琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

『琥珀色の戯言』 BOOK OF THE YEAR 2014

今年も残り少なくなりました。
恒例の「今年僕が面白いと思った本ベスト10」です。


いちおう「ベスト10」ということで順位はつけていますが、ジャンルもまちまちですし、どれも「本当に多くの人に読んでみていただきたい本」です。
(ちなみに、このブログで2014年中(12/29まで)に感想を書いた本は、321冊。ちなみに去年は306冊、一昨年は241冊だったので、かなり増えたというか、ほとんど毎日1冊ずつ、というペースでした。


それでは、ベスト10を。



まず、10位から6位まで。


<第10位>ニコニコ哲学 川上量生の胸のうち

ニコニコ哲学 川上量生の胸のうち

ニコニコ哲学 川上量生の胸のうち


Kindle版もあります。

内容紹介
ニコニコ動画を育てあげ、KADOKAWA・DWANGOのトップとなった
川上量生氏が生き方、働き方の哲学を語りつくす。


ウェブメディア「cakes」(ケイクス)の大人気連載「川上量生の胸のうち」を単行本化!
もしドラ」の担当編集者でありcakesを率いる加藤貞顕氏が、川上量生氏の本音を次々と引き出していく。


「よくわからないからこそ、解きたいと思う」
「『しょうがないな』と思われるポジションをつくる」
「バカだとわかって、バカを一生懸命やるのが一番いい」
「とんでもなく悪いUIをわざとつくる」
「インターネットは多様性を減らしてしまう」……


常識とは真逆の結論、1億年先を考える思考、さらにテクノロジーと笑い――。若き天才経営者と呼ばれる川上量生の胸のうち、頭の中がわかります。


この本の詳しい感想はこちらです。


 川上さんって、理想主義者であるのと同時に、現実主義者でもあって、その両者のバランスを高いレベルで奇跡的に保っている人なのです。
 世の中には、こんなすごい人がいるのか、とあらためて驚かされるインタビュー集。
 ネットユーザーがみんな、川上さんみたいな人だったら、ネットはものすごい勢いで、人類を進化させていくのだろうな……



<第9位>江戸しぐさの正体

内容紹介
 「江戸しぐさ」とは、現実逃避から生まれた架空の伝統である本書は、「江戸しぐさ」を徹底的に検証したものだ。
 「江戸しぐさ」は、そのネーミングとは裏腹に、一九八〇年代に芝三光という反骨の知識人によって生み出されたものである。そのため、そこで述べられるマナーは、実際の江戸時代の風俗からかけ離れたものとなっている。芝の没後に繰り広げられた越川禮子を中心とする普及活動、桐山勝の助力による「NPO法人設立」を経て、現在では教育現場で道徳教育の教材として用いられるまでになってしまった。
 しかし、「江戸しぐさ」は偽史であり、オカルトであり、現実逃避の産物として生み出されたものである。我々は、偽りを子供たちに教えないためにも、「江戸しぐさ」の正体を見極めねばならないのだ。


この本の詳しい感想はこちらです。


「いい話だから、僕は許す」という思考回路が出来上がってしまったら、おそらく、その「許容範囲」はどんどん広がっていって、「自分にとって都合の良いことは、どんな嘘でも信じる人間」になってしまいかねません。
 結局のところ、そういう「自己正当化の暴走」を食い止めるためには、「それが事実かどうか」を、ひとつの境界にするしか無いのだと思うのです。



<第8位>きみは赤ちゃん

きみは赤ちゃん

きみは赤ちゃん


Kindle版もあります。

きみは赤ちゃん

きみは赤ちゃん

内容紹介
35歳ではじめての出産。それは試練の始まりだった!
芥川賞作家の川上未映子さんは、2011年にやはり芥川賞作家の阿部和重さんと結婚、翌年、男児を出産しました。つわり、マタニティー・ブルー、出生前検査を受けるべきかどうか、心とからだに訪れる激しい変化、そして分娩の壮絶な苦しみ……妊婦が経験する出産という大事業の一部始終が、作家ならではの観察眼で克明に描かれます。
さらに出産後の、ホルモンバランスの崩れによる産後クライシス、仕事と育児の両立、夫婦間の考えの違いからくる衝突、たえまない病気との闘い、卒乳の時期などなど、子育てをする家族なら誰もが見舞われるトラブルにどう対処したかも、読みどころです。
これから生む人、すでに生んだ人、そして生もうかどうか迷っている人とその家族に贈る、号泣と爆笑の出産・育児エッセイ!


この本の詳しい感想はこちらです。


 これはすごい、そして、あまりにも身につまされる……
 僕にとっては、読むのがつらいエッセイでもありました。
 妻の妊娠・出産、そして、産後の自分たち夫婦のやりとりなどを思い出してしまい、ヒリヒリしっぱなしだったのです。
 ああ、こんなに大変だったんだなあ、とあらためて女性側の精神状態を思い知らされるのと同時に、「だけど、僕はさておき、阿部さんはここまで育児に参加しているのに、それでも満足してはもらえていなかったのだなあ……」と暗澹たる気分になりました。
 妊娠・出産って、「すごく大変!でも、ママをえらんで産まれてきたんだもんねっ!」というハッピーママ系の文章が多いのですが、この本には、「妻の妊娠・出産による夫婦関係の変化や、お互いのわかりあえなさ」みたいなものが、けっこう赤裸々に書かれています。
 父親になる前に、とりあえず、この本をこっそり読んで、種々の衝撃に耐える心の準備をしておくべきです。



<第7位>恋歌

恋歌

恋歌


Kindle版もあります。僕はこちらで読みました。
[asin:B00FEBDVY2:detail]

内容紹介
樋口一葉の歌の師匠として知られ、明治の世に歌塾「萩の舎」を主宰していた中島歌子は、幕末には天狗党の林忠左衛門に嫁いで水戸にあった。尊皇攘夷の急先鋒だった天狗党がやがて暴走し、弾圧される中で、歌子は夫と引き離され、自らも投獄され、過酷な運命に翻弄されることになる。「萩の舎」主宰者として後に一世を風靡し多くの浮き名を流した歌子は何を思い胸に秘めていたのか。幕末の女の一生を巧緻な筆で甦らせる。


この本の詳しい感想はこちらです。


 僕にとっては、この作品の「恋愛」の要素はどうでもよくて、読みながら、この「水戸志士の妻子たちが流した血はいったい、何だったのだろう」ということを、ひたすら考えずにはいられませんでした。
 戦争や歴史というものは、こういう「何だったのだろう」としか言いようがない、それに意味づけをしようとすればするほど嘘くさくなる「流血」を繰り返しているのです。



<第6位>沈みゆく大国アメリカ

内容(「BOOK」データベースより)
鳴り物入りで始まった医療保険制度改革オバマケア」は、恐るべき悲劇をアメリカ社会にもたらした。「がん治療薬は自己負担、安楽死薬なら保険適用」「高齢者は高額手術より痛み止めでOK」「一粒一〇万円の薬」「自殺率一位は医師」「手厚く治療すると罰金、やらずに死ねば遺族から訴訟」。これらは、フィクションではない。すべて、超大国で進行中の現実なのだ。石油、農業、食、教育、金融の領域を蝕んできた「一%の超・富裕層」たちによる国家解体ゲーム。その最終章は、人類の生存と幸福に直結する「医療」の分野だった!


この本の詳しい感想はこちらです。


 日本の政治にも「問題点」はたくさんあると思います。
 でも、「国民皆保険」は、まちがいなく、世界に誇れるシステム(あるいは、世界でもっともマシなシステム)ではないでしょうか。
 これを「あたりまえ」だと思ってはいけないんだよね。
規制緩和」なんていう威勢の良い言葉にごまかされて、大事なものを失ってはならない。
 アメリカをみていると、「どう考えてもおかしい状況でも、一度大きな利権を手にした人々から、それを取り戻すっていうのは、本当に難しい」のだから。



続いて、1位〜5位です。


<第5位>超超ファミコン

超超ファミコン

超超ファミコン


Kindle版もあります。

内容紹介
俺たちはまだ、ファミコンを語りつくしていない!!


ファミコン生誕30周年のアニバーサリーイヤーを飾った
名著『超ファミコン』を超えるシリーズ第二弾、ここに登場!!
今回も懐かしの名作・迷作・怪作をドドーンとまとめて徹底レビュー!!


さらに『超超ファミコン』だけのビックサプライズ!!
ドラゴンクエスト』の生みの親、堀井雄二氏ロングインタビューを独占掲載!!
テーマはなんと!! 伝説の袋とじゲーム企画「ファミコン神拳」なんだぜ!! あたたた!!


ファミコン神拳は本当になんのしがらみもなかったので、真剣にゲームを遊んで、
ユーザー的に面白いかどうかだけで原稿を書いてましたね」
ファミコン神拳があったおかげで、みんなにドラゴンクエストを遊んでもらえました」
「当時、ゆう帝=堀井雄二ってのは内緒だったんですよ。
『この先には何が!?』と言ってるのが、ゲームを作ってる人だとヘンでしょ」


そして黄金期のナムコに在籍、
ファミコン版『ギャラガ』をはじめとする数々の名作に携わったクリエイター、
大森田不可止氏が語る「ナムコファミコンが熱かった、あの時代」!!


ファミコンのCPUは慣れると使いやすいなって思いました。あとはスプライトが
MSXに比べれば格段に優秀なのと、テレビに表示したときの発色がキレイでしたね」
ファミコンがゲームをメジャーな存在に進化させてくれたことには感謝してます。
それは当時のゲーム関係者みんなの思いでした」
「元ナムコの人間は、みんな、いまでもナムコが大好きですよ」


恒例の巻末企画では『ピコピコ少年』『ハイスコアガール』の著者である
マンガ家・押切蓮介氏がスペシャルゲストに登場!!
『ピコピコ少年』の舞台にもなったJR南武線沿線をぶらりゲーセン&駄菓子屋紀行!!


生誕30周年を過ぎても終わらないファミコンLOVE!!
これを読まずして、歴史的名機ファミコンは語れないッ!!

                                                          • -

【作品レビュー】
『ポパイ』『パックマン』『マッピー』『クルクルランド』『レッキングクルー
スパルタンX』『スターフォース』『スターラスター
オバケのQ太郎 ワンワンパニック』『ボンバーマン』『グーニーズ
『タッグチームプロレスリング』『機動戦士Zガンダム ホットスクランブル
魔界村』『メトロクロス』『さんまの名探偵』『アテナ』
夢工場ドキドキパニック』『マイクタイソン・パンチアウト!!
スター・ウォーズ』『メタルギア』『スーパーブラックオニキス』『カイの冒険
スーパーマリオブラザーズ3』『突然! マッチョマン』
魁!!男塾 疾風一号生』『美味しんぼ 究極のメニュー三本勝負』
超人ウルトラベースボール』『SDバトル大相撲 平成ヒーロー場所』……and more!!


この本の詳しい感想はこちらです。


 あの堀井雄二さんが『ファミコン神拳』について語っておられるインタビューは、ここでしか読めないのではないでしょうか。
 僕も『週刊少年ジャンプ』のエニックスのゲームコンテストの記事をみて、テレビゲームに興味を持った子供のひとり、だったんですよね。
 僕のなかでは、「自分だけの特別な体験」のような気がして、その号をずっと持っていたのですが、ジャンプの発行部数を考えると、あの記事でテレビゲームの洗礼を受けた子供(大人も)は、ものすごくたくさんいたはずです。



<第4位>海洋堂創世記

海洋堂創世記

海洋堂創世記

内容(「BOOK」データベースより)
せまい路地の奥に足を踏み入れた“僕”は、館長や専務、ボーメさんら原型師たちとともに、めくるめく日々を過ごしてゆく―。大阪芸術大学出身の映画監督がディープに描く、「おたく」な青春グラフィティ。


この本の詳しい感想はこちらです。


そこにあったのは、ガレージキットへの「信仰」みたいなもの、あるいは、世の中の「普通」に馴染めない人たちにとっての「居場所」だったのかもしれませんね。
僕にとってすごく印象的なのは、いまとなっては、オタクの中の「ハプスブルク家」、すなわち「オタクエリート」とさえみなされる海洋堂原型師たちの生き様でした。

 今池さんにしろ、シゲちゃんにしろ、原型師としての活躍期間は長くない。
 他にも、ある時期を境に止めてしまった原型師は大勢いる。もちろん、力及ばなくて辞める人間がほとんどだが、井上アーツや原詠人といった、ムーブメントそのものを牽引していたような実力派も、ある程度の作品を残したところで活動を停止している。皆、続けていれば、経済的成功もあったかもしれない人たちだ。事実、井上さんなどは、マルサに踏み込まれるほど稼いだ時期がある。
 シゲちゃんに関して言えば、『ファミ通』の表紙になった作品は、初期のガレージキットよりも完成度が高い。造形家としての腕は上がっているのだ。なのに、自分の作品を商品にすることはせず、海洋堂の宣伝と企画開発に専念した。やりたいことをやり尽くして辞めた今池さん以上に謎めいたところがある。
 おそらく、ガレージキットというのは初期のパンクロックみたいなもので、青春の初期衝動とともにあるものなのだ。だから、やるべきことをやったという自覚のある人間は、自らの意志で一線を去るのだ。

 内側からみた「オタクのハプスブルク家」ができるまで。



<第3位>タモリ

タモリ学 タモリにとって「タモリ」とは何か?

タモリ学 タモリにとって「タモリ」とは何か?


Kindle版もあります。僕はこちらで読みました。

内容紹介
タモリをもっと知りたくて。


デビュー時から現在までの、タモリの様々な発言やエピソードを丹念に読み解き、その特異性と唯一無二の魅力に迫る。 親しみ深くて謎の多い、孤高の男の実像とは。


タモリは過去や未来にこだわることの不毛さに対し、若い時から(あるいは幼少時から)問題意識を持ち、考えぬいた末に「現状を肯定する」という生き方を選択した。いかに執着を捨て、刹那的に生きることを選べるか。その実践として、「タモリ」がある。(本文より)


イラスト:小田 扉


タモリにとって『いいとも』終了とは何か
1 タモリにとって「偽善」とは何か
2 タモリにとって「アドリブ」とは何か
3 タモリにとって「意味」とは何か
4 タモリにとって「言葉」とは何か
5 タモリにとって「家族」とは何か
6 タモリにとって「他者」とは何か
7 タモリにとって「エロス」とは何か
8 タモリにとって「仕事」とは何か
9 タモリにとって「希望」とは何か
10 タモリにとって「タモリ」とは何か


この本の詳しい感想はこちらです。


 手放しの賞賛やきちんと「解釈」されるよりも、「タモリさんって、長年観てきたけど、なんだかよくわからない人だよなあ……」と言われるのを、いちばん望んでいる人じゃないか、と僕は感じました。
だからこそ、タモリさんを語るのは、とても難しい。
語ることそのものが、タモリさんから離れていくことのような気がしてならないから。



<第2位>スクールセクハラ


Kindle版もあります。

内容紹介
相手が先生だから、
抵抗できなかったーー
一部の不心得者の問題ではない。
学校だから起きる性犯罪の実態。
10年以上にわたって取材を続けてきた
ジャーナリストによる執念のドキュメント


「学校でそんなことが許されていいはずがない」と
いう強烈な怒りに突き動かされて私は学校で起きる
性被害「スクールセクハラ」の取材を続けてきたーーなぜスクールセクハラは後を絶たないのか
カラオケに行こうと誘いホテルへ連れ込む/試験問題見せ引き留め/携帯電話を買い与える/部活動で「服脱げ」と指導/担任からのしつこい「清香ちゅわ~~~ん」メール/「隙があったのでは」と被害者を責める二次被害/隠蔽体質/教育委員会の事なかれ主義……etc.
一部の不心得者の問題ではない。
学校だから起きる性犯罪の実態。
10年以上にわたって取材を続けてきた
ジャーナリストによる執念のドキュメント


この本の詳しい感想はこちらです。

 文部科学省によると、1990年度にわいせつ行為で懲戒免職になった公立小中高校の教師はわずか3人だった。ところが、過去最悪となった2012年度には、なんと40倍の119人に達している。その被害者は教え子が半数を占める。停職などを含めたわいせつ行為による処分者全体でも、90年度に22人だったのが03年度には196人と急増し、その後も高止まりが続いている。急に教師の質が落ちるはずがなく、見過ごされてきたのが厳しく処分されるようになっただけだ。


 どうか、ひとりでも多くの人に、この本に書かれている「スクールセクハラ」のことを、知ってもらいたい、僕もそう願っています。
 もし、あなたが中学生や高校生の親なら、この本を読んでみてほしいのです。
「女の子の親なら」と書こうとしたのですが、この本には、男の子がセクハラを受けた事例も紹介されています。
 女の子に比べて確率は低くても、男の子だから絶対安全、というわけではありません。
 そして、子どもたちにも、ぜひ読ませてあげてください。
 こういうことが現実に起こっていることを知れば、子どもたちも、危険な状況を見分けることができる可能性が高くなるから。
 わからないときには、親や信頼できる大人に相談してみよう、と思いだしてくれるかもしれないから。
 こうして、「スクールセクハラをやっている教師が、世の中にはいる」という知識を僕たちが共有していることをアピールすれば、彼らだって、好き放題にはできなくなっていくはずだから。



<第1位>「ニセ医学」に騙されないために

「ニセ医学」に騙されないために   危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!

「ニセ医学」に騙されないために 危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!

内容紹介
抗がん剤は毒にしかならない」「白い食物はNG」など、
ちまたにあふれる医学や健康の情報はデマだらけ。
近年では、よりカルト化し、多数の本やサイトでデタラメな情報が
撒き散らされているため、健康被害が出ることも懸念されています。


本書の著者は、ネット上でいち早くニセ科学批判を始めた内科医。
危険な反医療論や代替医療、健康法について、査読を通った確かな
文献をもとに、わかりやすく説明しています。


普段は騙されない自信がある人でも、いざ病気になると、
不安な気持ちにつけ込まれ、怪しい治療法に手を出してしまいがち。
しかも、一度「ニセ医学」にハマると、なかなか抜け出せません。
ご自身はもちろん、家族などの大切な人の健康を守るために、
ぜひとも読んでいただきたい一冊です。


この本の詳しい感想はこちらです。


 NATROMさん自身は、傲慢な人ではなさそうだけれど、ネットでは、「正しすぎる人」にとっての神輿のような存在になってしまっているのではないか?
 

 でも、僕はこの本の最初に載せられているコラムを読んで、なんだかそんなふうに考えていた自分が恥ずかしくなりました。
「医療以外のものを試したくなる気持ち」と題されたそのコラムでは、著者が中学生の頃、お母さんが大病を患った際に、怪しげな健康食品を試していたことが語られていたのです。
 中学生だった著者の、そんな「わけのわかないもの」に頼りはじめたお母さんへの違和感と、家族の一員として自分はどうふるまうべきか、という迷いが率直につづられた文章に、僕はすごく共感したのです。
 僕自身、高校時代に母親が大病をした際に、医者であった父親が「これが効くらしい」と、当時話題になっていた(らしい)アガリクスを飲ませているのをみて、「医者のくせに、なんでそんなわけのわからなものに頼ろうとするんだ、それより、夫としてもっと早く妻の病気を見つけてあげるべきだったんじゃないのか?」と強く反発した経験があります。
父親の名誉のために申し添えておくと、母は当時の最先端の(エビデンスのある)治療も並行して受けており、予想されたよりもずっと長く生きました)


 こういう本って、「愚者の間違いを正してやる」っていうスタンスが伝わってくるものが多いじゃないですか。
 それに対して、NATROMさんが、この話を冒頭に持ってきたことには、すごく意味があると思うのです。
 医者として、科学者として、専門家としての立場は、崩すわけにもいかないし、「共感するだけ」の本ではいけない。
 「病気で苦しんでいる人や、その家族」を、「お前らは科学のこともわからないバカ」と嘲るのではなく、「病気で苦しんでいるときに、『ニセ医学』にすがりたくなる気持ちは、別に悪いことでも、ヘンなことでもない。だからこそ、病気が身近なものになる前に、正しい知識に触れて、心の準備をしておいてほしい」という、「共感」と「同じ目線の高さ」が、この本では貫かれています。


 ぜひ、一人でも多くの「いまのところ、病気のことなんて考えたくもないし、考える必要もない人」にこそ、読んでいただきたい。
 溺れているときに泳ぎ方の教本を開こうとしても手遅れだから、いま、冷静に読めるときに。



というわけで、『琥珀色の戯言』の2014年のベスト10でした。
今年の僕自身の読書傾向としては、ノンフィクションが多めだったような気がします。
あと、二人目の子どもが生まれたので、「子どもの話」に例年以上に敏感になっていました。


正直、こういうふうに「順位」をつけることそのものに意味があるのか?とか、☆の数で先入観を植え付けてしまっているのではないか、と思うところもあるのです。
ノンフィクションとエッセイと冒険小説を同じ物差しで測るのは、難しいというか、あまり意味がなさそうですし。
でも、僕自身が読む側だったとしたら、そのくらいの「サービスというか、わかりやすい導入ポイント」があったほうが、たぶん、とっつきやすいのではないか、と考えているのです。
ですから、順位については、「これは違う!」みたいなのもあるかもしれませんが、これを書いた時点での僕の順位、ということで、ご笑納いただければ幸いです。
いや、僕自身だって、昨日順番をつけていたら、今回とは違ったものになっていたような気がするくらいですから。


ひとつだけ言えることは、ここに御紹介した10冊は、僕なりに、間違いなくオススメできるものばかり、ということです。


おそらく、来年も「本の感想メインのブログ」になると思います。
たいしたおもてなしもできませんが、どうぞよろしくお願いします。


僕のtwitterはこちら、本の感想以外の雑記のブログはこちらです。

アクセスカウンター