マーケット感覚を身につけよう---「これから何が売れるのか?」わかる人になる5つの方法
- 作者: ちきりん
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2015/02/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (24件) を見る
Kindle版もあります。
- 作者: ちきりん
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2015/02/23
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログ (6件) を見る
月間200万PVの超人気“社会派"ブロガー・ちきりん
2年ぶりの完全書下ろし!
「論理思考」と対になるもう1つの力、「マーケット感覚」を解説する初めて本です。
いたる所で市場化が進み、不確実性が高まるこれからの社会では、
英語力や資格などの個別のスキルよりも、
「何を学ぶべきか?」「自分は何を売りにすべきか?」という
「本質的な価値」を見抜く、一段上のレベルの能力が必要になります。
その力を、本書では「マーケット感覚」と命名しています。
これは、別の言い方をすれば、
「社会の動きがこれからどうなるのか」
「今ヒットするのはどんなものか」
などがわかるアンテナやセンサーに当たるものであり、
「生きる力」「稼ぐ力」と呼ばれているものの核とも言える能力です。
マーケット感覚を身につけると、世の中の見方がガラッと変わります。
たとえば、◎“ジャパネットたかた"が本当に売っているものとは?
◎今後は公務員こそ安心できない!?
◎「日本の消費市場」には国際競争力がある!
◎「市場創造」という新概念
◎私的援助こそ弱者を切り捨てる!?
◎難関資格職業に就くことの危険性
◎英語の勉強はもう報われない!?
◎市場は「入れ子構造」になっている
◎就職市場でNPOに負けているビジネス部門
◎「非伝統的な価値」の出現
◎羽田空港に国際線が復活した驚きの真相とは?
などなど。詳しくはぜひ本書をお読みください!
「マーケット感覚」か……
ああ、グローバル経済とか、スキルを身につけなさいとか、自分を高く売るために努力することを要求する、意識高い系の話なんだろうなあ……と思いつつ読み始めました。
……読み終えてみて、最初に思い出したのは、林修先生が、著書『いつやるか? 今でしょ! 』のなかで書かれていた、この話だったんですよ(以下の引用部のみ『いつやるか? 今でしょ!』より)。
50年近く生きてきて思うのは、
本当に得意な分野はそんなに多くはない
ということです。逆に言えば、これは勝てるという場所を1つ見つけてしまえば、人生は大きく開けます。今うまくいっている人とは、「僕はこれしかできません、でもこれだけは誰にも負けません」と、胸を張って言える人のことではないでしょうか?
勉強もダメ、運動もダメ、でも誰よりもすごい寿司を握る自信があって、実際に店がお客さんでいっぱいなら、それでいいのです。また、僕が水商売でうまくいっている女性を尊敬するのも同じ理由です。みんな自分の走るべきレースを見定めて、そこで勝負をしているのです。そこにどうして貴賤があるのでしょうか? 罪を犯しているわけでもなく、他人がとやかく言う話ではありません。
僕自身の大学入試の現代文の解き方を教えるという仕事もまた、世の中に無限といっていいほど存在する仕事の種類のなかのたった1つにすぎません。そもそも大学受験をしない人にはまったく無価値であり、その世界自体も実に狭いものです。そのことを自分でちゃんと認識しています。しかし、大学入試がなくならない限り、この世界は存在し続けるのです。それもまた事実です。
競馬では1200mなら絶対に強いという馬がいます。もっと範囲を狭めて、京都競馬場ではまるっきり走らないのに、中山競馬場1200mになると別馬のように強い、という馬もいます。それでいいのです。なぜなら、中山競馬場の1200mのレースは、今後も確実に施行されるのですから。
「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」というのは『孫子』の有名な言葉なのですが、ちきりんさんがここで書かれていることは、このことなのではないか、と。
僕などは「自分にしかできない、というような特別な技能もない、平凡な人間だから……」と諦めてしまいがちなのだけれど、それでも、「自分に合った場所」を見つけ出すことができれば、いくつかの「セールスポイント」になりうるものを持っているのです。
大事なのは、「自分に合った場所を見つけ出す目を養うこと」なんですね。
変化を恐れるあまり、「現状維持」を続けることは、長い目でみれば、けっしてプラスにならないし、かえって、望まない変化に巻き込まれるリスクがある。
この本に書かれているのは、「自分にとっての中山1200mのレースを見つけるための思考法」なのです。
それが「マーケット感覚」ではないか、と僕は思いました。
年齢的に、今後の身の振り方について考えることが多い僕にとっては、すごく興味深い内容でした。
「積極的に何かをやろうとしている」つもりで、「客観的にみれば、自分にとって有利ではない場所」に突撃してしまうことって、少なくないのです。
「前向き」であることに酔ってしまって、「突撃すべき場所」を間違ってしまう。
この本には、そういう実例も紹介されています。
以前テレビ番組が、結婚したいのにできないという20代の男性を取材していました。年収が300万円未満、学歴も高くないというこの男性は、職場が男性ばかりで出会いの機会がないので、結婚情報サービス会社に登録したとのこと。ところが、登録している女性にデートを申し込んでもまったく会ってもらえず、なんと200人もの女性に、会うことを断られたというのです。
出演していた男性は、さわやかな好青年で背格好も普通、見た感じ、イケメンと言えるほどです。性格もまじめで、話も普通にできます。この番組の結論は、「収入が低い男性は結婚するのが大変な時代になった」というものでしたが、私が感じたのは「彼にマーケット感覚さえあれば、スグにでもいい人に出会えるのに」ということでした。
ちょっと考えてみてください。20代で、見かけも性格もよく、学歴と年収が低い男性は、どこで結婚相手を探すべきでしょうか? この判断において、彼にとって最も不適切な市場が(彼が選んだ)結婚情報サービス会社です。
ちきりんさんは、その「不適切な理由」を詳しく説明していますが、ちょっと考えてみれば、「そういう人だったら、年収や学歴などのスペック重視で判断される結婚情報センターよりも、合コンとか、友人の紹介などで、直接会った印象で判断してもらえる出会いのほうが有利なんじゃないか、とわかりますよね。
「結婚情報サービス」というのは、登録者が多くなればなるほど、「数字だけで振り落とされる」可能性が高くなりますし。
20代男性で、相手も若い女性を希望するのであれば、競争率も高くなります。
イケメンで20代、見かけも性格も良い男性であれば、自分の長所を活かせる場所で勝負すればいいのに、実際には、「自分に向いていない土俵」に上がってしまう。
そして、時間も自信も浪費してしまう。
「収入が低い」のはマイナスポイントだけれど、それ以外のものを武器にすれば、十分勝負になるはずなのに。
これだけ読むと、「バカだねえ」って思うかもしれないけれど、実際のところ、惰性とか面子とかで、そういう環境から動こうとせず、「世の中が悪い」って恨み言ばかりの人って、少なくないのです。
たとえば、所属している組織を離れて独立するか、他の職場に移れば、もっと収入も上がって家族と過ごす時間も増えるはずなのに、「医局のしがらみが……」とか言っている人とかね(僕のことです)。
長く仕事から離れていたため、パートやアルバイトしか職が見つからないと嘆く専業主婦の人がたくさんいます。その一方、主婦スキルを最大限に活かし、キャラクター弁当作りのレシピ動画作成、収納のカリスマアドバイザーや、しつけや教育のコンサルタントとして、一般の会社員以上に成功する人もいます。
この専業主婦と元専業主婦の違いは、価値あるスキルの差でしょうか? そうではなく、主婦業を通して身につけたスキルが、「誰にとってどんな価値があるのか、見極める能力」に、差があるのではないでしょうか?
一流大学を卒業した後、一流企業に10年以上も勤めながら、「自分には、市場で売れる特別な能力は何もない。だから組織を離れたらやっていけない」と考える人がいます。そういう人の中には、多忙な仕事の合間をぬって学校に通い、資格を取得したり、外国語を学んだりして、「市場で売れる能力を身につけよう」と必死に頑張る人もいます。
けれどその姿は、自分の足元にある金塊に目もくれず、「何か価値あるモノ」を手に入れようとアチコチ探し回る、幼児や動物の姿に似ています。
どんな分野であれ10年も働いたら、「自分には売れるモノなど何もない」なんてことはありえません。もしそう感じるのだとしたら、その人に足りないのは「価値ある能力」ではなく、「価値ある能力に、気がつく能力」です。価値を価値と認識する能力を欠いたままでは、いくら大量の金塊を手に入れても、不安が消える日は永久にやってこないでしょう。
この本で紹介されているのは、まさにこの「価値ある能力に、気がつくための技術」なんですよね。
そのひとつの手段として、「ある技術やサービスについて、数字や大まかなイメージで判断するのではなく、実際にそのサービスが行われている現場、お客さんが利用している姿を個別に、具体的に思い浮かべていく」というのがあったんですよね。
僕が思いつくところでは「カルピスウォーター」なんて、発売当初は「わざわざそんなものを買う人はいない。だって、水で薄めるだけなんだから」と思ったものでした。
でも、あれを商品化した人は、瓶のカルピスの持ち運びの不便さとともに、「実際にやってみると、水や氷がすぐに手に入らないこともあるし、コップを洗うのもめんどくさい」ということを理解していたのです。
もちろん、あのカルピスウォーターの味の設定も絶妙だったわけですが。
いまの世の中「もう、どこも空いていない」ように見えるけれど、けっこう「隙間」ってあるんですよね。
それを見つけられる人が少ないだけで。
「市場でモノを売る」というのは、「売ってみて、売れるかどうかを見て終わり」ではありません。「これでは売れませんよ」という市場からのフィードバックを得、商品や売り方を改善するために「売ってみる」のです。つまり、成功するためでなく、成功に不可欠なヒントを得るために、市場と向き合うのだと考えればよいのです。
ブログを通じて、ひと冬で5000枚以上もの電気膝掛けを売った私も、生まれつき商才に恵まれていたわけではなく、市場からのフィードバックをもとに、試行錯誤を繰り返して学んできました。
あるときツイッターで、「小さな子供のいる主婦の私は、家の中をずっと動き回っているので、こんな電気膝掛けは役立たない」という反応がありました。私はこれをきっかけに、「この電気膝掛けは、同じ場所にずっと座っている受験生やプログラマーに特にお勧めです!」という一文を追記しました。立ち仕事の多い主婦に使いにくいという意見は、反対からみれば、動きの少ない人に最適な商品だということです。だったらそこを強調すれば、売れやすくなるだろうと学べたのです。
市場から学ぶという概念が理解できていない人は、「主婦にはこんなモノは要らない」と言われると、「そうか、要らないのか」と落ち込みます。しかしそれでは前に進めません。せっかくのフィードバックなのだから、ありがたく受け取って、より売上を伸ばすために活用すればいいのです。
「自分に合った場所」を探すこと、そして、失敗を恐れずに、試行錯誤を繰り返すこと。
メッセージとしてはものすごくシンプルなのですが、身近な例をあげて書かれているので、すごく伝わりやすい。
これまでのちきりんさんの本が「これから就職するくらいの若者がメインターゲット」だったとすれば、今回は、もう少し上の世代、まさに僕くらいの40代にも「刺さる」内容でした。
- 作者: 林修
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2014/05/08
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (7件) を見る