインがないくらいはまだかわいいもので、対向車が来たらすれ違い困難だとか、落石だらけでろくに前に進めないとか、道の上を川が流れている「洗い越し」などというものまであるし、崖にへばりつくようにして走る、『ルパン三世』のアニメに出てきそうな道も実在する。この谷に落ちたら命はないなと下をのぞいてみたら、本当に谷底で車が大破していて、身のすくむ思いをしたこともある。
こうした道を、マニアは親愛の情と畏怖を込めて、「酷道(こくどう)」と呼び習わす。
(中略)
実はこうした酷道の愛好家は多く、道路趣味者の中でも最大勢力を誇っている。「酷道」でウェブ検索すれば、走行レポートのウェブサイトや動画が大量にヒットするし、単行本やムック、DVDもかなりの数が販売されている。一般にはあまり知られていないが、実に層が厚い趣味世界が形成されているのだ。
酷道に興味を持つきっかけはさまざまだが、ドライブ中に「国道だから」と安心して入り込んでとんでもない道に出くわし、「なんでこんな道があるのか」と興味を持って調べ始めた、というケースが多いようだ。普通は細道に入ってヘトヘトになって懲りるのだが、中にはなぜかこの不思議な趣味にのめり込んでしまう人もいるわけである。
これを読んでいて、僕がまだ小学校の頃、家族旅行で、中国山地を縦断する「ちょっとハンドル操作を誤ったら崖下に転落しそうな、酷い三桁番号の国道」を通ったときのことを思いだしました。
車に酔い、「これが国道なのか?」と毒づきながら、あまりの恐怖に真っ青になって窓の外を見ないようにしていましたが、冷静に運転していた父親の姿を、いまでもなんとなく覚えています。
本人は運転に自信があったようですが、今の僕よりも若かったし、内心では、すごくドキドキしていたんじゃないかなあ。
とりあえず、あれで「酷道趣味」に目覚めなくてよかった……
僕自身は運転にもあまり自信がありませんし、「酷道ツアー」なんていうのは勘弁してほしい。
その一方で、他人が通った「酷い道の話」を聞くのは、けっこう面白い。
この新書では、なぜか階段が国道に指定されているという、国道339号、なんていうのもあるそうです。
日本国道界最大の名所といえば、どうしてもこの階段国道を挙げないわけにはいかない。テレビなどでも何度も取り上げられているので、マニアならずともご存じの方が多いと思う。
問題の階段国道は、青森県は龍飛崎の突端にある。階段の上には「津軽海峡冬景色」の歌碑が建ち、ボタンを押すと大音量でこの歌が、なぜか2番から流れる。後ろには風力発電の風車、前には漁港と青い海が見下ろせ、風景だけとっても一級品だ。その漁港を見下ろす綺麗な階段の脇に、堂々と国道339号の標識が打ち立てられている。何かの間違いかと思うような情景だが、標識の下に「階段国道」と書いた補助標識まで取りつけられているので、これは完全な確信犯である。
日本広しといえども、階段の国道というのはここにしかない。なぜこんな変なものができたのだろうか? よく言われるのは「役人が現地を見ずに地図だけ見てここを国道に決めてしまったため」という話だが、これはいわゆる都市伝説の類らしい。青函トンネルの工事のため、いずれバイパスを作る予定があり、階段と知りながら暫定的に国道指定したのが真相ということだ(松波成行著『国道の謎』による)。
絶対に車では通れない国道!
この新書では、迷路みたいになっている国道や、まともに車が通れないような国道、途中を水流が横切っている国道など、「なんでこれが?」と思うようなものがたくさん紹介されています。
その「からくり」みたいなものについても触れられていて、この「階段国道」のように、「法律上、いきなり何もないところに国道を通すことはできないので、とりあえずそこにある細い道を国道指定して、そのバイパスを通すという形にして、本命の道をつくる」ことが行われているそうです。
そして、その本命の大きな道ができれば、旧道は国道から「格下げ」になるのですが、経済上、あるいは地形上の理由などから、「本命の大きな道をつくる計画が頓挫してしまい、不可解な『国道』が残ってしまう」というケースが多いのだとか。
ネタとして指定しているわけではなく、それなりの理由とか事情があるんですね。
この「階段国道」に関しては、あまりにも有名になりすぎてしまったため、すでに「観光資源化」してしまっているようです。
まず、そもそも国道とは何だろうか。単純には、丸みを帯びた逆三角形の青い標識、すなわち「おにぎり」の立っている道が国道だ。正式には「一般国道」と呼ばれる。東名高速などのいわゆる高速道路の正式名称は「高速自動車道」であり、国道の一種に分類されるのだが、本書でメインに取り上げるのは「一般国道」のほうだ。
一般国道としては現在のところ、1号から507号まで、全国で459本が指定されている。507号まであるのに459本とはどういうことかといえば、実は国道番号には欠番があるのだ。
この本のなかでは、その「歴史的経緯」についても説明されていますが、現時点では、国道「59〜100号」は「欠番」になっているため、507号まであるのに、459本なんですね。
これを読むと、普段何気なく利用している「国道」の番号や、「おにぎり」に興味がわいてきます。
「酷道ドライブ」は遠慮したいところですが、道路っていうのも、いろんなドラマが隠されているのだなあ、と。
新書としてはちょっと高めの価格設定ではありますが、カラー写真も豊富で、「好きな人には、たまらない一冊」だと思います。
しかし、そんなにいるのか、「国道マニア」。